カンジダは健康な人の腸にも存在しています。
普段はほとんど問題を起こしませんが、砂糖の多い食事や抗生剤の使い過ぎなどで過剰に増えると膣炎、疲労や頭痛、腹部膨満など色々な症状を引き起こします。
これをカンジダ症と言います。
カンジダは腸壁にへばりついたり根を張って食い込むために便検査で見つかりにくく、カンジダの出す毒素などを測定して検査を行います。
治療は抗菌剤とハーブを併用して行いますが、カンジダが増えた原因についても同時に治療を行わないと再発しやすいので注意が必要です。
カンジダとカンジダ症
カンジダは、ヒトの正常な腸内細菌叢の中に存在する酵母の一種です。常在菌であり、免疫が正常なら問題を起こすことはありません。ドイツでの研究では70%の人が腸カンジタを持っているそうです。(Robert Koch Instituts 2004)
しかし、長期間の抗生剤、ステロイドの使用、免疫力低下、重金属蓄積などで免疫が低下すると増殖し、感染症状を引き起こします。これをカンジダ症と言います。
口や喉で生じるカンジダは「口腔カンジダ症」、膣のカンジダは「膣カンジタ症」と呼ばれます。人間に感染を引き起こすカンジダ属は20種類以上ありますが、その大部分はカンジダ・アルビカンス菌によるものです。
カンジタ症の症状
カンジダは腸内で発酵してアルコールや、アセトアルデヒドを作り出し、酩酊のような症状を引き起こしたり、炭酸ガスを作り出しお腹をガスで充満させます。
また、アンモニア、アラビノースなどの毒素を作り出し、それがブレインフォグ、低血糖、疲れなどを引き起こします。以下の症状が頑固に続く方は、カンジダの検査を考えた方が良いでしょう。
疲れが取れない:ミトコンドリア機能を障害し、疲労を引き起こします。
自分の匂いが気になる:このような訴えは大体腸内環境の異常ですが、中でもカンジダの方が多いです。
不妊:ミトコンドリア機能低下は不妊の大きな原因です。(ミトコンドリアは卵の減数分裂に必要なエネルギーを提供します)
低血糖:カンジダは単純糖質を好みます。過剰増殖がある人は糖の渇望、低血糖症状が強い傾向にあります。
ブレインフォグ:カンジダの産生するアセトアルデヒド、アンモニアの影響で脳に霧がかかったような状態になることがあります。
腹部膨満:カンジダの産生する炭酸ガスの影響が強いです。
その他リーキーガットの症状:カンジダの分泌する毒素が腸管の粘膜を傷つけます。
カンジダ症の症状は、カンジダの毒素が大きく影響するため、肝臓の毒素処理能力に大きく影響されます。毒素の量が多い人、肝機能が弱い人は症状が強くなります。
カンジダ症の原因
カンジダは常在菌ですが、何らかの原因によって過剰増殖しカンジダ症となります。
だから、カンジダの治療は抗菌薬を使うだけでなく、カンジダが増える原因に対しても同時にアプローチする必要があります。
・食事 砂糖やグルテン(グルテンフリーにしてみて明らかに調子がいい人はカンジダがいる確率が高いです。)
・感染 寄生虫やピロリ菌などの胃腸の感染症は炎症を起こし、免疫を低下させます。
・薬 抗生剤の使い過ぎは菌の交代現象を招きます。胃酸抑制剤は胃腸のPHをアルカリ化してカンジダを増殖させます。ピルもカンジダを増やします。
・副腎疲労 副腎疲労は高確率で腸管免疫を低下させます。
抗生物質がカンジダを消化管バリアを越えて血流に移行させる
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35630457/
カンジダ症の検査
カンジダは腸管の壁に付着する力が強く、また腸管壁の内部に侵入することもあり、便検査でのカンジダの陽性率は決して高くありません。
便検査でカンジダ陽性の場合は、腸内のカンジダがかなり多いと考えてください。
むしろ、カンジダが体内で作っている物質を測定するのが確実な方法です。
体内生成物を測定するには有機酸検査が便利です。3オキソグルタル酸、酒石酸、アラビノースなどがカンジダの主な産生物です。
有機酸検査について詳しい説明はこちら
カンジダ症の治療
カンジダは過剰増殖して症状を引き起こしている場合、体内の代謝に大きく影響している場合などに治療の対象となります。そうでない限りは積極的な治療の必要はありません。
治療では抗菌薬、ハーブ、バイオフィルムの除去を同時に行います。
抗菌薬
カンジダの基本的な治療は抗真菌薬です。腸管内のカンジダ症には、非吸収性薬剤のナイスタチンが最適です。腸管から吸収されにくく全身の副作用が生じにくいためです。他にファンギゾンなども使用する事があります。
・ナイスタチンが精神的、腹部および泌尿生殖器の訴えに顕著な効果を認めた
・ナイスタチンで自閉症児の症状及び有機酸検査のマーカーが低下した
ハーブ
様々なハーブがカンジダに有効であることが知られています。抗菌薬と併用することで相乗効果を得ることができます。
カンジダは抗菌剤だけでなく、ハーブ類に対しても耐性をつくることが知られており、2種類以上のハーブを併用するか、ローテーションで使用して耐性化を避けるようにします
ニンニク、緑茶、プロポリス、クルクミン、甘草の根、シナモン、レスベラトロール、ショウガ、ベルベリンがカンジダ・アルビカンスに有効
バイオフィルム対策
カンジダは抗菌剤などから身を守るため、自らの菌糸などを使って「バイオフィルム」というバリアを形成しています。
一旦出来たバイオフィルムを破壊するのは簡単ではありません。また、時間が経過しているほどバイオフィルムは強固になり、抗生物質治療抵抗性になります。
セルラーゼやプロテアーゼなどを中心とした消化酵素を空腹時に摂取することで、バイオフィルムを徐々に破壊していきます。食物繊維を中心とした食事も大切です。
増殖する原因を除去する
カンジダの増殖原因は「砂糖」「ストレス」「抗生物質」「ピル」「水銀」「他の感染」です。
「砂糖」以外にも糖分が多く入っている加工食品を見極め、除去しましょう。その際特殊な場合を除き、厳格な糖質制限はしない方が無難です。副腎機能が悪化し、食事が続けられない状況に陥る方もいます。
ストレスを消し去るために一番必要なのは睡眠です。様々な事を排除して睡眠時間を確保しましょう。また、ストレスをストレスとして感じない様にするには瞑想、ヨガなどが有効です。
ヘリコバクタピロリ菌の除菌などでどうしても抗生剤を使用しなければならない時は、投与の1週間以上前から乳酸菌を十分摂取し、腸内環境の変化に備えてください。
歯科アマルガムが充填されていると水銀の暴露量が多くなります。除去にも危険が生じますので、くれぐれも防御がしっかりしている歯科医での除去をお勧めします。
(アマルガムの危険性及び、安全な除去について詳しくはこちら)
腸を必要以上にアルカリ環境にしないことも重要です。PHが上昇するとカンジダは菌糸を出して増殖しやすく変化するからです。そのために使えるのが乳酸菌のプロバイオティクスです。腸内環境を弱酸性に整えてくれます。
腸管内のスペースは有限であり、通常、腸壁は良性細菌で占められています。
食事由来の栄養は、良性菌のエネルギー産生、コロニーの維持に使用され、カンジタにはほとんどまわってこないのが正常なパターンです。
さらに腸の炎症を抑え、腸壁をメンテナンスすることが大事です。炎症を起こさない食事も必要になります。
まとめ
カンジダ除菌治療は、単に抗菌薬を飲むだけではかなりの確率で再発します。様々な治療を並行して行う必要があります。
また、カンジダ治療には食事改善が不可欠ですので、こちらもご参考にしてください。