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コラム

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自己判断でグルテンフリーを始める前に|必ず知っておきたい3つの疾患と検査の重要性

グルテンフリー食事法は「流行のダイエット」ではない

ここ数年、グルテンフリーを取り入れる人が急増しています。
「小麦を控えたら体調が良くなった」「ダイエット効果があると聞いた」など理由は様々です。

しかし、グルテンフリー食事法は本来ダイエット法ではなく、医学的根拠に基づいた治療法です。対象となるのは「グルテン依存性疾患」と呼ばれる3つの疾患。自己判断で安易に制限すると、かえって病気の進行を早めるリスクもあります。

当院ではこれまで数百人に栄養療法と併せて指導を行ってきましたが、自己流で実践して調子を崩す方も少なくありません。まずは、自分がどこに当てはまるのかを検査で確認することが何より重要です。

グルテン関連疾患は3種類

「グルテンを控えると体調が良くなり、再び摂ると症状が悪化する」──こうした特徴をもつ病気をグルテン依存性疾患と呼びます。

この疾患群には大きく3つのタイプがあり、

  • 原因となる仕組み
  • 出てくる症状
  • どの程度グルテンを制限する必要があるか

がそれぞれ異なります。
だからこそ、自分がどのタイプに当てはまるのかを正しく見極め、その人に合った方法でグルテンフリーを取り入れることが大切です。

セリアック病

グルテンに対する免疫反応が小腸の粘膜を傷つける自己免疫疾患です。欧米では150人に1人、日本でも0.7%ほどと決して珍しくありません。

主な症状

  • 慢性的な下痢や便秘、腹部膨満感
  • 栄養の吸収不良による 鉄欠乏性貧血・骨粗しょう症
  • 慢性的な疲労感、体重減少、口内炎など

検査でわかること

  • 血液検査:抗tTG抗体(抗トランスグルタミナーゼ抗体)、EMA抗体(抗内因膜抗体)などを測定
  • 小腸生検:内視鏡で小腸の粘膜を調べ、絨毛(じゅうもう)が萎縮していないか確認

自己判断でグルテンを抜いてしまうと、これらの抗体が陰性になって診断が難しくなることもあります。必ず検査を先に行うことが大切です。

合併しやすい疾患

セリアック病は自己免疫疾患の一つで、次のような病気と合併することがあります。

  • 1型糖尿病
  • リウマチ
  • 橋本病(甲状腺疾患)
  • 多発性硬化症

治療と生活

治療の基本は 「生涯にわたるグルテンフリー食」 です。
パンやパスタ、小麦由来の調味料などごく微量でも摂取すると腸の回復が妨げられます。正しく続ければ、症状の改善や合併症リスクの低下につながります。


小麦アレルギー

小麦アレルギー(IgE依存性アレルギー)

小麦に含まれるタンパク(グルテンやグリアジンなど)に対して免疫が過剰に反応し、アレルギー症状を引き起こす病気です。乳幼児に多くみられますが、大人になって発症する場合もあります。

主な症状

  • 蕁麻疹、かゆみ
  • 嘔吐や下痢、腹痛
  • 鼻水や頭痛
  • 重症例では アナフィラキシー(呼吸困難やショック) を起こすことも

検査でわかること

  • 血液検査:小麦に対するIgE抗体を測定
  • 皮膚プリックテスト:アレルギー反応の有無を確認

乳児期に発症しても、12歳までに約80%が自然に軽快します。

合併しやすい疾患

  • アトピー性皮膚炎
  • 喘息やアレルギー性鼻炎などのアトピー素因

治療と生活

  • 基本は 小麦製品を避ける食事管理
  • 成長とともに改善するケースも多いため、定期的な検査で経過を確認
  • 学校や外食先でも誤食が起きないように周囲への配慮が必要です

非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)

「セリアック病でも小麦アレルギーでもないのに、グルテンを食べると不調になる」という状態です。比較的多くの人にみられると考えられています。

主な症状

  • 腹痛、膨満感、下痢や便秘
  • 慢性的な疲労感、頭痛
  • 集中力の低下(いわゆる“ブレインフォグ”)

検査でわかること

NCGSに特異的な検査はありません。

  • まず セリアック病や小麦アレルギーを血液検査で除外
  • その後、グルテン除去食を数週間試し → 再摂取で症状が再現するかを確認する「食事負荷試験」で診断します

合併しやすい疾患

はっきりとした関連疾患は少ないですが、過敏性腸症候群(IBS)と症状が似ているため、IBSと誤診されているケースもあります。

治療と生活

自己判断ではなく、医師のサポートを受けながら「どの程度制限すべきか」を調整していくことが大切です

完全除去でなく、低グルテン食で改善する方も多い



疾患比較表(セリアック病・小麦アレルギー・NCGS)

病名セリアック病非セリアック・グルテン過敏症小麦アレルギー
発症率1%0.6-13%1%
遺伝要因HLA異常95%HLA異常50%アトピー素因
原因グルテンへの免疫の混乱不明IgE依存性反応
血中抗体tTG,EMA,など特異的なものなし小麦に対するIgE
腸の組織萎縮ありなしおそらくあり
症状腸および腸外症状腸および腸外症状腸および腸外症状
グルテンフリー期間一生不明平均6年

自己判断でのグルテンフリーが危険な理由

セリアック病は、小腸で栄養を吸収できなくなる「吸収不良症候群」という難病の一つに分類されます。
日本での発症率は約0.7%(140人に1人)と、決してまれではありません。

放置したり自己流で対処すると、腸管リンパ腫のほか、食道がん・小腸がんなど消化管のがんのリスクが高まります。
一方で、厳格なグルテン除去食を続ければ、これらのリスクを下げられることが分かっています。

注意すべきは、自己流の食事制限では「完全除去」になっていないことが多く、病気の進行を早める危険がある点です。さらに、診断に用いるtTG抗体は、グルテンを抜いた状態で検査すると陰性になり、正しい診断を妨げてしまうこともあります。

つまり、グルテンフリーは自己判断で始めるのではなく、まず検査で正しく診断し、医師の指導のもとで行うことが大切です。

過敏性腸症候群(IBS)の人は要注意

過敏性腸症候群(IBS)と診断されている人の中には、実際には小麦に反応して症状が出ているケースが少なくありません。報告によると、IBS患者さんの約30%が小麦の影響を受けているとされています。
そのため、グルテンフリー食事法で症状が改善する人も多いのです。

また、セリアック病とIBSは腸の症状が似ているため、IBSと誤診されていたセリアック病患者が相当数いることもわかっています。
この背景から、英国や米国の消化器学会は「特に下痢型や混合型のIBS患者は、全員セリアック病の検査を行うべき」と提言しています。


検査を受けるべき人

以下のような方は、ぜひ一度検査をおすすめします。

  • グルテンを控えると体調が良いと感じる
  • 半年以上にわたり腹痛や消化器症状が続いている
  • 自己免疫疾患(リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症など)を持っている

当院では、血液検査+グルテン負荷試験を組み合わせ、正確な診断を行っています。
特に「ドクターズ・データ社のセリアックパネル」では、1回の検査でセリアック病と小麦アレルギーの両方を確認可能です。

ドクターズ・データ社のセリアックパネルは、1回の検査でセリアック病と小麦アレルギーの両者を調べることができる優れものです。


まとめ|正しい診断が未来の健康を守る

  • グルテン関連疾患は「セリアック病」「小麦アレルギー」「NCGS」の3つ
  • 自己判断でのグルテン制限は危険
  • 必ず検査を行い、自分に合った食事療法を選ぶことが重要

「グルテンが合わないかも」と感じたら、早めに医療機関で検査を受けましょう。
正しい診断と治療計画に基づいたグルテンフリー食事法こそが、あなたの健康を守ります。


(参考文献)

・Non celiac gluten sensitivity – A new disease with gluten intolerance Clinical Nutrition Volume 34, Issue 2, April 2015, Pages 189-194

・What is the best histopathological classification for celiac disease? Does it matter?Gastroenterol Hepatol Bed Bench. 2015 Autumn; 8(4): 239–243.

・Diagnosis of Non-Celiac Gluten Sensitivity (NCGS): The Salerno Experts’ Criteria.Nutrients. 2015 Jun 18;7(6):4966-77

・MSDマニュアルプロフェッショナル版/セリアック病

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