かつて米国で1万人に一人といわれた自閉症ですが、2012年にはアメリカ疾病管理予防センターはその割合は88人に1人との推定を発表しています。
日本での治療は、トレーニング、家族のサポートと薬物治療が主です。
もちろん薬は必要ですが、その目的は日中の精神状態の平穏を確保するためのものであり、根本治療ではないところが歯がゆいところです。
残念ながら保険診療の範囲では、自閉症に対する根本原因を見つけるのは困難です。
日本に比べると、米国には多くの自閉症治療機関や、患者さんの団体があります。
自閉症の治療に関しては、日本と欧米では大分知識量に差が出ていると感じます。
自閉症の根本原因
自閉症は原因がほぼ確定されています。
遺伝子変異、神経興奮毒素、連鎖球菌の感染、有害重金属の負荷、慢性ウイルス感染、性別・血液型・HLAタイプなどです。
これらが複雑に影響しあって、自閉症が生じます。
「なぜうちの子だけが自閉症になってしまったのか?」
という両親の質問に対して、自閉症治療の権威、エイミーヤスコ医師はダイアナ妃の事故を例にあげて説明するそうです。
あのとき、クルマがあれほどスピードをだしてなかったら?
あのとき、パパラッチがあれほど追いかけてこなかったら?
あのとき、運転手がお酒を飲んでいなかったら?
あのとき、シートベルトをちゃんとしていたら?
自閉症はそれらの多くのパズルのピースが組み合わさったときに発症します。
当院の治療
当院では、重金属蓄積および、遺伝子検査、神経伝達物質の代謝などの検査全般を行っており、また、それに対して腸内環境改善、デトックス治療を行っています。
腸内環境改善、デトックス、メチレーションなど基本的な治療方針は同じですので、自閉症の方も御来院頂いていますが、当院の専門は副腎疲労、慢性疲労が主体であり、患者様の多くは小学生~成人です。
当院にいらっしゃる方は、ご自分でサプリメントを用意されている方が多いので、そのような方にはアドバイスのみでサプリメント処方はしていません。
サプリメントが必要な方は他社をご紹介するか、もしくは当院で大人向けの物を体重換算で処方させていただくようになります。
費用は、症状や検査結果により大きく異なりますが、月2-4万円程度です。
腸内環境改善
自閉症を治療するためには、まず体内の炎症、特に腸の炎症を抑えなくてはなりません。
サプリメントに加えて、食生活に対する介入が必要です。
多くのお子さんで、グルタミン酸(興奮性神経伝達物質)をGABA(抑制性神経伝達物質)に変換する酵素の活性低下が見られます。
グルタミンの摂取量を制限し、腸の炎症を抑えるためにもグルテン制限は必須となります。
制限食を導入するのは大変な努力を必要としますが、多くの方で効果が見られます。
腸内環境の把握には、総合便検査や有機酸検査、食物アレルギーIgG検査が有用です。
総合便検査
腸内細菌バランス(良性最近、悪性細菌、イースト(カンジタ)、消化酵素、腸の炎症、免疫状態などを評価する事が出来ます。
有機酸検査
腸内最近の代謝物を測定できる尿検査です。
カンジタ、クロストリジウムの検出に優れている他、シュウ酸、エネルギー状態、ビタミン不足、脂肪の代謝、メチレーション状態など多くの情報が得られます。
食物アレルギーIgG検査
特定の食品への感受性と、リーキーガット症候群の程度を推測する事が出来ます。
グレートプレーンズ社の抗体検査は、カンジタ抗体を検出する事も出来ます。
血液による抗体検査ですので、食事制限をしている場合には結果に影響が出ることがあります。
メチレーション
自閉症のお子さんの95%はメチレーション(メチル化という化学反応)が低下しています。
ドーパミンなどの神経伝達物質は、メチル化によって作られます。
だから、この反応が低下していると発語が遅れます。
メチレーションが低下している原因の多くは遺伝子異常(MTHFRという葉酸の活性化経路)によるものです。
メチレーション状態の把握には、遺伝子検査やメチレーション検査が有用です。
遺伝子検査
特定の遺伝子に変異がある場合、メチレーション回路が回りにくくなります。
MTHFR(葉酸の活性化),MTR(ビタミンB12のメチル化),CBS(グルタチオン生成),VDR(ビタミンDに関わる),COMT(ドーパミンの分解)など、多くの遺伝子が関わっており、変異の状態によって、サプリメントを使い分けます。
メチレーション検査
実際にメチル化回路が回っているかどうかを確かめる検査です。
回っていない場合、葉酸の活性化ができていないのか、SAMe/SAHの比率が悪いのか、還元型グルタチオンが体内で作られているかどうかもわかります。
検査費用は64,800円です。
採血スピッツが3本あります。
全ての検査が必要ですか?
最初から全ての検査をする必要はないと思います。
大事なのは食事を中心にした治療であり、検査はあくまで参考です。
採血に限らず、本人が嫌がる検査を無理にする事は当院では行っていません。
尿検査や便検査など、できる範囲の物を参考にしていきます。
なによりも臨床症状の改善がなによりの指標になります。
重金属デトックス
自閉症のお子さんは、体内に入ってくる重金属の排泄能力が低い事が知られています。
解毒に大きくかかわるグルタチオンの産生が少ない上に、炎症によって消費されてしまっている事も原因です。解毒できる体質への変換が重要です。
使用するサプリメント
乳酸菌、消化酵素、マルチミネラル、B12,葉酸、グルタチオン、αリポ酸、ビタミンCなどが中心です。
場合によっては薬も使用します。
詳細は検査結果により異なります。
場合によっては副作用もありますので、1種類ずつ少量から使って頂くようにしています。
検査のタイミングなど
確認の再検査タイミングは人により異なりますが、治療の節目、よくなった事の確認、治療がうまくいかないときなどに行います。
確認は6か月-1年後くらいおきにおこないます。
デトックスの効果確認はキレーションサプリを変更するたびに行うこともあります。
基本的に治療がうまくいっている間は検査は最小限にしています。
改善について
当院にいらっしゃるお子様のご両親の殆どの方は非常に勉強をされていて、治療に対してひたすら熱心に取り組んでいらっしゃいます。
その結果として、多くの方が改善傾向にあるのだと思います。
この治療はご両親が主役となる治療です。
我々はあくまでもアドバイザーです。