ビタミンDの栄養療法における活用法【血中濃度が全てを決める】
ビタミンDの研究は、この10年で完全に様変わりしました。
何が明らかになったのか?
骨折、糖尿病、がんなどに対して、血中濃度によって、得られる効果が全く違うということです。
血中濃度30 ng/mL未満の人への衝撃的な結果
2019年のD2d研究を見てください。
糖尿病予備軍に対して、ビタミンD(4000 IU/日)を摂取させた大規模研究です。
結論:「糖尿病の発症リスクを有意には低下させなかった」
しかし、事後解析では、血中濃度が12 ng/mL未満の群においては、有意な予防効果が示唆されました。
つまり、ビタミンDが効くか効かないかは「その人の血中濃度次第」なんです。
血中濃度50 ng/mL以上で見えてくるもの
2022年のBMJ論文、VITAL研究の自己免疫疾患に関する解析。
ビタミンD(2000 IU/日)を5年間摂取したグループは、自己免疫疾患の発症リスクが22%低下しました。
関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、自己免疫性甲状腺疾患、乾癬。
これらの治療が難しい病気を「予防できる」可能性が示されたわけです。
ただし、この研究の参加者の多くは、最終的に血中濃度が40〜60 ng/mLに達していました。
がん予防は血中濃度とBMIの両方が関係する
2019年のNEJM、VITAL研究の主解析では、「あらゆるがんの発生率は有意に低下しなかった」という結果。
しかし、2019年のBMJメタアナリシスでは、ビタミンD補充によって、がん死亡率が16%有意に低下しました。
がんになるリスクは下げられないかもしれない。
でも、がんで亡くなるリスクは確実に下げられる。
そして、この効果が出るのも、血中濃度が40 ng/mL以上の人なんです。
骨折予防のパラドックス
健康な中高年者において、ビタミンD(2000 IU/日)の補充は、骨折リスクを有意に低下させなかった。
なぜか?
研究参加者の多くが、すでに血中濃度30 ng/mL前後だったからです。
つまり、「すでに欠乏していない人」には効果が出にくい。
逆に言えば、20 ng/mL未満の欠乏している人には、しっかり効果があるということです。
高用量の落とし穴
2021年のSTURDY研究が出した警告。
高齢者の転倒予防において、高用量(1000 IU/日以上)のビタミンD摂取は、低用量(200 IU/日)よりも優れた効果を示さなかった。むしろ高用量群で転倒リスクが増加する傾向さえ見られた。
「多ければ多いほどいい」は間違いです。
血中濃度を測らずに、闇雲に高用量を飲む。
これが一番危険なんです。
感染症予防は「毎日」がカギ
2021年のLancetメタアナリシス。
ビタミンD補充は急性呼吸器感染症のリスクを有意に低下させた(オッズ比0.92)。
ただし、効果があったのは「毎日摂取する」プロトコルだけ。
大量単回投与(ボーラス投与)は効果なし。
コンスタントに血中濃度を維持することが重要なんです。
2つの基準値の意味
日本の医学的な基準:
- 欠乏症:20 ng/mL未満
- 不足:20〜30 ng/mL
- 充足:30 ng/mL以上
分子栄養学・機能性医学の基準:
- 理想値:40〜60 ng/mL
- 自己免疫疾患の抑制や抗がん作用:50 ng/mL以上
30 ng/mLは「骨が折れないライン」。
50 ng/mLは「免疫が最適に働くライン」。
どっちを目指すかは、あなた次第です。
血中濃度を測れ。話はそれからだ。
というわけで、血中濃度を測らずにビタミンDサプリを飲むことはお勧めしません。
なぜ血中濃度を測らなければいけないのか
理由は3つ。
1. 今の自分の状態がわからない
日本人の98%が30 ng/mL未満。
つまり、ほとんどの人が不足しています。
でも、あなたが20なのか、10なのか、それとも35なのか。
測らなきゃわからないでしょう?
2. サプリが効いているかわからない
患者さんからよく聞きます。
「先生、ビタミンDのサプリ毎日飲んでるのに、全然元気にならないんです」
血中濃度を測ったら、25 ng/mLのまま。
5年間、毎日5000IU飲んでいるのに、です。
これ、完全に「栓の抜けたバスタブに水を入れている」状態なんです。
3. 目標がわからない
骨の健康だけでいいなら、30 ng/mL。
免疫を最適化したいなら、50 ng/mL。
がん予防を本気で考えるなら、50〜60 ng/mL。
どこを目指すかで、必要な量が全く違います。
測らなきゃ、目標も立てられないでしょう?
飲んでも上がらない人の共通点
サプリを飲んでも血中濃度が上がらない人、めちゃくちゃ多いんです。
原因は:
1. 腸の吸収不良
リーキーガット、ディスバイオーシス、腸の炎症。
これがあると、どれだけビタミンDを飲んでも吸収されません。
2. 肝機能の低下
ビタミンDは肝臓で25(OH)Dに変換されます。
肝臓が疲れていたら、変換できないんです。
3. 遺伝的要因
ビタミンDの代謝が生まれつき低い人、います。
こういう人は、普通の人の2倍以上飲んでも、血中濃度が上がりにくい。
患者さんの実例
5年間、毎日5000IUのビタミンDを飲んでいるのに、血中濃度が25 ng/mLから全く上がらない患者さんがいました。
腸内環境の検査をしたら、案の定。
カンジダの過増殖とリーキーガットが見つかりました。
除菌と腸の修復を3ヶ月かけて行ったら、同じ5000IUで血中濃度が48 ng/mLまで上がったんです。
吸収できる体を作る。
これが先です。
でも、腸の治療に時間をかけられない人もいる
そういう人には「注射」をお勧めします。
年2回のビタミンD筋肉注射。
半年に1回、60万単位のビタミンDを臀部の筋肉に注射します。
この注射は臀部の筋肉・脂肪に蓄えられて、特に冬の間ゆっくりと放出されます。
臨床データを見てください:
- 治療前:平均32 nmol/L(約13 ng/mL)
- 治療4ヶ月後:平均114 nmol/L(約46 ng/mL)
- 治療12ヶ月後:平均73 nmol/L(約29 ng/mL)
1回の注射で、1年間血中濃度を維持できました。
カルシウム濃度の上昇もなし。
腎機能にも異常なし。
サプリを毎日飲んで、血中濃度が全く上がらない人。
消化機能が低下していて、吸収できない人。
忙しくて、サプリを継続できない人。
こういう人は、注射一択です。
具体的な数値目標
血中濃度を測ったら、こう判断してください:
20 ng/mL未満(欠乏):
- 1日5000〜10000IU必要
- または半年に1回の注射
- 3ヶ月後に再測定
20〜30 ng/mL(不足):
- 1日2000〜4000IU
- 6ヶ月後に再測定
30〜40 ng/mL(骨は充足、免疫は不足):
- 1日2000〜3000IUで40〜60 ng/mLを目指す
- 6ヶ月後に再測定
40〜60 ng/mL(理想):
- 1日2000IUで維持
- 年1回の測定
60 ng/mL以上:
- 摂取量を減らす
- 3ヶ月後に再測定
これが答えです。
注射の禁忌と注意点
注射ができない人もいます:
禁忌:
- ビタミンD過剰症
- 高カルシウム血症
- 妊娠中
- 授乳中
注意を要する場合:
- 高リン血症
- 腎機能障害
- 原発性副甲状腺機能亢進症
治療効果をモニターするため、注射後は必ず血中濃度とカルシウム濃度、腎機能を測定します。
検査の結果がわかるまでの間は、食事やサプリメントによるビタミンDの摂取は控えてください。
最後に
ビタミンDは、もはや「骨のビタミン」じゃありません。
免疫を調整し、がんの進行を抑え、感染症から守る「全身ホルモン」です。
でも、血中濃度を測らずに飲んでいる人。
5年飲んでも上がらないのに、ずっと同じサプリを飲み続けている人。
はっきり言います。時間とお金の無駄です。
まず、血中濃度を測ってください。
京橋ウェルネスクリニックでは、25(OH)ビタミンD濃度の測定を行っています(検査料5,500円)。
測って、現状を知る。
飲んでも上がらないなら、吸収不良を疑う。
腸の治療に時間をかけられないなら、注射する。
血中濃度が全てを決めます。
【引用文献】
- Hahn J, et al. Vitamin D and marine omega 3 fatty acid supplementation and incident autoimmune disease. BMJ. 2022;376:e066452.
- LeBoff MS, et al. Supplemental Vitamin D and Incident Fractures in Midlife and Older Adults. NEJM. 2022;387(4):299-309.
- Manson JE, et al. Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease. NEJM. 2019;380(1):33-44.
- Pittas AG, et al. Vitamin D Supplementation and Prevention of Type 2 Diabetes. NEJM. 2019;381(6):520-530.
- Zhang Y, et al. Association between vitamin D supplementation and mortality. BMJ. 2019;366:l4673.
- Jolliffe DA, et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections. Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9(5):276-292.
- Appel LJ, et al. The Effects of Four Doses of Vitamin D Supplements on Falls in Older Adults. Annals of Internal Medicine. 2021;174(2):145-156.