京橋ウェルネスクリニックには慢性の疲労、うつのような症状、朝が起きることができないなどの「副腎疲労」の患者さんが多く来院されます。
しかし、症状が強く来院したくてもできない患者さんもいらっしゃいます。通院できなければ、検査はもちろん治療を受けることもできません。まずは、診察時間に来れるように起きることができて、電車などの乗り物や移動に耐えられる体になることを目標とします。
そのためには、自炊で負荷をかけすぎず、中食、外食、デリバリーをうまく利用すること、ご家族の協力を得ながら取り組んでいくことが重要になります。(ほとんどの人が自炊なんてできる体力はありません)
STEP1:基本的には何を食べてもよい?
副腎疲労の患者さんは頑張り屋です。長年無理をし続けて、走り続けてきたのです。
ですから、手を抜くことが大切です。手を抜くことの一つとして「自炊をしない」ことです。というか、理想形の食事を作ること、それを実践するのは大半の人が難しいです。
副腎疲労の疲弊期には、「動けない」でも・・・「死んじゃうから何か口にする」ような状態。
このような状態の人は、基本的には何を食べてもOKです。多少の添加物、人工甘味料はOKとします。もちろん添加物は少ないに越したことはありませんが・・・しいて言えば、以下は避けるぐらいでしょうか。
できる限り避ける
・ファーストフード、スナック菓子、ケーキなどの洋菓子は食べない。
・パン・パスタのグルテンの多いものは減らす(できる限り量を減らす)
・白砂糖も控えめにする(ゼロには出来ないので、できる限り量を減らす)
・ジュース、カフェインの飲み物
①単身者の場合
単身者(独身の方や単身赴任でおひとりで生活をしている方)は食事と捕食をコンビニ、スーパーの中で選んだり、外食を利用することになるかと思います。
気圧の変化などで体調悪化した日にはデリバリーも上手く利用してみるとよいです。
以下を選ぶ参考にしてみてください。
OK
おにぎり(おかか・昆布・鮭・海苔などの具ありのおにぎり)、ゆで卵、温泉卵、おでん、ちくわ、さつま揚げ、厚揚げ、冷やっこ、納豆、温めるだけのスープ、即席みそ汁、キュウリやナスなどの漬物、総菜ハンバーグ、和食のお惣菜(筑前煮などの根菜の煮物、白和え、胡麻和え、酢の物、南蛮漬け、煮魚、焼き魚、肉じゃがなどの煮物など)、茶碗蒸し、卵豆腐、チャーシュー、冷凍のブロッコリーやほうれん草、サバの缶詰、黒豆などの煮豆、ナッツ類、焼き芋、干しいも、甘栗、ゼリーや寒天、バナナ、フルーツ全般
NG
サンドイッチ、パン、パスタ、ピザ、うどん、ラーメン、牛乳、飲むヨーグルト、炭酸飲料、清涼飲料水、ゼリー飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、ケーキ類
【NGではないが大量には摂らない方がよい】
●ハム、ベーコン、ソーセージ:発色剤として使用される「亜硝酸Na」が殺菌剤としての役割もあるので、腸内細菌も殺してしまいます。「亜硝酸Na」やその他、保存料はお湯で煮るとある程度溶け出すので、切れ目を多く入れて炒め、煮汁は捨ててしまうのもよいかもしれません。普通のスーパーで「亜硝酸Na」を添加していないベーコンもあります。ただし「亜硝酸はボツリヌス菌の増殖を抑える効果があるため、無添加ハムは加熱して食べる必要はあります。明太子やたらこにも「亜硝酸Na」は添加しています。一部のコンビニでは「亜硝酸Na」無添加の明太子おにぎりもありますが、これらの具のおにぎりは避けた方が無難です。
●カット野菜:殺菌剤が多いので、できれば水洗いした方がよいです。
●無糖ヨーグルト:カゼインの問題もありますが、体調が良ければOKです。
●野菜ジュース:ものによります。トマトジュースの無塩であればよいかと思います。市販の野菜ジュースにはフルーツや糖類添加のものもあり、液体のために急激な血糖上昇となります。また濃縮還元(※)されているものが多いです。生のフルーツや野菜を摂った方がマシです。
※濃縮還元とは:果物や野菜の搾り汁から水分を取り除いて濃縮し、貯蔵・輸送した後、水を加えて元の状態に戻すことです。市販の野菜ジュースの原料は海外のものが多いため、輸送コストを減らす目的があります。ストレートの野菜ジュースと違い、香りがなくなっているため香料の添加や、栄養価もほとんど失われているので、ビタミン類も添加することになります。
【個人差がある食品】
カフェイン:徐々に減らしていかないと禁断症状が出て危険です。通院できるようになってきたら相談しながら減らすことにはなります。禁断症状についての理解も必要となります。
お粥:低血糖の症状がある人には要注意です。
玄米:消化力に問題の抱える人には要注意です。
②ご家族がいる場合
ご家族の人が調理可能であれば、協力してもらいましょう。
調理が難しい場合には上記のスーパーやコンビニでの選び方を参考にしながら、買ってきてもらいましょう。
●白米・汁物・魚や肉・卵・野菜(サラダ、温野菜、煮物、和え物)・海藻・きのこ・種実類(ごま、ナッツ)などの献立にしましょう。
●パン・ピザ・パスタ・うどん・小麦麺の献立は控えてもらいましょう。
●白砂糖ではなく「ラカント」を使ってもらうようにしましょう。白砂糖はなるべく少ない方が良いです。
●出汁をとることに負担になってしまう人には、市販の無添加だしをうまく利用してもってください。煮干し粉やかつお節粉(無添加のもの)を利用してもいいと思います。
●補食の準備をしてもらいましょう。
手作りの場合:
・ミニサイズのおにぎり(そぼろやおかか入り)
・持ち運び用の水筒に和風だし・ボーンブロス出汁を準備
・ラップでミニサイズに包んだイモやかぼちゃの羊羹など
左:2口で食べられるそぼろおにぎり
右:かぼちゃペースト
シリコンスチーマー(レンジ使用)で蒸したかぼちゃをペーストにして本みりんを少量いれただけ。これに寒天を溶かせば羊羹になります。
購入する場合:
・甘栗や干しいも
・個包装になっているさつま揚げ
・プルーン
・ナッツ類(アーモンド・くるみ)
・アミノ酸(BCAA)個包装タイプなど。
甘栗:添加物が入っていないですし、有機甘栗を使用しているものも多いです。
アーモンドなどのナッツ:素焼き(食塩、植物性油脂なしのもの)を選べると良いです。
捕食・間食について
なぜ補食が必要になるのでしょうか?
副腎疲労の人は血糖を維持することが困難になってしまうからです。
それは血糖値を維持するコルチゾールというホルモンが減っているためです。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。)
補食は午前10時、午後3~4時など低血糖を起こしやすい時間帯に摂るのがベストです。ただし補食に適さない物があります。以下のようなものです。
【補食に適さないもの】
スナック菓子、ケーキ、小麦製品、から揚げなど
消化に時間がかかったり、悪い油(酸化油やトランス脂肪酸)が多すぎたりするものはNG
【補食の参考例】
●魚肉ねり製品、さつま揚げ :そのままで食べられるので間食・補食に便利です。比較的悪い添加物を使っていないですし、たんぱく質補給になります。
●缶詰:原材料がシンプルな物が多いです。ストックしておけるので便利。
●黒豆、うずら豆などの煮豆:砂糖は多いですが、食物繊維も豊富です。添加物などが少なく原材料もシンプルな物が多いです。煮豆に保存料を入れなくても済む理由は、砂糖がたくさん含まれることで腐りにくくなるからです。
食欲の出ない時には?
・胃がもたれるなどで、肉が食べられない
・固形物も食べられない
・低血糖を起こしてしまうので食べるのが怖い
などこういった場合はどうすればよいのでしょうか?
何も食べることができずに、栄養失調でどうにもならない場合にはもちろん病院にいくことをまず第一優先してください。生死にかかわりますから。
そうでない場合には、ゼリーでもよいです。バナナでもいいです。
水分でしたら比較的摂取がしやすいと思いますので、十割そば湯(そばを茹でたときのお湯)はお勧めです。そば湯にはそばから溶け出したアミノ酸、ビタミン類、カリウムなどのミネラルやルチンが豊富です。(※グルテンは胃腸の負担になってしまうので、できたら小麦粉を使わない十割そばが良いです。)
そばに豊富なルチンは「抗炎症効果」や「血流改善効果」などの多くの健康効果が報告されています。
野菜とお肉を煮込んだスープもアミノ酸の補給に重宝します。具は残しても、スープに溶けだしたアミノ酸が効果的です。
お肉は骨付ですとなお良いです。それは「コラーゲン」をはじめとした良質なたんぱく質が豊富だからです。
コラーゲンは主に動物の皮や骨の部分に多く含まれます。お魚の煮こごりも、骨や皮から溶け出したコラーゲンが冷えて固まってできたものです。
手軽な方法としては「ゼラチン」でも構いません。ご家族の方がいらっしゃれば、ゼリーを作ってもらいましょう。
そして低血糖を起こしてしまう方は、なるべくGI値の低い食品を選びましょう。白米おにぎりよりは、海苔とおかかが付いたおにぎりです。
あとは流し込むような炭水化物は摂らない方がよいです。
お粥よりは、白米(すこし水分量を多くしても良いです)。それは、お粥はあまり噛みません。流し込んで食べてしまい後で体調が悪くなることもあります。
当たり前ですが、「清涼飲料水」はダメです。液状になっているためかなり早いスピードで血糖値を上げてしまいます。「スポーツドリンク」も同じです。
スポーツドリンクはスポーツをする人が「薄めて」飲むものです。スポーツをする人でも薄めた方がよい理由はスティックシュガー約7本分の糖分が入っているからです。
STEP2:動けるくらいに回復してきたら
徐々に動けるようになり、受診ができるまでの体力に回復してきましたら、ここで初めて、STEP2の食事(より回復していくための食事)に移っていきます。
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※本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承ください。病態の改善に必要な食事はひとりひとり異なります。京橋ウェルネスクリニックでは、詳細な診察、検査を行った結果から個別に最適なお食事をご提案しています。