コロナ後遺症
コロナ後遺症(Long COVID)とは、新型コロナウイルス感染症の急性期症状が改善した後も、数週間から数ヶ月にわたって持続する様々な症状の総称です。感染後患者の約14%に医療が必要な後遺症が発症し、感染の重症度に関わらず、軽症や無症状だった方にも生じることが明らかになっています。
研究によると、感染後6ヶ月以内に神経・精神障害、糖尿病、高血圧を発症する可能性は対照群の約2倍に増加し、27%の人が感染後7ヶ月まで症状が持続することが報告されています。特に注目すべきは、脳のMRI検査で灰白質の菲薄化と組織コントラストの大幅な減少が確認されており、認知機能の障害と相関していることです。
現在、世界中で26以上のランダム化比較試験が進行中ですが、確立された治療法はまだありません。このような状況において、分子栄養学的アプローチは症状改善と根本的な回復をサポートする重要な選択肢となっています。
コロナ後遺症の症状
コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、全身の臓器システムに影響を及ぼします。最も頻繁に報告される症状は疲労、筋肉痛、関節痛、そして元々の痛みの増強です。
神経系への影響では、認知機能障害(いわゆるブレインフォグ)、頭痛、神経痛、臭覚・味覚障害が特徴的です。呼吸器系では呼吸困難、運動能力の低下、持続的な咳が見られ、循環器系では心機能障害、不整脈、血管機能の低下が報告されています。
精神面では不安、うつ、不眠、PTSD様症状が現れることがあり、消化器系では肝酵素の上昇、吐き気、下痢、腹痛、腸内細菌バランスの変化が観察されます。内分泌系では糖尿病の発症や悪化、甲状腺機能異常も報告されており、全身性の炎症と自己免疫的な反応が様々な症状を引き起こしていることが示唆されています。
コロナ後遺症の原因
コロナ後遺症の発症メカニズムは複雑で、複数の要因が相互に関連しています。最も重要な要因の一つは、ウイルスが細胞侵入時に利用するACE2受容体の機能低下です。
新型コロナウイルスは、細胞表面のACE2受容体に結合して侵入しますが、この過程でACE2の酵素活性が失われます。ACE2は本来、血管拡張や抗炎症作用を持つ重要な酵素であり、その機能低下は血管内皮障害、微小血管障害、血栓形成を引き起こします。これにより組織への酸素供給が低下し、酸化ストレスが増大します。
ミトコンドリア機能障害も重要な要因です。感染により引き起こされる炎症と酸化ストレスは、細胞のエネルギー産生工場であるミトコンドリアを直接的に損傷します。コロナ後遺症患者では、慢性疲労症候群患者と同様に、筋肉のミトコンドリア機能が低下しており、運動でさらに悪化することが確認されています。
さらに、感染後も炎症反応が継続していることが明らかになっています。ウイルス感染から40~60日後でも、すべての患者で有意な炎症反応が残存し、影響を受けたタンパク質は抗炎症反応とミトコンドリアストレスに関連していました。
腸内環境の変化も見逃せません。コロナ感染は腸内細菌の多様性を低下させます。また、ACE2は小腸でアミノ酸の吸収にも関与しているため、その機能低下はアミノ酸不足とリーキーガットを引き起こします。
脳への影響では、ウイルスが嗅覚粘膜から直接脳に到達する経路と、炎症性サイトカインが血液脳関門を通過してミクログリアを活性化させる経路があります。これらの変化は学習、記憶、神経可塑性の障害につながります。
当院のアプローチ
当院では、コロナ後遺症に対して分子栄養学の3原則に基づいた包括的なアプローチを行っています。根本原因を見つけ、生化学要素を考慮し、適切な量の栄養素を摂取することで、身体の自然な治癒力を最大限に引き出すことを目指しています。
詳細な検査による現状把握
まず、血液検査、有機酸検査、などの包括的な検査を行い、ミトコンドリア機能、副腎機能、腸内環境、解毒能力、炎症の程度、栄養欠損の状況を客観的に評価します。
ACE2機能の回復
失われたACE2活性を取り戻すために、植物ベースのポリフェノールが豊富な食事を推奨します。栄養素としては、正常なACE2機能に不可欠なビタミンDをはじめとした、抗炎症効果とウイルス増殖阻害作用を持つ栄養素使用します。
ミトコンドリア機能の修復
エネルギー産生の中心であるミトコンドリアの機能回復は、ミトコンドリア機能低下の原因によって大きく異なります。多くは酸化ストレス対策と退縮してしまったミトコンドリアを再生する治療となります。
腸内環境の改善
腸内細菌叢のバランス回復に有効なプロバイオティクス、および炎症抑制にはレスベラトロールとクルクミンが有効です。
血管内皮機能の改善
血管内皮の修復と微小循環の改善のため、オメガ3脂肪酸を十分量摂取し、血管拡張と抗炎症作用を促進します。
脳機能と神経可塑性の向上
認知機能の回復には、オメガ3脂肪酸、ポリフェノール、ナイアシンを組み合わせてBDNF(脳由来神経栄養因子)の産生を促進し、神経可塑性を刺激します。消耗した神経伝達物質の補強には、トリプトファン、チロシン、ビタミンB6などの材料となる栄養素を適切に補給します。
副腎機能の回復
多くのコロナ後遺症患者に見られる副腎疲労に対しては、ストレス管理、血糖値の安定化、ビタミンC、ビタミンB群、アダプトゲンハーブなどを用いた副腎サポートを行います。必要に応じて唾液コルチゾール検査による詳細な評価も実施します。
個別化された治療計画
患者様一人ひとりの症状、検査結果、生活状況に応じて、段階的で個別化された治療計画を立案します。サプリメントは一種類ずつ慎重に導入し、効果と安全性を確認しながら調整します。また、食事療法、運動療法、ストレス管理などの生活習慣の改善も並行して進めます。
院長より一言
コロナ後遺症は、血管やミトコンドリア、腸内環境など複数の原因が絡み合って起きていますが、一番多い慢性疲労の症状の原因はミトコンドリア機能低下です。
治療のためにはミトコンドリア機能低下の原因を調べて治すことが有効なことが多いです。
コロナウイルスは胃腸感染も起こす人が意外と多く、その場合栄養の吸収に関わるタンパク質が障害され、それによってミトコンドリア修復が遅れる人もいます。
観戦時に下痢などがあった人は特に腸内環境やアミノ酸栄養の検査も一緒に行うことをお勧めしています。
➤検査・カウンセリングは完全予約制で承っております。
お気軽にLINEやWebからご相談ください。
\無料カウンセリングはこちら/
ご予約・お問い合わせ
受診に迷われている方へ
当院を受診されるかどうか迷われている方、当院での受診が適切かどうか判断がつかない方のために、ご相談を受け付けています。
クリニック公式LINE
無料セミナーやお得なキャンペーン情報が知りたい方はこちら