朝の目覚めにコーヒーを飲む人。
仕事モードに入る前のやる気スイッチを入れるためにコーヒーを飲む人。
ランチ後のドリンクサービスのコーヒーをオーダーする人。
自動販売機をみると缶コーヒーをつい買ってしまう人。
など、多くの人にとってコーヒーは身近な飲み物です。最近ではダイエット目的や集中力UP、健康に良いと思い込んで(勘違いして)飲んでいる人がいます。たしかに私も頭痛の時、コーヒーを飲んで症状が和らいだ経験があります。このようなコーヒーの薬理効果は主に「カフェイン」による作用です。
でもちょっと待ってください!
ほとんどの薬は副作用がありますよね。なのに薬理効果も期待できそうなコーヒーには副作用がないなんてあり得ないと思いませんか。今回は身近な飲料である「コーヒー」やブームになっている「バターコーヒー」や「デカフェ」のお話しです。最後の方で「カフェイン」の含まれる食品飲料をまとめましたのでご覧ください。
コーヒーに含まれる「カフェイン」とは
ほとんどの人が聞いたことのある「カフェイン」という成分ですが、コーヒーだけではなく、紅茶や緑茶にも含まれます。(カフェイン飲料一覧は最後にまとめました。)
無水カフェインとして、風邪薬や鎮痛薬に入っていることもあります。しかしカフェインは頭痛を治す薬理効果がある一方で、常用するとかえって頭痛が起こってしまいます。
「コーヒー」でダイエット効果
「コーヒー」で痩せるというのは、「カフェイン」が交感神経を優位にして脂肪分解する働きがあるためです。またコーヒーに多く含まれる「クロロゲン酸」という成分も脂肪酸の代謝促進に一躍買ってくれているからです。
Chlorogenic Acid Improves High Fat Diet-Induced Hepatic Steatosis and Insulin Resistance in Mice
クロロゲン酸は、マウスの高脂肪食誘導性脂肪肝およびインスリン抵抗性を改善する
コーヒーを飲むことが、脂肪代謝を促進することに有益であると結論づけています。
「バターコーヒー」がブームになってる理由
今流行りの「バターコーヒー」ですが、糖質制限と一緒に実践している人が多いのです。元々、糖質制限はダイエット目的で行う人が多いことから、更に脂肪燃焼効果のあるコーヒーを相乗効果として糖質制限に取り入れているということです。
また効率の良いケトン体産生効果を期待してバターやココナッツオイルを入れています。ケトン体や脂質について分からない方はこちらの記事をご覧ください。
「コーヒー」の中毒性と健康を害する問題
ここまでの内容を読んでいる方には「コーヒー」は健康に良いような気がしてしまう人もいるかもしれません。たしかにコーヒーのダイエットや健康に関する研究は多くありますし無理はありません。
「コーヒー」のクロロゲン酸には脂肪燃焼効果だけではなく抗酸化作用もあります。しかし「カフェイン」に関しては毒性が強いということが大変問題です。「カフェイン」にはカテコールアミン(ドーパミンやアドレナリンなど)という人の体内で生成されるやる気を出すホルモンを分泌促進する作用があります。
それにより目が覚めたり、集中力がUPしたりします。本来人の体内で作られるホルモンなのに、「カフェイン」によってドーピングしていたらどうなると思いますか?
副腎から作られるカテコールアミンというホルモンが自分自身で作られなくなる状態(副腎疲労症候群)となってしまうのです。
副腎疲労症候群についてはこちらをご覧ください。
もちろん体が丈夫で、ストレス耐性に強い人、健康な人であればコーヒーでそこまで大きな支障はでないかもしれません。
しかし元々体が弱く、ストレスにも弱い人、栄養欠損がある人では「カフェイン」による副作用も受けやすくなります。元をたどれば、このような人は朝が起きられない・だるい・やる気が起こらないなどの症状があるからこそ、「コーヒー」に頼り始めることになり、どんどん依存していくのです・・・
つまり「自分で副腎ホルモンを作れない=コーヒー依存」という無限ループになっているわけです。副腎ホルモンが自分でしっかりと分泌のできる体力のある人は、たまに嗜好品として飲むことはあっても「コーヒー」に依存することはありません。
1日1杯だけだから依存していないと思っている人
よくクリニックで食事のお話しをさせていただく際に、「1日1杯だけだから」とおっしゃる患者さんがいます。このような人は完全に中毒者です。自身では気が付いていないことが「カフェイン」の恐いところです。また緑茶や紅茶、ウーロン茶に含まれるカフェイン量も意外と多いことを知らずにガブガブ飲んでいる人もかなり多いです。
副腎疲労で受診している人の多くにコーヒーなどの「カフェイン依存」があります。コーヒーを飲むと一見元気になったように錯覚をしてしまうのです。まさに前述した「自分で副腎ホルモンを作れない=コーヒー依存という無限ループ」が起こっています。
コーヒーには中毒性があり、ただでさえ機能しなくなっている副腎に「もっとホルモンを出せ、出せとムチを打っている状態」ですからかなり危険なことがお分かりいただけるかと思います。
栄養ドリンクやエナジードリンクには要注意
先ほど風邪薬にも「カフェイン」が含まれていることがあることをお話ししました。実は栄養ドリンクやエナジードリンクにも大量の「カフェイン」が含まれるので要注意です。
流産や出生児が低体重になるリスクが上がることから妊婦さんは意識して避けているかと思いますが、是非妊婦さん以外の人もカフェインには気を付けましょう。
大人だけでなく夜遅くまで塾通いで頑張っているお子さんが、エナジードリンクを飲んでいるケースも残念ながら珍しくありません。お子さんの場合はカフェインに対する感受性が高いため、少量でも問題になることが多いです。特にお子さんの場合には気を付けて頂きたいです。
カフェインの摂り過ぎによる症状には不眠になることは有名ですが、その他では震え、心拍数の増加、吐き気、頭痛、意識がもうろうとするなどが起こります。エナジードリンクを多量に飲んで命を落としてしまった事例もあります。
多忙や深夜勤務でエナジードリンクに依存している人は多くいると思います。毒性のあらわれる量は個体差がありますので、くれぐれも依存しないためにも休養をとったり仕事量をセーブするなどの対策をとって頂きたいです。
日本臨床救急医学会雑誌 17 巻 (2014) 5号
カフェインによって興奮しやすくなったり悲観的になる
大量に摂ると命を落としてしまうこともあるくらい毒性の強いカフェインですが、それだけではなく精神的な面での問題も発生してしまいます。それは「カフェイン」による交感神経優位の状態が常に続くことで、常にイライラしたり、悲しくなったり、不安になったりなどの精神のバランスを崩してしまいやすくなることも大きな問題です。
それでは具体的にどのような商品飲料にカフェインが含まれるかをご紹介します。
カフェインの含まれる食品飲料
コーヒー
紅茶
玉露、抹茶
緑茶(煎茶)
ほうじ茶
ウーロン茶
プーアル茶
マテ茶
ジャスミン茶
栄養ドリンクやエナジードリンク
コーラ
ココア、チョコ
(玄米茶:ほうじ茶と玄米の等量のものにはカフェインあり、玄米のみで出来ているものならカフェインなし)
コンビニで手軽にペットボトルのお茶を購入できることから、意外と多くの人が日々の水分補給を緑茶でしているようです。
水分補給はできるだけお水にして頂きたいです。と言ってしまうとお水に慣れていない人は、すぐには実行できないかもしれませんので、以下にカフェインの入っていない飲料を紹介しますので参考にされてください。
カフェインの入っていない飲料
水、ミネラルウォーター
麦茶
はと麦茶
そば茶
昆布茶(化学調味料や玉露が入っていないものを選ぶこと)
黒豆茶
ごぼう茶
杜仲茶
甜茶
たんぽぽ茶
ドクダミ茶
ルイボスティー、カモミールティー、ローズヒップティー、レモングラスなどのハーブティーやアップルティーなどのフルーツティー
※ハーブティーでも紅茶・緑茶ブレンドのものだとカフェイン入りとなるので注意しましょう。
※ハーブティーやフルーツティーは砂糖や人工甘味料の入っていないものを購入しましょう。ペットボトルのハーブティーやフルーツティーだと果糖液糖や人工甘味料が入っていることが多いです。紅茶の専門店で購入すると良いでしょう。
茶葉の抽出温度によるカフェイン量の違い
カフェインは高温で多く抽出されてしまいます。当たり前ですが、茶葉少なめだとカフェインは少なくなりますから茶葉少なめで低温・短時間で入れるのも良い方法かもしれません。
また浸出時間に比例しますので、喫茶店やレストランでは紅茶のティーバッグを一瞬でとってしまうのも手です。
しかし、カフェインが少ないからといって沢山飲んでしまえば意味のないことですよね。
緑茶は紅茶・ほうじ茶と違い低温で入れるのが良いとされています。紅茶やほうじ茶などは90℃以上の熱湯で入れることで渋みと香りが豊かになります。
好みはありますが、旨味と甘味を引き出したい緑茶は基本的には低温でじっくり入れていきます。
それは高温ですと渋み成分であるタンニンが多く抽出されます。一方60~70℃程の低温ですと旨味成分であるテアニンというアミノ酸がしっかり抽出されておいしくなります。テアニンにはリラックス作用があります。
お茶の入れ方の違いでカフェイン量には差があります。
参考までに、100mlあたりのカフェイン量の一覧です。
玉露 160 mg <茶葉10g/60℃ 60ml、2.5分浸出の場合>
コーヒー 60 mg <コーヒー豆の粉末10 g/熱湯150 mlの場合>
紅茶 30 mg <茶葉5 g/熱湯360 ml、1.5~4 分浸出の場合>
煎茶 20 mg <茶葉10 g/90℃ 430 ml、1分浸出の場合>
ウーロン茶 20 mg <茶葉15g/90℃ 650ml、0.5分浸出の場合>
ほうじ茶 20 mg <茶葉15g/90℃ 650ml、0.5分浸出の場合>
参考:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」文部科学省
玉露は多めの茶葉(小さめの急須に対して茶葉10 g)を時間をかけて入れていくので、カフェイン量が多いのです。
また喫茶店の紅茶を2杯飲むと1杯分のコーヒーと同量のカフェイン量になります。それくらい紅茶のカフェイン量も馬鹿にはできません。
ではよくデカフェ(カフェインレス)なら良いのか?という質問を受けることがありますが、実際はどうなのでしょうか。
デカフェはいいの?
デカフェ自体は否定するわけではないですが、やはり味や香りに関しては普通のコーヒーに比べて落ちてしまいます。それでもカフェインを減らしたい人が取り入れるのでしたら問題はないとは思います。
しかし、はじめからデカフェなら良いのですか?という質問をしてくる時点で本当にやめる気があるのか心配になってしまいます。
カフェインに頼らなくても大丈夫な体になる方法
カフェインに頼らなくても大丈夫な体になる方法は、副腎機能を回復させることです。
副腎機能を回復させるには腸の炎症を抑える食事です。
具体的には
1、グルテンフリー
2、カゼインフリー
3、腸内環境を整えるための食事(①②)
などです。
まずは通院できるようになるまでの人はこちらからです。
最後に
食材には良い面と悪い面の両方があります。それは医薬品と同じで、食品であっても上手く使えば良い成分も、過剰になると問題が発生します。
また「カフェイン」をやめる時には離脱症状が起こります。「カフェイン」を急にストップしてしまうことで、今まで何とかカフェインにより動けていた体も動けなくなる恐れがありますので、徐々に減らしていくことが必要になるケースもあります。
少なくとも副腎疲労の患者さんはコーヒーが有害になりますので、徐々にコーヒーをやめることが出来るように詳しい医療関係者に相談をするようにしてください。
何か一つでもお役に立てましたら幸いです。
参考文献:
●食品安全委員会:食品中のカフェイン
●「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」文部科学省<