鉄と言えば、鉄欠乏性貧血です。 日本人若年女性には貧血が多く、血中フェリチンを測定する事で潜在性鉄欠乏貧血を見つける事が出来ます。
- ヘモグロビン > 12.0 g/dl フェリチン値 > 12 ng/mL を満たしていない場合、鉄欠乏の可能性がある。 (フェリチンの基準値は役に立たない)
- 貧血=酸素運搬能力低下=ミトコンドリア障害であるため、疲労、うつ症状が出る。
- 鉄は活性酸素発生源でもあり、フェリチン、トランスフェリンなどタンパクと結合して活性が制御されている。
つまり、鉄は多すぎても少なすぎてもよくないということです。
- 鉄欠乏には、「体内の鉄が足りない場合」と「体内の鉄代謝が止まっている場合」があり、鉄サプリを補給する意義があるのは、前者の方である。
- 鉄の代謝を調整しているのはヘプシジンというタンパク質で、鉄の代謝、吸収を調整しており、炎症がある場合ヘプシジンが鉄代謝を止める。 このときには鉄サプリを補給する意味合いは低い。
- 一般に鉄不足になるのは有月経女性、妊娠中女性、成長期の女性、乳児期である。
- 鉄は酸性化(PHを下げる)したり、還元したり、錯体を作ると溶けやすくなり吸収が良くなる。
具体的な鉄欠乏改善法
ここでは、実際に鉄欠乏を改善するための具体的な方法について紹介します。
① 鉄の吸収を考える
鉄が腸粘膜から吸収されるためには、まず腸粘膜細胞の中に取り込まれる必要があります。 そのためにはイオン化されるもしくは、キレート化されるの2つの方法があります。
1 イオン化する
鉄元素はイオン化されてはじめて細胞膜のイオンチャンネルを通過できるようになります。 鉄は通常Fe3+(酸化型)をとっています。 還元してFe2+(還元型)にすると、鉄がイオン化しやすくなります。 もしくは、PHを下げると、鉄がイオン化しやすくなります。 還元するためにはビタミンCなどの抗酸化剤、PHを下げるためには胃酸が重要です。
2 キレート化する
キレートアイアン、もしくは天然のキレート鉄であるヘム鉄を使用することで、吸収率は格段によくなります。 ただし、臨床の現場では、ヘム鉄にさらにビタミンCを加えることで吸収が良くなるようです。
② 炎症がある場合は、まず炎症を抑える
炎症下では、ヘプシジンにより鉄吸収が抑制されます。
そのような時は、鉄サプリを中止し、抗炎症治療を行いましょう。 腸や上咽頭炎、脂肪肝などは特に見逃されやすい炎症です。
③ カンジタ感染がある場合は先に治療する
鉄の投与がカンジタ増殖を引き起こす可能性があります。
カンジタなどの真菌類は、ヒトと同じ真核生物であり、類似点が多く指摘されています。
鉄はヒト細胞の代謝や、ミトコンドリア機能の維持に重要な働きを担っていますが、同様に真菌細胞においても不可欠な存在です。 真菌は、免疫低下時(抗がん剤治療時など)に、消化管から血管に移動して増殖する事が知られています。
真菌の生育において、消化管内の遊離鉄濃度は充分なのに対して、血中の遊離鉄濃度は、フェリチン、トランスフェリンなどのタンパクに捕捉されるため非常に低くなっています。
そのため、真菌は血中の赤血球、トランスフェリンやフェリチンから鉄を奪取するという取込機構を持っています。
また、鉄サプリメントの摂取がカンジタ感染の危険を増大するという報告もあります。 遊離鉄に結合する働きのあるラクトフェリンをうまく使うのがよいと考えています。