一般的に、関節リウマチに対する治療は薬で炎症を一時的に抑える「対症療法」が主流です。(当院の治療方針はこちら(関節リウマチの本当の原因))
ここではリウマチ治療中の方に推奨される「免疫を整える食事」と「炎症を抑える食事」についてご紹介します。またその他の自己免疫系の疾患、炎症性の疾病のある方にもお勧めしたい食事内容となっています。
リウマチの原因
「自己免疫疾患」とは何らかの原因から「免疫のコントロールが正常に出来なくなる」ことで、自分の組織に対して自身の免疫細胞が攻撃を起こす疾患です。
免疫が攻撃を起こす場所は人によって異なり、攻撃対象が関節の場合「リウマチ」、甲状腺の場合「バセドウ病・橋本病」、膵臓の場合「1型糖尿病」、消化器系の場合「クローン病」、筋肉の場合「重症筋無力症」を引き起こします。
自己免疫疾患の原因は不明とされていますが、「免疫系」に問題をきたしている事は明らかです。
免疫調整に関係する臓器は2つあります。
「腸」と「副腎」です。(副腎についてわからない方はこちらの記事をご覧ください)
「腸」は免疫器官と言われます。
そして「副腎」は炎症を抑えるホルモンを分泌する臓器です。
とくにアトピーなどで処方されることの多い「ステロイド剤」はこの副腎ホルモンのことです。すなわち、アトピーなどの炎症がある人は「副腎」の働きが弱くなっています。
●宮澤医院の症例●
リウマチと掌蹠膿疱症合併の症例2例
https://miyazawaclinic.net/case/case40
https://miyazawaclinic.net/case/pustulosis
リウマチ&腸内環境が悪い状態の症例
https://miyazawaclinic.net/case/case49
この症例から、「腸と免疫の関係」、そしてリウマチなどの自己免疫疾患の患者さんはその他「アレルギーを合併しやすい」ことがおわかりいただけるかと思います。
この「腸」と「副腎」2つの臓器を癒す食事に加えて、「炎症を抑える食事」を行うことがリウマチを治す食事のポイントとなります。
では、これから「腸によい食事」「副腎によい食事」「炎症を抑える食事」この3つの食事を順に解説します。
腸によい食事
腸が免疫器官のわけ
食べたものが消化酵素の力で最小単位の大きさまで分解されると、腸粘膜より栄養素が吸収されていきます。この腸粘膜の働きが免疫に関係するのです。
なぜならば、腸粘膜では、“体に必要な栄養素なのか”、“体にとって異物なのか”を見分けて、必要なものは吸収し、異物は排除するという仕組みが備わっています。
しかし、これから説明していきます「腸に刺激となる食べ物」を頻繁に食べてしまうことで、腸に炎症がおこりやがて腸粘膜が弱くなり、本来異物として認識されるものが、体内に取り入れられてしまいます。
この異物は「重金属」「農薬」「添加物」「未消化の食べ物」など様々です。重金属が体内に取り込まれると、リウマチなどの自己免疫疾患になるという報告があります。
また「未消化の食べ物」は異物と認識されて、アレルギーの原因になることがあります。
未消化の食べ物の腸に対する影響
本来食べたものは肉や魚、大豆などのたんぱく質であれば「アミノ酸」に、お米やイモ類などの炭水化物であれば「ブドウ糖」などの単糖類(糖が1つ)に、油脂であれば「脂肪酸」などに分解されて腸粘膜で吸収されていきます。
特にたんぱく質は、分解されにくい食品が存在します。
それが小麦製品に含まれる「グルテン」と乳製品に含まれる「カゼイン」です。
(グルテンとカゼインについてはこちらの記事もご覧ください。)
「たんぱく質」の分解は「胃からスタート地点」となることや、「胃酸やたんぱく質を消化する酵素が不足」している人が多いということが、たんぱく質の分解に問題を抱える人が多いとされる原因です。
一方で「糖質」は、口に入った時点から酵素作用はスタートします。
また甘味のある食品に関しては、単糖類(糖が1つ)や二糖類(糖が2つ)などで構成されており、分解が簡単です。これはこれで、また別の問題があるのですが、たんぱく質と比べると、容易に分解され、その分吸収されるスピードは速いのです。
たんぱく質の未消化(数個のアミノ酸が繋がったペプチド)のままだと、腸粘膜に刺激を与えて炎症を引き起こします。
この状態が何度も続くと、次第に腸の粘膜に穴があき(リーキガット症候群)、異物をどんどん体内に入れてしまうのです。
またカンジタ菌の繁殖もリーキガット症候群の原因になります。
カンジタ菌の影響がある方は、カンジタ菌対策の食事も別途必要になっていきます。(こちら)
まずは、カンジタ菌が栄養源とする「砂糖」などの甘いものから控えていきましょう。
腸にやさしい食事
●「グルテン」「カゼイン」をカットする (詳しくはこちらグルテン/カゼイン)
●「砂糖」をカットする (詳しくはこちら)
●「添加物」「人口甘味料」をカットする
●お肉の食べ過ぎは控える、お肉を食べる際にはよく噛んで食べる
●大豆も分解しにくいたんぱく質なので過剰摂取は控える
●消化をサポートする食品を摂る
・胃酸の分泌をサポートするクエン酸を含むレモン水、梅干し、お酢(酢の物)を食前に摂る
・消化を促進する食物酵素が含まれる食品:山芋、ぎゃべつ、大根、パイナップル、パパイヤ
※酵素は熱に弱いので、野菜を生のままで摂ることが重要です。
(消化酵素のサプリをとるのでもよいです。)
●たんぱく質より「アミノ酸」として摂取する
・かつお節、骨付き肉、にぼし、魚介類などの動物性の出汁をとり良質なアミノ酸を補給
・アミノ酸は植物にも含まれるので、野菜もしっかり食べる
●食物繊維の豊富な野菜・海藻・きのこ・穀物などバランスよく食べる
主に野菜に多い不溶性食物繊維と、海藻や果物に多い水溶性食物繊維で働きが異なります。
どちらの食物繊維もバランスよく食べましょう。
・おすすめ野菜:ごぼう、レンコン、フキノトウ、モロヘイヤ、おくら、切り干し大根 ・おすすめ海藻:わかめ、あおさ、海苔、ひじき、もずく、とろろ昆布 (※甲状腺機能に問題のある人は海藻の過剰摂取はしないでください。また担当の医師に相談してください。) ・おすすめきのこ:きくらげ、干し椎茸 ・おすすめ穀物(グルテンフリー):ヒエ、アワ、キヌア、アマランサス、発芽玄米 ・おすすめ種実:ごま、アーモンド、栗 ・果物をとるなら:干し柿、干しぶどう、プルーン(砂糖添加なしのもの)、アボカド |
●乳酸菌、発酵食品を摂る
・キムチ、漬物、味噌、麹
※腸内の悪玉菌が優位になっているときに、いきなり発酵食品を摂るのはあまりおすすめできませんので、徐々に腸内環境が良くなってきたら、発酵食品を摂り入れてみましょう。
副腎によい食事
「副腎」は炎症を抑えるホルモンの他、血糖値をあげるホルモン、ストレスに対抗するホルモンも作っています。
「副腎」で作られる炎症を抑えるホルモンが出ないと、リウマチなどの関節炎やアトピーなどの皮膚の炎症など、傷ついた組織を治すことはできません。
「副腎」を癒すことが、リウマチなどの炎症性の疾患には大切になります。
副腎をいじめる食事
血糖値の乱高下につながる食事では、「副腎」を疲弊させてしまいます。
とくに「砂糖」のような精製されている糖質は血糖値が「急上昇」します。
その時にインスリンという血糖値を下げるホルモンが大量に分泌し、その影響で今度は、血糖値が「急降下」してしまいます。
そうなると、低血糖による体調不良が起こります。そのため、体の防御反応として血糖値を上げようとします。この時、「副腎」がはたらき、血糖値を上げるのです。
つまり、「砂糖」を摂ることを控えることが必要になります。
ただ、砂糖は控えるべきではありますが、お米を中心とした炭水化物の制限のしずぎも、自分で血糖値を維持することが困難な副腎疲労の方は、個々の病態にあわせて、炭水化物量を調整する必要があります。
副腎疲労に良い食事は宮澤先生の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。(副腎疲労の食事治療)
副腎によい食事
●砂糖、チョコレート等の甘いものを控える
●ゆっくりと食べる、よく噛んで食べる
●前菜、サラダ、小鉢、スープなどから先に食べて、お米を食事の最後の方にとる
●出汁スープなどからアミノ酸を摂る→糖新生(ブドウ糖を作り出すこと)を起こしやすい材料を摂る
これらはすべて血糖値をゆるやかに上げていく方法です。
またビタミンCは、副腎で多く消費されるため、その他の抗酸化成分とともに積極的に摂ることが大切になります。
ビタミン、ミネラル、ポリフェノールの豊富な野菜・海藻などをバランス良くしっかり食べることが副腎を癒す方法です。
炎症を抑える食事
先ほど述べたとおり、炎症を抑えるホルモンは「副腎」から分泌されています。
食べ物でも「炎症を促進する食品」と、反対に「炎症を抑える食品」があります。
炎症を促進する油と炎症を抑える油
油には、良い油と悪い油があります。
ここでいう良い油とは「炎症を抑える油」、悪い油とは「炎症を促進する油」のことです。
油についてはこちらで詳しく解説していますので、ご覧いただければと思います。
お肉など動物性の食品に多く含まれる「アラキドン酸」は炎症を促進する脂です。
特に、お肉の中でも「アラキドン酸」を多く含有するのは「豚肉」です。
「アラキドン酸」の多く含まれる肉
豚肉>鶏肉>牛肉>羊肉≧ヤギ肉>鹿肉>馬肉
参考:文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)脂肪酸成分表編https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365516.htm
卵もアラキドン酸を多く含みます。
また「アラキドン酸」以外の油でも炎症を促進させてしまう種類の油もあります。
植物の油に多く含まれる「リノール酸」です。「リノール酸」は「アラキドン酸」を経て、炎症の物質(プロスタグランジンやロイコトリエン)を生成します。
ただ勘違いしないでいただきたいのは、この炎症物質があるからこそ、私たちは風邪をひいた時にのどが痛くなったり、熱が出たりして、早く風邪を治すことができます。
また、足をぶつけて腫れるのも、炎症が起きることで、自然治癒するためなのです。
しかし、現代の食生活ではこの「リノール酸」が過剰になっています。
●「リノール酸」の多く含まれる油
一般的なサラダ油・大豆油・コーン油・紅花油・ゴマ油・米油など
これら「リノール酸」は「オメガ6系脂肪酸」に分類されているのですが、同じ「オメガ6系脂肪酸」である「γ-リノレン酸」に関しては特殊で、反対に「炎症を抑える」働きがあります。
●「γ-リノレン酸」の多く含まれる油
月見草油、麻の実油、(母乳)
γ-リノレン酸は、特にアトピー性皮膚炎に効果があります。
その他の炎症を抑える油といえば、有名な「オメガ3系脂肪酸」の「α-リノレン酸」です。
そして、同じく「オメガ3系脂肪酸」の仲間のEPAとDHAも炎症を抑える油です。
EPA・DHAは魚(青魚)に含まれます。
「α-リノレン酸」は体内でEPAに、EPAはDHAに変換されます。
ただし、「α-リノレン酸」からEPA・DHAに変換するには「酵素」が必要で、この酵素の働きが悪い人がいます。このような人はEPA・DHAから摂取した方が効率がよいかもしれません。
もちろん、重金属に汚染されていないことが条件となりますので、大型魚のマグロは避けて、イワシ・さば・さんまなどから摂るか、重金属検査をクリアした信頼のおけるフィッシュオイルサプリかクリルオイルを摂るかが良いです。
バランスよく油を摂るためには
現代の食生活では、「植物油」と「トランス脂肪酸」が過剰になっています。トランス脂肪酸は摂ってはいけない油です。
お肉は適度に摂り、炎症を促進するサラダ油などの植物油はなるべく減らす努力をして、反対に炎症を抑える「α-リノレン酸」「γ-リノレン酸」「EPA・DHA」は積極的に摂取していきましょう。
水分と天然塩が炎症を抑える
塩は「悪」というような認識がある方が多いかと思います。
実際、栄養学の世界でも減塩について指導することが多く、1日の摂取基準があります。
ナトリウム(食塩相当量)は、高血圧予防の観点から、男女とも値を低めにされています。
18歳以上男性8.0g/日未満
18歳以上女性7.0g/日未満
「日本人の食事摂取基準」(2015年版)より
もちろん精製された塩であれば、高血圧の原因となります。
しかし、天然の塩であればナトリウム以外のミネラルが豊富で高血圧の原因にはなりません。
また副腎疲労の人は「適度な塩」が必要です。岩塩や海塩などの天然の塩を摂り、血圧を維持することがポイントです。なぜならば、血圧を上げるホルモンも副腎から分泌されているため、副腎疲労の人は低血圧になりやすいからです。
さらに、塩は関節の動きを改善させます。塩は関節の軟骨内に貯蔵され、水を引っ張る働きがあります。それにより、関節の動きが滑らかになるのです。
もちろん、体が脱水状態にある場合は、高血圧を悪化させますし、腎機能に問題がある人も塩分を処理できないので注意が必要です。
反対に、体内の水分量が十分であれば、自然の抗ヒスタミンとしてアレルギーを改善させます。
関節リウマチの治療中の人で腎機能に特に問題がない方は、「水分補給」と「適度な天然塩の摂取」を心がけると、関節炎に有効となり治療効果をあげます。
ただし「水分補給」はカフェインを含む物や甘い飲み物、アルコール以外です。水かノンカフェインのハーブティーを補給しましょう。
良い塩の選び方
精製塩(食塩)は体に必要なミネラルが含まれず、99%以上「塩化ナトリウム」となります。中にはアルミニウムが高濃度で含まれている食塩もあります。
一方、天然塩には70以上のミネラルが含まれ、酸性に傾いた体内をリセットさせて自然治癒を高めます。
購入する時には、「岩塩」や「海水」となっているものを選びましょう。精製塩でも原材料が「海水」となっているものがあります。よく見ると「塩化ナトリウム99%以上」という表記もされていますので、そこで見分けがつきます。
また製造方法は「天日乾燥・平釜法」でじっくり時間をかけて作られる昔ながらの製法のものを選ぶとよいです。精製塩の場合、「イオン膜立釜法」となっていますので、パッケージをよく確認してみてください。
私たちに本来備わっている自然治癒力を高めるためには、食事を変えていくことが大切です。日々の積み重ねを大切にしながら、楽しい食生活にしていきましょう。
少しでも参考になることがあれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承ください。病態の改善に必要な食事はひとりひとり異なります。宮澤医院では、詳細な診察、検査を行った結果から個別に最適なお食事をご提案しています。