副腎疲労はストレスと不適切な食事、体内の炎症がきっかけで疲労をもたらす病気です。長年のストレスで脳が弱ってくると副腎を働かせるホルモンが出せなくなり発症します。正確な病名はHPA軸機能障害です。治療は乱れたコルチゾールリズムを食事やサプリで戻すことと、コルチゾールを乱している原因を見つけて取り除くことです。
副腎とは
副腎は左右の腎臓の上に1つずつある、直径3cm、重さ5gほど小さな臓器です。
ピラミッド型の臓器で、コレステロールを原料にしてストレスを打ち消すホルモンであるコルチゾールや、集中力を高める時などに有効なノルアドレナリン等を分泌しています。
コルチゾールの役割
・活動のためのエネルギー作り
・抗ストレス
・抗炎症作用、免疫抑制作用
・血圧や血糖値の上昇
・筋肉を作ったり、脂肪を燃やす
副腎疲労とは
ストレスがかかりっぱなし、炎症が起きっぱなしだと、脳と副腎がだんだん疲れてきます。最終的には副腎はコルチゾールを出すことができなくなってしまいます。これを副腎疲労といいます。
一般的なストレス反応
① ストレスが脳にかかる
②脳から副腎に命令が出る
③抗ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌される
副腎疲労の場合
① ストレスがかかり続ける
②脳と副腎が疲労する
③抗ストレスホルモンが分泌できなくなる
副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)という言葉はジェームズウィルソン博士の本によって広まった俗称であり、実際には副腎は疲労しません。疲労しているのは脳です。
脳の命令系統である視床下部と下垂体と副腎のネットワークが乱れて起こるため、正式にはHPA(視床下部-下垂体-副腎)軸機能障害と呼ばれています。
副腎疲労の症状
✔ うつ病や適応障害と診断されている
✔ 物忘れがひどい
✔ 朝、起きられない
✔ 我慢が出来なくなった
✔ 立ちくらみがする
✔ 花粉症、アレルギーがひどい
✔ 何をしても楽しくない
✔ とにかく疲れやすい
✔ 月経前症候群、生理痛がひどくなった
✔ 毎日をやっとの思いで過ごしている
他腹部膨満感、睡眠障害、筋肉痛、うつなどもよく見られる症状です。詳しくはこちら
副腎疲労の診断とステージ
副腎疲労の診断はコルチゾールの分泌量を測定することで行います。コルチゾールの量は1日の中で上下するリズムを繰り返しています。健康な人では朝に多く、夜に少なく分泌されます。
仕事が多忙で夜遅くまで働いたり、夜間勤務を多くこなしたり、ひどいストレスで眠れなかったりすると、コルチゾールが1日中出るようになり、副腎と脳が休む暇がなくなってきます。これを副腎疲労のステージ1と呼んでいます。
この時点ではエネルギーは出ているので通常通りに生活もでき、疲労を感じない人も少なくありません。
高度のストレスが数ヶ月から数年にわたって続くと、だんだん脳と副腎が疲弊してストレスに適応できなくなってきます。こうなると立ちくらみや疲労など様々な症状を起こすようになります。これが副腎疲労のステージ3です。
ひどくなるとベッドから起き上がれないほどになることもあります。
副腎疲労の検査
副腎疲労は、コルチゾールの分泌量で診断します。診断に最も簡単で役に立つのは、唾液中のコルチゾール濃度測定です。朝、昼、夕方、夜間に唾液を取ることで、コルチゾールの1日のリズムを見る事ができます。
唾液コルチゾール検査キット
検査結果
検査の見方について詳しいことはこちら
副腎疲労の治療
ポイントは、サプリや食事を使ってコルチゾールのリズムを戻してあげること、副腎や脳を疲労させる原因(ストレスや隠れた炎症)を取り除くことの2点です。
サプリメント
弱ってしまった副腎のケアにはビタミンB群、ビタミンC、亜鉛、マグネシウムなどのビタミン・ミネラル類以外に、滋養強壮のハーブ、インスリン抵抗性を改善するシナモンやクロムなどを使います。
そして狂ってしまったHPA軸を修正するホルモン・サプリメントも有用です。リコリスやDHEAなどのホルモンサプリは日本で市販されていません。病院で濃度チェックを受けながらのケアが必要となります。
詳しくはこちら
食事対策
副腎疲労が進行すると低血糖症状が出てきます。まずは3食きちんととり、食事を抜かないことが基本です。コルチゾールが低下している時間帯は(特に夕方から夜間にかけて)低血糖症状が出やすくなりますのでそこを中心に補食(おやつ)を摂ることが有効です。
次にすることは、血糖値を不安定にする食事、体に炎症を起こす食事を控えることです。例えば腸の炎症を引き起こすグルテンや副腎に負担をかけるカフェインです。詳しくはこちら
また、副腎疲労の患者さんは長年のストレスで微量栄養素、特にミネラルを消耗している傾向があります。食物繊維を多く取り、亜鉛やマグネシウムなどエネルギーを生み出すミネラルの吸収を良くする必要があります。
ストレス
健康問題だけでなく、経済的な問題や複雑な人間関係などが大きなストレスになる方が多いです。ストレスを感じないようにする訓練(瞑想など)も効果があります。神経科の病院でカウンセリングを受けることも有用です。詳しくはこちら
実際の例
ほとんどの副腎疲労の患者さんには生活習慣や、溜まっている毒素や隠れている感染症などの隠れた原因があります。それらを見つけ出して治療するのが私たちの役割です。隠れた炎症や感染症は自覚症状がない場合も多く、病院で検査をしなければ見つかりません。根本原因を除去すれば、副腎は自然に回復していきます。詳しくはこちら
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