ミトコンドリアが働くためには、酸素が必要です
その赤血球がなんらかの原因で少なくなってしまうのが貧血です。
貧血にはいろいろな種類がありますが、女性を中心に圧倒的に多いのが鉄欠乏性貧血です。
体内で赤血球を作るためには十分な鉄が必要です。
酸素は、赤血球中のタンパク質ヘモグロビン内の鉄にくっついて運搬されていきます。
つまり、貧血で疲れやすい原因は、貧血=酸欠=ミトコンドリア機能低下 だと言えます。
貧血の患者さんは増えているのに見逃されている
厚生労働省の『国民健康・栄養調査報告』によると、貧血の頻度は40歳台以下の女性で25~28%となっています。
同様の疫学調査で、首都圏の女性13,147名のうち、12.0 g/dl未満が17.3%(50歳以下に限ると22.3%)と報告されています。
貧血の定義をヘモグロビン12.0 g/dl未満としても、有月経女性の4人に一人は貧血です。
また、Hayashiらによると、20歳以上の女性50、967名の解析から、女性の平均ヘモグロビン値がこの15年間で減少し、貧血の頻度が増加しています。
また、日本赤十字社の血液事業において比重不足による献血不適格者の比率が、15年で2.2倍に増えました。
増えている理由は、初潮の低年齢化、妊娠回数の減少、子宮筋腫や内膜症の増加で月経量の平均値は多くなっていることに加えて、食事中の鉄摂取量も減っているためと考えられます。
ヘモグロビンの基準値の問題
ヘモグロビン値は、健康診断で必ず検査される項目ですが、貧血と診断される人は僅かです。
その理由の一つは、ヘモグロビンの基準値の設定にあります。
この基準値は検査会社ごとに独自にモニターを募り、その結果から割り出しています。
しかし、貧血は非常に見逃されすい疾患であり、貧血患者も母集団に紛れ込んでいることが予想されます。
だから、ヘモグロビンは特に女性の基準値自体が低いのです。
貧血を見逃さないためには、「基準値と書いてあるものをそのまま信用しない」ことです。
貧血でない鉄欠乏
「貧血でない鉄欠乏」は、
「鉄欠乏があるが、赤血球産生は保たれ、ヘモグロビンの数値が正常」
な病態です。
鉄欠乏の程度は、貯蔵鉄を表す「血中フェリチン値」を調べることで推測することができます。
近年多くの国で、様々な治験が行われ、報告が出始めています。
「貧血でない鉄欠乏」は検査で一見「貧血」に見えなくとも治療をすべき病態です。