糖質制限で体調が良くなる人は、メタボの人など元々脂肪の多い人や筋肉量の多い男性などです。
そして副腎疲労がない人です。
何故ならば、「糖新生」をするためには、その材料とスイッチが必要になるからです。
糖新生の材料は、アミノ酸と中性脂肪の一部(グリセロール)、乳酸などです。
スイッチは「コルチゾール」という副腎から分泌されるホルモンです。副腎疲労があるとこの「コルチゾール」が不足してうまく「糖新生」ができません。
骨格の大きい人はそもそも胃腸が丈夫なので、栄養がしっかりと吸収が出来、結果骨格が大きく成長したと考えられます。胃腸が丈夫であれば糖質制限(低炭水化物・高たんぱく質食)が上手くいきます。
いざというときにも、自身の筋肉や脂肪細胞を分解してアミノ酸と脂肪酸でミトコンドリア内でエネルギー(ATP)を作ったり、アミノ酸やグリセロールなどで「糖新生」をしたり、さらに脂質回路が優位になってくれば「ケトン体」という物質を作り出しエネルギーにしたりしているので、体調不良はおきません。
反対にやせ型・骨格の小さい人は、低炭水化物・高たんぱく質食で消化不良を起こし、うまくエネルギーも作れず、自身のなけなしの筋肉や脂肪も分解したくとも限りがあります。低血糖・エネルギー切れを起こしますます体調が悪化していきます。
そこに副腎疲労もあればコルチゾールが出ないため、「糖新生」のスイッチを押すことができません。
ここからは糖質制限のメリットとデメリットをまとめていきます。
★メリット
・メタボの人は痩せる、うまくいけばダイエットができる
・内臓脂肪が減ればインスリン抵抗性の改善にもつながる(ただし高脂肪食ではインスリン抵抗性の悪化につながるという報告があります)
・食後の高血糖がおきない、反応性低血糖症の人によい
★デメリット
・胃腸機能が弱い人では、未消化のたんぱく質が悪玉菌の餌となり腸内環境の悪化がおこる
・食物繊維量が減り、これまた腸内環境の悪化につながる
・胃腸機能が弱い人では、食べても吸収ができないため、エネルギー不足になる
・甲状腺機能が落ちてしまうことがある(詳しくは【糖質制限と甲状腺機能】の記事をご覧ください)
私は糖質制限を否定はしていません。「難治性てんかん」などの病気の治療として行うことがあるからです。
しかし、実際に当院の患者さんを診ていると糖質制限による便秘症・腸内の異常発酵(ガスの発生)、潜在性の甲状腺機能低下症(※)の人も多くいらっしゃいます。
※潜在性の甲状腺機能低下症とは:検査基準値に入るため病気として診断はされませんが、基準値の中でも下の方となり、倦怠感・冷え・浮腫み・徐脈などの甲状腺機能低下症と同じ症状を訴える人も中にはいます。
また糖質制限はどのくらいのレベルで制限をするかにもよると思います。元々ライス大盛、ラーメンとチャーハンなど炭水化物の重ね食べをしている大食いの方が糖質制限をする場合はメリットが多いです。
完全ではなく、ゆるーく制限をすることは人によってメリットのこともあります。例えば、スイーツ好きの女子が砂糖たっぷりの甘い物だけ止めるなど。糖質には種類があるので、糖質制限ではなく「糖質選択」を行うことの方が大事になります。
「糖質選択」については、【糖質の選択方法】で詳しくお話しをしています。
以上、メリットとデメリットを天秤にかけたうえで、糖質制限をおこなうかを判断してみてください。
こちらでは糖質制限のデメリットのうちの一つ、甲状腺機能の低下について触れています。
※本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承ください。病態の改善に必要な食事はひとりひとり異なります。宮澤医院では、詳細な診察、検査を行った結果から個別に最適なお食事をご提案しています。