皆さんは「食物繊維」を意識して摂っていますか?
一昔前では、消化吸収できないために、栄養素としては扱われず存在も薄かった「食物繊維」も今では「6大栄養素」と認知され、人間に必要な栄養素として扱われるようになってきました。
腸内環境の悪化のひとつリーキーガット症候群(腸漏れ症候群)は様々な体調不良を引き起こす恐ろしい状態です。
セロトニン不足で起こるうつや、不眠も腸内環境の乱れから起こっています。セロトニンは腸で作られますので、腸内環境を良くする食事や生活習慣を心掛けていきたいです。「食物繊維」は腸内環境と密接にかかわります。
この記事ではより深く、食物繊維の本当の働き、水溶性食物繊維と腸内フローラの関係を解説します。
リーキーガット症候群と水溶性食物繊維
食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」がありますが、リーキーガット症候群の方には特に「水溶性の食物繊維」を積極的に摂ることをお勧めします。
文字の通り、前者は水に溶けて、後者は水に溶けません。
どのような食べ物に含まれるかというと
「水溶性食物繊維」:海藻、果物、豆類、野菜・こんにゃくなどのイモ類
海藻のヌメヌメ成分である「アルギン酸」や「フコイダン」、果物や野菜に含まれる「ペクチン」、菊芋やごぼうに多い「イヌリン」、こんにゃくの「グルコマンナン」がそれにあたります。モロヘイヤやオクラ、山芋が水溶性食物繊維の代表的な野菜です。
「不溶性食物繊維」:穀類、豆類、種実類、繊維質の野菜、さつまいもなどのイモ類
きのこ、植物の細胞壁、葉物野菜・根菜類などの野菜、豆、ナッツやゴマなどの種実に含まれる、「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」があります。
両者はそれぞれ働きが異なります。
「水溶性食物繊維」は腸内の水分に溶けてドロドロになり、腸内の善玉菌の餌となり、その善玉菌が、腸内環境をよくする有益な微生物(乳酸、ビフィズス菌など)と短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)やビタミン類を産生します。
「短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)」は乳酸菌やビフィズス菌とともに、腸内で大変重要な役割をしています。「短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)」は腸のエネルギー源です。つまり、腸のぜん動運動をよくします。また、腸内の悪玉菌の繁殖を防止したり、ミネラルなどの栄養素の吸収も改善します。
お酢に含まれる「酢酸(さく酸)」も「短鎖脂肪酸」の仲間ですから、お酢を適度に摂ることも、腸内環境改善にはおすすめです。
さらに「水溶性食物繊維」は血糖値を安定化させる働きもあります。水分に溶けてドロドロになる際に、一緒に糖類の腸に流れるスピードを緩めていき結果、糖の吸収が緩やかになります。
一方の「不溶性食物繊維」の働きは、水には溶けないため、水分をスポンジのように吸収して便の量を増やし、腸の蠕動運動促進による便通改善が期待できます。
但し、下痢気味や過敏性腸症候群の人は、蠕動運動が更に活発になり過ぎることで症状が悪化することがあるので「不溶性食物繊維」の摂り過ぎには注意が必要になります。
また「不溶性食物繊維」は農薬や重金属・有害化学物質などを吸着して、排泄する働きもあります。
「不溶性食物繊維」は腸内細菌に分解されないので、そのまま排泄されます。乳酸発酵(乳酸、酪酸などの腸内の善玉菌を作ること)の材料(乳酸菌の餌)となるのは、「水溶性食物繊維」です。
食物繊維の豊富な食材
・野菜:ごぼう、モロヘイヤ、おくら、玉ねぎ、にんにく、らっきょう、菊芋、山芋、こんにゃく(芋)
・海藻:わかめ、あおさ、海苔、ひじき、もずく、めかぶ、とろろ昆布、寒天
(※海藻の過剰摂取はしないでください。)
・果物:プルーン、アボカド、りんご、キウイフルーツ
・野菜:ごぼう、フキノトウ、切り干し大根、さつまいも、アスパラガス、繊維質な野菜
・きのこ:きくらげ、干し椎茸
・穀物(グルテンフリー):ヒエ、アワ、キヌア、アマランサス、玄米、発芽玄米
・種実:ごま、アーモンド、栗
・豆類:小豆、大豆、ひよこ豆、そら豆、えんどう豆(グリンピース)、おから
・果物:干し柿、プルーン
実は、プルーンやごぼうなど、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が同じくらい含まれている食材は多いです。ですから、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とあまり区別して考えずに、野菜やいも類・海藻・きのこ・穀物・果物などバランス良く食べることも大切ですね。
腸内環境改善おすすめメニューはオクラ・モロヘイヤ・納豆・とろろを胚芽米にのせた最強ネバネバ丼です!小鉢のもずく酢と、わかめとなめこのお味噌汁をセットにしたらもう完璧です。
※カンジタ菌(カンジダ菌)の症状がある人は果物は控えた方がよいです。
食物繊維とGI値
同じ糖質でも食物繊維が多く含まれる食材はGI値が下がる傾向があります。
GI値とは血糖値の上がりやすさを表した指標です。
糖質の多い野菜や果物で例をあげます。例えば糖質量が多いさつまいも、キウイフルーツなどはGI値はそれほど高くはありません。(とはいっても果糖も多いです。)
ただし、GI値にはカラクリがあり、インスリンが正常に出ている人を対象にしたデータとなるため、実際に血糖値が上がりやすい糖尿病の人や、インスリンが出にくい体質の人はあてになりません。
さらに言ってしまうとサイト上にあるGI値はサイトによりバラつきがあって、当てにならないもが多いのも事実です。
GI値には個人差があるので、あくまでも目安程度にしておきながら、糖質の摂り方を考えた方がよいでしょう。
食物繊維とデトックス
「不溶性食物繊維」には農薬や重金属・有害化学物質などを吸着して、排泄する働きがあるため「腸のお掃除屋さん」ということは先述しました。消化管の発がん物質や悪玉菌が産生する毒素なども包んで、腸の中の滞留時間を減らして、がん予防にも役立ちます。
そもそも便秘は大腸がん(その他のガンもですが)の元ですし、便秘になっていていい事は一つもありません。この私も便秘気味のお陰で、過去食中毒に2度ほどやられました。
多少の菌でしたらお通じがちゃんとしていれば体外に出ていきますが、便秘ですと食中毒菌が腸内で増殖してしまうんですね。(勿論、抵抗力の弱いお子さんやお年寄り、免疫力が低下している方は気を付けないといけないのですが)
同じ物を食べていた友人は何ともなかったというのですから、本当に便秘は良くないと思い知らされました。
腸内環境正常化のためには
①プロバイオティクスとプレバイオティクス
乳酸菌などの「プロバイオティクス」は直接、腸内環境をよくするものを言います。
食材でいうと、漬物やキムチなどの植物性乳酸菌、ヨーグルトの乳酸菌です。(ただしこれらは体質により合う合わないがあることは覚えておきましょう。)
そして先ほどから何度も登場している「食物繊維」は「プレバイオティクス」といい、腸内善玉菌を増やすために必要になります。オリゴ糖も同様です。
「オリゴ糖」は豆類、野菜など天然にも含まれます。オリゴ糖も食物繊維と似ていて、善玉菌の餌になります。
普通の便秘の人は「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の両方を摂ることで、便秘解消につながりますが、頑固な便秘な人の場合ですと、「不溶性食物繊維」がかえって便のかさを増し、便が詰まってしまうことがありますので、頑固な便秘の人は、「水溶性食物繊維」と「オリゴ糖」と「お酢」を摂るようにした方が良いです。
「お酢」に含まれる短鎖脂肪酸も腸の蠕動運動を良くしますが、「不溶性食物繊維」のように便の詰まりによる便秘の悪化はおこりません。
過敏性腸症候群の人は「食物繊維」と「オリゴ糖」により悪化してしまうことがありますので要注意です。
②加工食品は控える
加工食品を食べないことは、腸内環境のためにも心掛けたいです。食べ物が入れ物に入っているものではなく、野菜・海藻・きのこ・肉・魚・米など食材がそのもののカタチである生鮮食品を購入して調理をしていきましょう。
自分で用意した飲み物と食べ物を持ち歩くのも良い方法です。
外出先で空腹になっても、コンビニですと腸内細菌を殺す保存料ばかりで、購入できる食べ物の選択肢が狭まります。
③正しく消化する
繰り返しになりますが、「よく噛むこと」は重要です。
それに加えて消化酵素と胃酸(ベタイン塩酸)サプリも摂るとなお良いです。胃酸によりPHを下げて悪玉菌の繁殖を防止、栄養素の吸収にも一躍買ってくれます。
④おすすめの栄養素
その他グルタミン(便秘の人は禁忌)、ケルセチンは腸漏れ防止に役立ちます。
亜鉛やビタミンAは細胞の修復、ココナッツオイルのカプリル酸はカンジダ菌(カンジダ菌)の繁殖を防止します。
オメガ3系などの油は便の潤滑油になってくれますし、炎症も抑えてくれます。
便秘の人は、水を沢山飲むことも大事になります。
腸によい食事についてここまでお話ししてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
腸内環境を乱すのは「一瞬」でも、修復するのには時間がかかってしまいます。
腸内環境を良くするために、日々の積み重ねを大切に取り組んでいきましょう。
この記事がお役に立てますと幸いです。
※本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承ください。病態の改善に必要な食事はひとりひとり異なります。宮澤医院では、詳細な診察、検査を行った結果から個別に最適なお食事をご提案しています。