栄養療法を受けている患者さんや勉強している方にはなじみ深い「リーキーガット症候群」ですが、まだ一般的ではないようです。
しかし「リーキーガット症候群」は誰にでも起こる可能性は潜んでいます。それは、「リーキーガット症候群」になりやすい食べ物を気が付かずに食べてしまっている人が非常に多いからです。
もしかすると原因不明の不定愁訴も、「リーキーガット症候群」が原因かもしれません。
この記事では、「リーキーガット症候群」の症状・原因と対策の食事をまとめました。
最後までお読みいただければ、具体的にどんな食事にすると「リーキーガット症候群」のリスクを減らすことができるのかがわかるようになることでしょう。
リーキーガットとは
日本語の正式名称は「腸管壁浸漏症候群」といいます。
簡単に言うと、腸の粘膜に穴があいてしまい、本来排除されるはずの有害物質(毒素)が体内に取り込まれてしまう状態のことです。
腸に穴???
驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、腸の粘膜には目に見えない小さな穴があって、体にとって必要な栄養素で取り込むべきなのか、はたまた有害な物質で排除するべきなのかを見分けて、仕分け作業をしてくれています。
これが「腸は免疫器官」と言われている最大の理由です。
腸粘膜の役割がしっかりと果たされている場合は問題はなく、不必要な物質は体内には取り込まれません。しかし、「リーキーガット症候群」になってしまうと、有害物質が体内にどんどん取り込まれていくという恐ろしいことになってしまうのです。
リーキーガットの症状
「リーキーガット症候群」(腸もれ症候群)により体内に取り込まれてしまう「有害物質」とは、ウイルスや細菌、水銀などの重金属、化学物質、農薬、添加物、未消化の食べ物、腸内微生物が産生する毒素などです。
とくに未消化の食べ物が引き金となって、アレルギーを発症してしまう人が非常に多くいます。また自己免疫疾患や化学物質過敏症なども引き起こしやすくなります。
他には低血糖症、糖尿病なども発症しやすくなります。
それは、腸の粘膜が粗くなってくると、とくに糖質の吸収速度が速まり、血糖値が急激にあがりその反動で低血糖を起こしやすくなるからです。さらに白砂糖や単純糖質を多く食べているような人では低血糖の症状も酷くなってしまいます。
なぜ腸に穴があくのか?
腸に穴があく原因はいくつかあります。
・未消化の食べ物
・腸内の悪性菌の繁殖
・食品添加物や農薬による影響
が主な原因となっています。
もちろん、ピルや抗生剤、胃酸抑制剤などにより腸内環境が乱れてしまうことも原因ですが、
日ごろの悪い食生活で悪玉菌優勢な腸内を生み出しています。
たんぱく質はしっかりと消化酵素が働いて、きちんと消化されて、腸で吸収できれば何も問題はありません。
しかし、この消化と吸収の一連の流れが上手くいかない人が多くいます。
このような人はとても危険です。
「リーキーガット症候群」(腸もれ症候群)のリスクが非常に高い人です。
どうしてでしょうか?
たんぱく質は消化酵素の働きで分解されて、「アミノ酸」の最小単位として吸収されていくのが理想です。
しかし、何らかの原因により消化酵素が不足していると(酵素材料のたんぱく質が不足していたり、胃酸不足で酵素活性が低下していたりなど)
未消化のカタチ(ペプチド)で腸粘膜に刺激を与えます。
これが「リーキーガット症候群」(腸もれ症候群)ひとつめの原因です。
とくにこの未消化たんぱくになりやすいのが、
小麦に含まれる「グルテン」と
乳製品に含まれる「カゼイン」そして
大豆製品に含まれる「サポニン」「レクチン」です。
これらのたんぱく質を分解する酵素が不足しやすいということがわかっています。
できる限り、これらの食品は避けるようにしましょう。
こちらの記事(グルテンフリーの食事・カゼインフリーの食事)もご覧ください。
グルテンが「ゾヌリン」を過剰に増やしている?
また、グルテンに関しては、腸粘膜の上にある上皮細胞のすき間を結合している「タイトジャンクション」を容易に開けてしまう為、未消化の食べ物でも通してしまうということがわかってきました。
この「タイトジャンクション」は「ゾヌリン」というたんぱく質によって開きます。健康な人は「ゾヌリン」が少ないので、そう簡単に「タイトジャンクション」は開きません。ですから、未消化の食べ物は素通りできないようになっています。
しかし小麦のグルテンにより、この「ゾヌリン」が過剰に増えすぎてしまい、細胞間にすき間が出来てしまうのです。
イメージにしますと、「ゾヌリン」は執事でドアマンをしています。グルテンはゾヌリン執事にドアを開けるように命令をします。するとドア(タイトジャンクション)は開きます。
小麦により「ゾヌリン」執事は増えすぎてしまい、常にドアが開けっぱなし状態で、ウイルスや細菌、未消化の食べ物などが中へ侵入してしまうのです。
最近では「ゾヌリン」の増加により、自己免疫疾患が起こりやすくるということが言われています。小麦が原因でおこるセリアック病では、「ゾヌリン」が異常に増えすぎています。
この「ゾヌリン」の異常増加と「リーキーガット症候群」は密接につながっていることがお分かりいただけたかと思います。
リーキーガットと自己免疫疾患
IgGアレルギー検査で多くの食品に反応している人は、腸にすき間があいている、すなわち「リーキーガット症候群」(腸もれ症候群)ということが言えます。
「リーキーガット症候群」の治療、食事をすることで、反応する食品は減っていきます。
下記が「リーキーガット症候群」の患者様のIgGアレルギー検査の結果です。
ほとんどの食品に反応しています。このような腸内ですと免疫が24時間稼働し続け、免疫亢進となり自己免疫疾患のリスクも高くなってしまいます。
胃腸に負担をかけにくいたんぱく質摂取の方法
低たんぱく質の人は、やみくもにたんぱく質量を増やすことよりも、消化酵素サプリも併せて摂ってもらうことの方が重要です。
そして、以下の食事方法を参考にしてください。
・ステーキなどの塊肉ではなく、ミンチ状のハンバーグやそぼろ料理、肉をペースト状にした料理(フードプロセッサーなどを活用)など。
・煮こごり(肉や魚の骨や皮から溶け出したコラーゲンも摂れる)
・肉を塩麹やパイン・キウイなどの搾り汁、すりおろし玉ねぎに付け込んでおく。
・胃酸が薄まるため、食事中は大量の水分を摂らない。(食事中以外では水分はこまめに)
・胃酸が出やすくなるようにレモン水や梅干しを食前に食べる。
・よく噛んで食べる、一口最低30回!例えば一口ずつお箸をおいてゆっくり時間をかけて
食べる。
このような工夫をしていくと、腸に炎症を起こしずらく、体に必要なアミノ酸はしっかりと体内に吸収できるようになっていきます。つまり、「低たんぱく質」の状態を脱出できるわけです。
カンジダを増やさない方法
次に「リーキーガット症候群」(腸もれ症候群)の原因となるカンジタ(カンジダ)菌についてお話します。カンジタ菌は皆さんの体内にもいる常在菌です。
しかし、ピルや抗生剤、食生活の乱れにより、腸内環境が悪化してくると増殖し悪さをします。
カンジタ菌による体調不良は色々あります。
甘いものが無性に食べたくなり、低血糖を起こすことがあります。
とにかく食後の眠気がひどく、頭に霧がかかったような状態となり、何をやるにも集中ができなくなってしまいます。
便の状態が不安定で、便秘や下痢、お腹のはりなどの症状がある人もカンジタ菌の繁殖が考えられます。
カンジタ菌は腸の粘膜にしぶとくこびり付きます。
これが厄介で、腸に穴をあけて「リーキーガット症候群」を引き起こすのです。
カンジタ菌の増殖を食い止めるには「食事」が一番大事といっても過言ではありません。
ただ、カンジタ菌の食事では制限が本当に多いので、まずは、砂糖、果物、小麦を控えることです。
カンジタ菌の一番の栄養源は「糖質」です。
砂糖は白砂糖だけではなく、はちみつ、メープルシロップ、ココナッツシュガーなど甘味料すべてをできる限り制限していきましょう。
お米や糖質の多いカボチャ、イモ類、人参は量を減らして、過剰に摂らないように気をつけましょう。(副腎疲労を併発している人は制限をしてはいけませんので注意です。)
さらに、カビを含む食品も控える必要はあります。
・数日前の残り物のごはん
・きのこ
・ナッツ類
・コーヒー豆
などです。
発酵食品、酵母を含む食品も慎重にしてください。
・天然酵母、ドライイーストでつくるパン
・キムチや漬物
・みそ、塩麹
悪玉菌が優位の状態でこれらの食品を摂ると、悪い方に発酵を手伝うことがあるようです。
慎重にした方がよいですが、個人差もありますので様子をみながらです。
反対に積極的にとりたい食材は
・香味野菜、ハーブ類(ニンニク、生姜、シソ、パクチー、こしょう、唐辛子、コリアンダー、シナモン、クローブ、クミン、ターメリック、バジル、オレガノなど)
です。
これらは抗菌殺菌作用がありますので、カンジタ菌対策に摂りたい食品です。
詳しくはカンジタ菌除菌中の食事をご覧ください。
腸の負担になる添加物、農薬をできるだけ摂らない
常日頃からスーパーやコンビニ食の人は結構な腸内環境悪化に陥っています。
なぜならば、保存料(殺菌剤)により腸内細菌を殺してしまうからです。悪い菌だけではなく、良い菌までもです。
農薬も同様です。
ただ、無農薬野菜のみを食べることは不可能ですよね。
よく水で洗うことで多少は落ちます。
できれば、桶に水をためて最低1分、できれば5分つけながら揺すり洗いをすると効果的だそうです。農薬を落とす専用の洗剤を使ってもよいです。
あとは、水道水の塩素も、腸内細菌を殺してしまうので、浄水器をつけるか、ペットボトルのお水を使うなどしましょう。
水溶性食物繊維の多い食材
「水溶性食物繊維」の多い食品も意識して摂ると良いでしょう。
乳酸菌やビフィズス菌は「水溶性食物繊維」を材料にして乳酸菌や酪酸菌(らくさん菌)、ビタミン類を産生しています。(これを乳酸発酵といいます。)
酪酸菌は腸のエネルギー源です。腸のぜん動運動を良くしたり、栄養の吸収を良くしたりしています。
・海藻:わかめ、あおさ、海苔、ひじき、もずく、めかぶ、とろろ昆布、寒天
(※海藻の過剰摂取はしないでください。)
・果物:プルーン、アボカド、りんご、キウイフルーツ
より詳しい食物繊維の働きについてはこちらもご覧ください。
お子さんの場合の食事
またお子様の場合は「早すぎる離乳食の開始」が腸への負担となっています。
離乳食は生後5か月頃から開始することが多いのですが、消化力や小腸の粘膜が未成熟な赤ちゃんにとっては大変な負担になります。
赤ちゃんが母乳以外に含まれるたんぱく質を分解できる酵素がしっかりと分泌されてくる時期は、生後1年ほどたってからといわれています。
現在増加している「発達障害」も腸内環境が影響していることがわかってきています。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
(発達障害のお子様のための食事療法)
外食での選び方
外食には腸内環境を悪化させるものが沢山入っていることはわかっていても、
多忙であると自炊をしたくとも中々難しいと思います。
またお付き合いで外食をしないといけない場面もあるかと思います。
ここでは、外食での選び方をお伝えします。
コンビニには保存料(殺菌剤)が沢山使われていますので、「手作りのおにぎり屋さん」、チェーン店ではない「個人経営の定食屋さんや居酒屋さん」がおすすめです。
「個人経営の定食屋さんや居酒屋さん」だと経験の積んだ料理人が素材にもこだわっていることが多いです。
反対にチェーン店ですと、厨房もアルバイトでまわしていて、本部からの加工食材が送られてくることがほとんどです。また、コンビニや全国規模のチェーン店ですと、食中毒なんて起こすことは絶対に避けなければならないため、大量の保存料や殺菌剤を使うことになるわけです。
もし、どうしようもなくコンビニなどで購入する際には原材料がシンプルなものを選びましょう。わけの解らないカタカナが多かったり、PH調整剤、亜硫酸Naなどと書いているものは避けましょう。
「亜硫酸Na」はハムやベーコンなどの加工肉、いくらや明太子などの色を鮮やかに見せるために使われています。実は食材のボツリヌス菌も殺す殺菌剤としての役割もあります。
できるだけ、加工肉、いくら、明太子は避けた方が良いです。
たまには胃腸を休めることも効果的?
胃腸に負担のかける食材を避けることも大事ですが、「断食(ファスティング)」によって胃腸を休めることも効果があります。
例えば、朝食抜きや、週末のみのプチ断食などもおすすめです。
食べ物の消化のために使われていたエネルギーが体の修復のために使われます。
ただし、断食ができる人は「健康な人」です。副腎疲労・血糖値のコントロールの難しい病態の人は自己判断で実施することは大変危険ですのでやめましょう。
いかがでしたでしょうか?
現在は「リーキーガット症候群」になりやすい食べ物があふれてしまっています。
だれにでも「リーキーガット症候群」になる可能性は潜んでいます。
人によって合う食べ物・合わない食べ物はそれぞれ違います。
まずはご自身で、毎日の食事を日記などに残し、その日の体調をメモしてみてはいかがでしょうか?そうすることで、避けるべき食べ物がわかっていきます。
●リーキーガット症候群(腸もれ)と水溶性食物繊維の関係についてはこちら
https://miyazawaclinic.net/physhosis/environment/water-soluble-dietary-fiber
少しでも参考になることがありましたら幸いです。
※本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、