慢性疲労からはじまり、うつ病や自閉症などの精神疾患、アトピーやリウマチなどの自己免疫系疾患などすべての治療に先立って、必ず見ておかなければならないのが腸内環境です。
末梢リンパの60%が集中する腸管は、免疫の要でもあります。また、迷走神経を通じて脳と常に対話を行っており、セロトニンの90%以上を作り出している器官でもあります。
また、栄養療法を行う上で消化吸収を整える事は全ての治療に優先される事です。
当院では問診、診察に加え特殊な検査を駆使して腸内環境を立体的に把握し、治療に役立てています。
問診と診察
食事内容、便の性状をお聞きします
問診で、1週間にわたる食事および便日記を書いていただきそれを解析しています。食事内容は現在起きている様々な症状に影響します。コーヒー、アルコールなどを例にとるまでもなく脳は一番食事の影響を受けやすい箇所です。
便の性状(便の回数、色、臭い、形)は腸内環境の鏡です。便の乾燥重量の半分は腸内細菌の死骸です。腹部膨満感、胃痛、腹痛、胸焼けなどの症状からも胃腸の機能不全部位が推定できます。
既往歴をお聞きします
腸管に入り込む異物から人を守ってくれているのは、多様な微生物から成る腸内細菌叢です。腸内環境の把握において我々が特にお聞きしたいのは、腸内細菌叢を変化させるような疾患、薬剤、食事、ストレスなどが過去になかったかどうかです。
例えば小麦を含む食事が腸粘膜細胞の隙間を開き、人によってはリーキーガット症候群を引き起こすことが知られています。
ストレスは悪性細菌を増やし、腸内細菌叢の多様性を失わせ、リーキーガット症候群を起こしやすくします。副腎疲労を起こす方の多くは長年のストレスで腸内環境も悪化しています。
腸内環境を一番狂わせる薬剤は抗生物質です。悪性細菌のみならず、良性細菌にも広く影響し、腸粘膜のバリアを破壊します。
ステロイド製剤、女性用のピル(ステロイド剤に似た化学構造を持っています)も影響します。腸カンジタ症を引き起こしやすくなります。
胃腸の運動状態まで診察します
腹部ぜん動運動、ガスや便の貯留を診ていきます。本来胃腸は一部を除き、血流に富み可動性の高い臓器ですが、触っても胃腸が固く動きが悪い方が多くいらっしゃいます。
検査
胃カメラや大腸カメラ、エコー検査などで全く異常がない方でも特殊な検査では多くの異常が見つかります。当院で行う検査は、器質的異常(ポリープや潰瘍などの形の異常)ではなく、機能的な異常(胃酸や消化酵素がきちんと出ているか、免疫状態が狂っていないか、腸内細菌のバランスはどうかなど)を中心に見ています。
食物アレルギーIgG検査
アレルギーのもとになる物質を抗原、それに対する免疫を抗体といいますが、食物アレルギーは食物が体に入り込んだ時に抗体が反応してアレルギー反応を誘発することをいいます。
遅発性アレルギーであるIgG反応は原因となる食物を摂取してから数時間―数週間をかけて反応するもので、その食物を絶って以降も症状が持続します。
この検査はリーキーガット症候群の指標としてとらえてよいと思います。しかし、個々の食物のアレルギー反応はあまりあてになりません。検査会社によって反応する食物の種類が大きく異なることがあるからです。
IgG検査で多くの項目が陽性であればそれはリーキーガット症候群の存在を意味します。
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総合便検査
腸の良性、悪性細菌、カンジタの有無(カンジタに効く抗生剤の種類もわかります)、炎症、消化酵素、免疫、エネルギー状態などを調べます。
腸内環境の改善は、単純に乳酸菌サプリを摂ればよいというものではありません。単一のプロバイオティクスの大量投与は逆効果になることもあるのです。重要なのは菌の多様性です。だからこそ現状の乳酸菌バランスを確認することがとても大切なのです。
ゾヌリン検査
リーキーガット(腸漏れ)症候群は、食事の偏りや、ストレス、腸内細菌叢の多様化の欠如などが原因で、腸の粘膜細胞の隙間が大きくなり、本来は透過しない細菌や未消化の巨大分子が血流に流れ込み様々な症状を引き起こす病態です。
一般的な症状としては、食物アレルギー、腹部膨満感、慢性疲労、うつなどがあげられます。
ゾヌリンは、小腸で放出され腸粘膜細胞の隙間を開かせる蛋白ですが、腸から血中に漏れ出すことで血中濃度が上昇するため、リーキーガット症候群の重症度判定に適している検査と言えます。
検査の基準値は45 ng/mlですが、臨床的には40 ng/mlレベルから炎症・自己免疫疾患の症状が見られます。