ADHDに対する栄養療法

ADHD(注意欠如・多動症)は、「集中できない」「じっとしていられない」「衝動的に行動してしまう」といった特性が日常生活に影響を及ぼす神経発達症のひとつです。主に子どもに診断されることが多いですが、大人になってもその特徴が続く「大人のADHD」も決して珍しくありません。
これらの症状は「性格」や「育て方」の問題と誤解されがちですが、実際には脳内の神経伝達物質や栄養状態が深く関わっています。分子栄養学と脳生化学の観点から見ると、ADHDは体内の生化学的アンバランスによって引き起こされる状態であり、適切な栄養療法によって大きな改善が期待できる疾患です。
ADHDの症状
ADHDには大きく3つのタイプがあり、それぞれ異なる特徴と生化学的背景を持っています。
不注意優勢型では、物をなくしやすい、忘れっぽい、ぼんやりしているといった症状が目立ちます。生化学的には銅の過剰と亜鉛の欠乏が見られ、ドーパミン活性の低下、ノルエピネフリンの上昇、GABAの低下が特徴的です。このタイプでは集中力の持続が困難で、注意が散漫になりやすく、細かい作業でのミスが多くなります。
多動・衝動優勢型は、落ち着きがない、しゃべりすぎる、順番を待てないといった行動面での問題が前面に出ます。このタイプではノルエピネフリンとアドレナリン受容体での過剰な活動が見られ、銅の過剰が主な問題となっています。また、過メチル化がしばしば存在することも特徴です。
混合型は、不注意と多動・衝動が両方みられるタイプで、最も複雑な症状パターンを示します。これらすべてのタイプに共通して言えることは、行動障害やADHDは一般的に出生時から異常な生化学状態が見られるということです。
ADHDの原因
分子栄養学と脳生化学の観点から見ると、ADHDの背景には複数の生化学的アンバランスが隠れています。
最も重要な要因のひとつは、銅の過剰と亜鉛の不足です。ADHD患者の68%にこの金属代謝の異常が見られます。銅の過剰は、ドーパミンを枯渇させ、ノルエピネフリンを過剰にさせ、注意欠陥を引き起こします。一方で亜鉛欠乏はADHD患者の50%に見られ、ドーパミンの低下、ノルエピネフリンの過剰、GABA活性の調節障害、およびNMDA活性の障害と関連しています。
メチレーションのアンバランスも重要な要因です。ADHDに対する栄養療法の権威ウィリアム・ウォルシュ博士の研究によると、ADHD患者の約18%が「過剰メチル化タイプ」に該当します。これは、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の合成や代謝に深く関与するメチレーションの過剰状態を意味します。実際にメチル化療法が必要なのは約20%と限定的で、多くのケースではミネラルバランスの調整が主要なアプローチです。
ドーパミンとノルアドレナリンの調整不良もADHDの中核的な問題です。ADHDでは前頭葉でのドーパミンやノルアドレナリンの活動が低下していることが知られており、これが集中力の低下や衝動制御の困難につながります。
さらに、ピロール障害や重金属の蓄積がADHDの多くのケースで見られます。ピロール障害は、生まれつきビタミンB6と亜鉛が慢性的に不足する体質で、セロトニン、ドーパミン、GABAの生成に影響を与えます。
必須栄養素の不足も見逃せません。亜鉛以外にも、マグネシウム(神経の興奮を抑える)、鉄(ドーパミン合成に関わる)、ビタミンB群(メチレーションや神経伝達物質合成に不可欠)、タンパク質(神経伝達物質の原料)などの不足が多くのADHD患者で報告されています。
当院のアプローチ
京橋ウェルネスクリニックでは、ADHDの症状を単なる「脳の障害」と捉えるのではなく、体全体のバランスを見直すことで改善を目指す根本治療を行っています。
包括的な検査による現状把握から治療を開始します。血液検査による栄養素の過不足チェック、メチレーションバランスの判定、腸内環境や解毒能力の評価を行い、一人ひとりの生化学的特徴を詳細に把握します。
段階的な栄養療法を実施します。まず副腎サポートを行い、血糖値を安定化させます。次に不足栄養素、特に亜鉛・鉄・マグネシウム・ビタミンB群の補充を行います。亜鉛の投与により68%の改善が見られたという報告があります。遺伝的な要因に対処するためにRDA(推奨される1日摂取量)よりも多くの量が必要とされる場合があります。高銅や毒素がある場合は徐々に導入します。
腸内環境の改善も重要です。リーキーガットや炎症の修復を行いセロトニンの産生環境を整えます。また、解毒機能の強化により重金属や化学物質の蓄積対策を行います。
個体差に応じた神経伝達物質バランスの調整を行います。過メチル化の場合は、葉酸とビタミンB12を使用し、亜鉛、ビタミンB6、GABA、および補助栄養素を組み合わせます。
治療順序の重要性を常に意識しています。金属代謝とピロールを修正するまで、メチル化治療は2〜3ヶ月延期することが推奨されます。
また、NACはNMDA受容体の過剰な活動を抑制することで、ADHD症状を緩和する可能性があります。
まとめ
ADHDは発達障害の中でも比較的栄養療法の効果が出やすい疾患です。ADHD患者の68%に見られる銅の過剰と亜鉛の不足の是正、メチレーションバランスの調整、神経伝達物質の適正化を図ることで、子どもも大人も効果が見られます。
治療のコツは、検査に基づいた個別対応と、順序を守ったアプローチです。体質は一人ひとり異なるため、画一的な治療では不十分であり、適切な順序でのケアが重要です。また、睡眠、食事、スクリーン時間の調整といった生活習慣の見直しも大きな影響を与えます。
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