根本原因が残っていないか血液検査から推測する方法
栄養療法を実践していると、「サプリメントを飲んで血液検査の数値は良くなったのに、体調は変わらない」という患者さんに出会うことがあります。
AST、ALT、LDH、ALP、フェリチンといった栄養素や酵素活性を表す数値は、サプリメントを摂取すれば比較的容易に改善します。しかし、それはあくまでも「サプリを摂った結果」であって、根本的な体調不良の原因が解決されたわけではありません。
酵素活性が低下したり、補酵素が不足したりする背景には、必ず何らかの原因があります。その原因が解決されないまま補酵素だけを補充しても、数値は上がりますが、本質的な改善には至らないのです。
実際、当クリニックにも「数値は改善したのに調子が良くならない」という方が多数いらっしゃいます。そうした方には根本原因を探る精密検査をお勧めしていますが、血液検査に比べて費用が高額なため、躊躇される方も少なくありません。
注目の炎症マーカー:SIIとSIRI
そこで今回は、比較的簡単に算出できる新しい指標をご紹介します。
SII(Systemic Immune-Inflammation Index)とSIRI(Systemic Inflammation Response Index)は、元々がん患者さんの予後予測マーカーとして開発されましたが、ここ10年、特に欧米で炎症や免疫状態を総合的に評価する指標として注目され、エビデンスが蓄積されています。最近では米国の栄養療法学会でも話題になっています。

特にSIIは、以下のような慢性炎症を反映します:
- 肥満、脂肪肝、インスリン抵抗性
- 腸の炎症
- 睡眠不足、酸化ストレス
- 環境毒素(ヒ素、カドミウムなど)
- 栄養欠乏(ビタミンB6、B12、葉酸、鉄、亜鉛など)
- ストレス負荷(HPA軸の機能異常)
まさに栄養療法における重要な指標と言えるでしょう。
基準値と計算方法
免疫代謝が正常に機能しているかを知る目安として:
- SII:300以下
- SIRI:1以下
SIIは特に血管系の炎症を、SIRIは自己免疫が関わる炎症を反映します。
そして何より優れているのは、通常の血液検査項目(白血球数、血小板数、好中球数、リンパ球数、単球数)から簡単に算出できる点です。
計算式
- SII = (血小板数 × 好中球数)÷ リンパ球数
- SIRI = (好中球数 × 単球数)÷ リンパ球数
となります。検査の基準値が外国基準なので、日本の一般的な検査結果にはそれぞれ係数を10倍、1/1000倍する必要があります。詳しくは下記を見てください。

治療経過のモニタリングにも有用
このマーカーのもう一つの利点は、治療経過の観察に使える点です。当クリニックの患者さんでも、治療が進むにつれてこの数値が低下してくるケースが多く見られます。
注意点:原因の特定には別の検査が必要
ただし、SII・SIRIは炎症の「存在」を示してくれますが、その「原因」まではわかりません。
基準値を上回っている場合は、GI-MAP検査やカビ毒検査など、根本原因を特定する精密検査をご検討いただくことをお勧めします。
数値だけを追いかけるのではなく、その背景にある本質的な問題に目を向けることが、真の健康回復への第一歩です。
注意したいのは、炎症の目安にはなるが原因はわからないということです。
基準値を上回っている場合は、今一度根本原因(GIMAPやカビ毒検査など)を調べることをご考慮ください。
ご自分の検査結果をAIに解析させることに抵抗がなければ、下記プロンプトを使ってください。
(検査結果表示単位が上記の場合)あとは検査画像を添付するだけです。
画像が添付されたら白血球、リンパ球、好中球、単球、血小板を読み取る。
SII(好中球x血小板/リンパ球)x10、SIRI(白血球x好中球x単球/リンパ球)/100,000 を表示する。