リウマチの本当の原因
関節リウマチは骨、軟骨や関節の痛みとこわばりを持つ疾患です。膠原病の中で最も多く、全国に70万人の方がこの病気に悩まされています。
最近は、抗サイトカイン薬を始めとして、強力な抗炎症、増殖抑制薬が登場しています。これらは一時的に炎症を抑える為には強力な武器になりますが、あくまでも対症療法であり、根本的な解決にはなっていません。また、これら薬剤の副作用も大きな問題になっています。
近年、感染や免疫異常が関節リウマチの根本原因として多くの研究がなされ、エビデンス(社会的裏付け)が得られています。当院ではこれらの根本原因に対する治療を行っています。
当院では、関節リウマチの根本原因として注目を集めている感染や免疫異常に対しての治療アプローチを行っています。多くの患者様が関節痛に悩まされていますが、関節炎を起こす原因は数多くあるにもかかわらず、殆どの方がこれらの検査をされていません。
- 食物アレルギー
- 重金属の蓄積
- 栄養欠損
- 細菌感染症
- 甲状腺機能低下
- ホルモン系の低下
- 水分不足
私たちは関節炎を起こす根本原因を徹底的に調べ、それに対して根本治療を行っています。
治療内容の概要
リウマチは早期から関節変形が起きる疾患ですから、とにかく炎症を抑えて関節変形を進行させないようにすることが必要で、そのために抗リウマチ薬や生物製剤が通常使われます。
しかし、残念ながらあくまでもそれは対症治療です。リウマチの原因に直接アプローチしているわけではありません。根本原因を究明し、その原因に対する治療も合わせて行うことをお勧めします。
私はリウマチは感染症と免疫調節異常がベースにあり、そこに栄養不良が伴っておきる疾患だと考えています。当院では治療方針を立てるためにリウマチの根本原因を調べる検査を行っています。
感染症
リウマチは感染症であることを示す多くの証拠があります。関節の奥深くに細菌が入り込んでいるために、通常の検査ではわかりにくいのです。この感染を抑える事は、現在の所、一番現実的な根本治療の選択肢だと思います。
リウマチに比較的多いといわれているマイコプラズマ感染があれば、抗生剤治療を試す価値はあるでしょう。一般的にリウマチを起こしやすいのはマイコプラズマ・ファーメンタンスだと言われています。
これで陽性反応がでれば、抗生剤を使用して効果を見る事になります。抗生剤には飲み薬と点滴療法があります。アメリカの文献によると抗生剤治療による寛解率は4年で50%くらいです。発症からの時間が短いほど効果が高いと考えています。
免疫調節
腸内環境やホルモンなどが大きく関与しています。副腎と甲状腺は共にホルモン産生臓器であり、特に女性の場合は卵巣と共に平衡して疲弊する事があります。腸内環境と副腎機能を調べると免疫状態がよく把握できます。
栄養サプリメントや、副腎疲労だけを軽減してリウマチが寛解した方もいますが、少数です。当院では免疫調節機能をもつ非変性2型コラーゲンを使用したモニターも行っています。
リウマチは様々な要因が重なって起きていますので、そのひとつひとつの要素を調べて、それぞれに対処していくというアプローチが必要です。宮澤医院では、詳細にお話を伺った上で、検査のご提案を行っています。
感染症が原因になっている可能性のある病気
病気を根本から治療するには、まずその原因を見つけることが必要です。しかし一般的には、関節炎の原因まで追究することはしていません。痛み止め、抗炎症薬や、症状を押させる薬を使うのがせいぜいです。
上に挙げた病気は、感染症が原因である可能性のある病気のほんの一部です。通常これらの疾患には抗生剤が使われることはないのですが、理論上抗生物質を使用することで効果を得られる場合があります。
リウマチの根本原因と言われているものはいくつかありますが、エビデンス(化学的な裏付け)が豊富で、米国中心に多くの人がその原因に対しての治療を実践しているものが2つあります。
一つは感染症、もうひとつは免疫システムの異常です。リウマチは早期から関節変形をおこす為、それを予防するための治療も必要ですが、それと同時に根本の原因をおさえることが不可欠です。
多くの関節炎には、実は感染による原因が存在しています。これに対処するには、少量の抗生物質をうまく使う事が効果的です。
米国のリウマチ専門医トーマスブラウンは患者の関節液からマイコプラズマという病原菌を培養する事に成功しました。ブラウン医師はこれを慢性関節リウマチの原因であると発表し、このマイコプラズマに対して抗生剤治療をすることで多くの患者を治療しました。
低容量の抗生物質を使用することで関節炎の根源に対して攻撃をすることができるとされています。この治療はNIH(米国国立衛生研究所)に見出され、1995年に大規模な臨床試験が行われました。
他の検査所見(ヘマトクリット、血沈、血小板、リウマチ因子IgM)に関しても投与群で優位な改善がみられた。
Ann Intern Med. 1995 Jan 15;122(2):147-8.
また、米国ネブラスカ大学のオデール医師らにより4年間の抗生剤治療試験が行われました。血清反応陽性のRA患者に対してミノサイクリン200mgを投与して4年間フォローアップしたところ次のような結果が得られています。
4年後の服薬状態(ステロイド、抗リウマチ薬) | 中止 | 継続 |
---|---|---|
ミノマイシン投与群(20人) | 8人 | 8人 |
プラセボ群(18人) | 1人 | 16人 |
Arthritis Rheum. 1999 Aug;42(8):1691-5.
このように年間抗生剤治療をしたグループの50%でリウマチ薬の中止を実現しました。ほかにも多くの試験が行われ、抗生物質のリウマチへの効果は確立されたものとなっています。
ブラウン医師と患者によって財団も設立され、アメリカ・カナダを中心としてこの治療のサポートグループが形成されています。(ロードバック財団、https://roadback.org/)当院ではこの治療法を適応のある患者様に行っています。
マイコプラズマ感染症検査
当院では新しいマイコプラズマ感染症検査を行っています。
この検査は、マイコプラズマ脂質抗原に対する抗体を測定する研究検査であり、学術的にマイコプラズマ関連疾患の早期診断・治療に応用されることが期待されています。
対象疾患
・慢性気管支喘息
・特発性間質性肺炎
・皮膚炎(多型滲出性紅斑など)
・腎炎(IgA腎症、ネフローゼ症候群など)
・リウマチ性疾患(関節リウマチ、サルコイドーシスなど)
・神経疾患(多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、筋委縮性側索硬化症、
・血液疾患(溶血性貧血など)
・強皮症、線維筋痛症、慢性疲労性症候群
・血管炎、川崎病
・ライター症候群
・橋本病
・尿道炎 など
背景
マイコプラズマ感染症は、“かぜ”の症状で発病することが多く、長引く乾性のせきが特徴です。また、急性気管支炎の原因菌の第1位はマイコプラズマと言われています。
さらに、マイコプラズマに感染した場合、1~2%は肺炎にまで進行します。肺炎の約20%の原因がマイコプラズマ感染です。マイコプラズマに感染した場合、25%に肺や気管支以外症状、つまり、皮膚炎、腎炎、関節炎、髄膜炎、および脳炎などの症状が見られることが知られています。
このような急性期の症状に加え、炎症性慢性疾患との関連が報告されています。マイコプラズマ肺炎の患者さんでは、従来の検査法より早期に診断できることがわかっています。また、リウマチ性疾患では、マイコプラズマに効果のある抗生物質を投与することにより症状が緩和し、それに伴って、マイコプラズマ脂質抗原に対する抗体価が低下する例がありました。
検査の意義
すでに治療中の場合はその治療を継続することが原則です。この血液検査を行うことにより、疾患のマイコプラズマ感染症との関連の有無を予測することができ、関連がある場合は、今後の病態の変化の指標になります。
実際の診療
初回の診察時に、いずれかの血液検査を実施します。
・マイコプラズマ・ニューモニエ※1脂質抗原IgM抗体
・マイコプラズマ・ファーメンタンス※2脂質抗原IgM抗体
※1:肺炎の原因菌としてよく知られているマイコプラズマです。
※2:尿道炎の原因菌としてよく知られているマイコプラズマです。
症状によっては、抗生物質による治療を開始します。
1ヶ月後に、受診していただき、症状の変化を診察し、前回の血液検査の結果をお知らせします。症状の変化と検査結果とで相関性があると思われる検査を選択して、2回目の血液検査を行います。
さらに、1ヶ月後に受診していただき、症状の変化と検査値の変化の相関性をみます。相関性のある検査値が、病態の変化の指標になります。つまり、マイコプラズマ感染症が疾患に関連していると考えられるため、その後の診療の指標になります。相関性のある検査値がない場合は、疾患とマイコプラズマ感染症との関連は考えにくいと判断できます。
抗生剤治療について
いわゆる風邪などの急性感染症と比較して、この慢性感染症は成長が非常にゆっくりです。だから、抗生剤治療も長期間(数ヶ月から数年間)にわたることになります。
この治療は多くの人に有効と考えられるが必ずしも全員には効果があるわけではありません。もし効果がないときは他の原因を検査する必要があるでしょう。関節炎は多くの場合、常に複数の原因が存在します。
当院ではブラウン先生のオリジナルプロトコールを改良したものを用いています。テトラサイクリン、ミノマイシンなどの抗生剤を使用します。この抗生剤は細胞を囲んでいる脂肪層の通過がよく、多くの文献でも使用されているものです。
副作用は?
- 容量が高すぎるとめまいがおきることが報告されている一時的にミノマイシンの容量を下げることでおさまるでしょう。
- 長期使用により腸内細菌のバランスを崩すことがあります。
治療を受ける前に腸内のカンジタ菌検査を受けていただきます。もし以上があればそちらを先に治療します。
また、この治療中は十分な量のプロバイオティクスをとって薬剤によって破壊された細菌フローラを元に戻すようにしていただきます。 - 皮膚の色素沈着
ミノサイクリンは皮膚の変色、しみを起こすことがあります。
抗生剤をはじめると一過性に症状の悪化が見られることもあります。 - テトラサイクリンの常用は経口避妊薬の効果を弱めます。
- ミノシンやテトラサイクリンは妊婦に投与すると胎児に影響があるため、妊娠中又は妊娠の予定がある方はこの治療はうけられません。
詳しいことはクリニックまでお問い合わせください。
このように、関節炎の治療には抗生物質は多大な効果が期待できますが、それだけですべてが解決することは少ないと考えられます。患者さんの自己治癒能力が完璧に機能している場合はこれだけでも効果を発揮できるでしょう。
しかし、冒頭にお書きした通り、自己治癒能力が働くのを邪魔しているものがある場合はそちらに対しても対応する必要があります。