コロナウイルス感染症から回復した後も、体調不良が何ヶ月も続く方がいます。持続的な疲労、認知障害、頭痛、睡眠障害、筋肉痛や関節痛、労作後の倦怠感、起立性不耐症などの症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたし、外出が困難になったり、身体が不自由になったりする人もいます。
このようなコロナウイルスの後遺症は、慢性疲労症候群に類似している点が多いです。
慢性疲労症候群は、説明がつかない疲労が6カ月以上継続する疾患です。一般的には原因不明と言われていますが、EBウイルス、サイトメガロウイルス、マイコプラズマ、そしてコロナウイルスが関係すると示唆されています。
2003年、中国から始まったSARS感染症はコロナウイルスが原因でした。香港の地方病院のSARSの生存者を検査したところ、40.3% が慢性疲労の問題を報告し、27.1% が 慢性疲労症候群の基準を満たしていました。(詳しくはこちら)
これは2019年から始まったコロナウイルス感染症(COVID-19)にも同じことが当てはまります。25万人以上を対象とした57の研究のメタアナリシスによると、急性COVID-19患者の43%で、感染後少なくとも6か月間、継続的な症状が持続していました。
スコットランドの研究では、18か月時点で症例の40%以上がすべての日常活動にわたって症状と障害が持続していることがわかりました。COVID-19感染後の慢性疲労症状を呈する人のうち、推定13~45%が慢性疲労症候群の定義を満たしているようです。
慢性疲労の患者さんの体内で起こっていること
カリフォルニア大学代謝センター所長のロバートナビオ教授によれば、慢性疲労症候群の患者さんの体内の代謝を調べたところ、感染の種類にかかわらずほぼ全員が同じような代謝の低下があり、それはまるで冬眠状態の動物と同じような状況だったと報告しています。
慢性疲労の患者さんは冬眠から目覚めることができない動物のような代謝状態に陥っているということです。
なぜそのようになってしまうのか?
細胞はウイルスの侵入などの危機が起こると、ミトコンドリアが活性酸素を放出してウイルスを消去します。その際に一緒にミトコンドリアも退縮します。ミトコンドリアはウイルスが細胞の外に広がらないように身を挺してウイルスを消去するのです。前述のロバートナビオ先生は、これを細胞危険反応と呼んでいます。
通常はその後にミトコンドリアが再形成されるのですが、まれにそれが起こらずミトコンドリアは減ったままになることがあります。これが冬眠から覚めることができない、ミトコンドリア退縮状態の正体です。
慢性疲労症候群のほか、線維筋痛症やパーキンソン病、アルツハイマー病など多くの疾患も同様にミトコンドリア機能障害が影響する疾患は多いです。
ミトコンドリア機能障害には、重金属や活性酸素などの影響でミトコンドリアの働きが鈍るタイプ、糖質や脂質などのエネルギーを使えなくなっているタイプ、そしてミトコンドリアそのものが退縮してしまっているタイプがあり、タイプによって治療は異なります。
当院では、様々な検査から疲労を起こしている方のミトコンドリア機能障害の原因を検索し、治療を行っています。