孫子の兵法「彼を知り己を知れば百戦殆からず」に従い、まずはカンジタ(カンジダ)の特徴をよく知ることから始めましょう。カンジタがどんなものなのかわかると具体的な戦い方のイメージがつかめます。
感染症症状が乏しく見逃されやすい
・疲れやすい
・甘いものがほしくなる
・化学物質化敏症がある(タバコの煙、香水など)
・記憶障害や集中力の低下がある
・腹部の膨満感がある
これらは典型的な全身カンジタの症状ですが、感染症をイメージさせるものに乏しく、「カンジタ感染症」という診断が付きにくいのです。
水虫や膣カンジタの背後には腸カンジタが存在する事が多いのですが、水虫には塗り薬、膣カンジタには膣錠といった局所の治療のみが行われる事が殆どです。
カンジタはうつ症状をひきおこすこともありますが、うつ症状の患者さんにカンジタの検査をすることは稀でしょう。
良い検査が少ない
膣カンジタ等に関しては多くの検査キットが出回っているようですが、腸カンジダ、全身カンジタの検査は感度が低いものが多いと思います。
「感度と特異性の両者を兼ね備えたカンジダの特異抗原を検出する検査システムとして,推奨できるようなものは現在のところない」
最新医療情報誌アニムス 特集深在性真菌症 対談深在性真菌症の診療と問題点より
カンジタ菌の産生物である「アラビノースの尿中測定」やカンジタ菌の「血中IgG抗体検査」が一番感度が高いと思われ、宮澤医院ではそれらの検査を採用しています。
環境の変化で一気に増殖する
カンジタの最大の特徴は変形能力にあります。普段は酵母型で存在しますが、環境が変わると菌糸型に変化し一気に増殖モードにはいります。
様々な研究から、増殖モードに入るスイッチは「砂糖」と「アルカリ環境」であることがわかっています。
甘いものを食べる
胃酸の抑制剤を飲む(胃酸分泌低下 ⇒ アルカリ化)
抗生物質を使う(弱酸性の乳酸菌がいなくなってしまう ⇒ アルカリ化)
このような医原的な要因がカンジタ増殖の引き金を引くことはまれではありません。2番目と3番目の治療を同時に行うヘリコバクタ・ピロリ菌の除菌治療は、腸のアルカリ化を招きカンジタの増殖をおこす確率がかなり高いのです。
酵母型と菌糸型のカンジタ (Nature Reviews Microbiology 9, 737-748, October 2011)
菌糸型となったカンジタは、消化管全体に広がり鵞口瘡から膣カンジタを引き起こす一方で、菌糸が腸粘膜を貫き腸に根を張ってしまいます。こうなるとなかなか治療が難しくなります。(お風呂のカビが簡単に落ちないのもタイルの中に根を張っているからです)
もちろんこれが腸漏出症候群(リーキーガット症候群)の大きな原因であることはいうまでもありません。
カンジダ菌は様々な物質を産生していますが、粘膜を通り抜けた菌糸は血中から全身にむけてそれらを放出します。これがカンジタの全身症状を引き起こします。
・アセトアルデヒト (頭痛、集中力低下を引き起こす)
・3-オキソグルタル酸 (ミトコンドリア機能障害、疲労を引き起こす)
・アンモニア(ボーっとする)
アンモニアによってさらにアルカリ環境がすすむという悪循環が起きるため、カンジタ増殖は一気に進んでいきます。
(注:酸性の状態を好むカンジタもあります。カンジタは体内の状態に合わせて自分の生態をどのようにも調整できるのが強みです)
一気に治療しようとするとダイ・オフが起きる
ダイ・オフ現象は、カンジタ菌が死滅するときに内部にあるアンモニアなどの毒素が一気に菌体外に排出され、それらによってカンジタ症状が悪化する事をいいます。
多くの人が、カンジタ菌が増殖して、リーキーガット症候群を起こして、アンモニアもアセトアルデヒドもたくさん出て、その処理で肝臓が手いっぱいになっている時に、何のケアもせずにカンジタサプリや抗真菌薬を使い、具合が悪くなって来院されます。
そりゃ無茶ですよ。やっぱり。
カンジタ菌の除菌治療前には、便秘の改善、胃酸や乳酸菌による腸アルカリ環境の改善、腸粘膜の修復、アンモニアケアなど行うべきです。
バイオフィルムを形成する
バイオフィルムとは、微生物の代謝産物と菌体とが結びついた構造体のことです。排水溝のぬめりや口腔内のプラークもバイオフィルムの一種です。
カンジタ菌はバイオフィルムというシールドを形成して抗生剤、免疫などから身を守っています。(人間が外的の襲撃から身を守るため、村を作って集団で住み城壁を築くのと同じですね)
通常の抗生物質のみではバイオフィルム形成したカンジタを取り除くことは困難であり、バイオフィルムを溶かす消化酵素を併用していく必要があります。