認知症を防ぐ具体的な食事法|今日からできる予防習慣

これまでの医学では「認知症は治療法がなく、薬も効きにくい」とされてきました。
しかし最近の研究で、生活習慣の改善によってリスクを下げられることがわかってきています。なかでも 食事 は、予防の大きな柱です。
この記事では、最新の知見を踏まえた「認知症を防ぐための食事法」をわかりやすく解説します。
なぜ認知症になるのか
アルツハイマー型認知症の要因として注目されているのが アミロイドβの蓄積 です。
この老廃物が脳にたまると神経を攻撃し、記憶力や判断力が低下していきます。アミロイド蓄積には 炎症・栄養不足・毒素 が深く関わっており、日常の食事や生活習慣が大きく影響します。
第一の原因<身体の炎症>
「炎症」とは一言でいうと、体の中で起きている“見えない火事のようなものです。風邪で喉が赤く腫れるように、自覚できる炎症もありますが、実は気づかないうちにじわじわと進行する“隠れ炎症”が脳や血管にダメージを与えます。これが長期化すると、認知症の原因となるアミロイドの蓄積にもつながります。
隠れ炎症が起こりやすい部位には、歯周病による歯ぐき、慢性的な鼻炎で炎症が残る上咽頭、消化不良や便秘の影響を受けやすい腸、そして解毒を担う肝臓などがあります。実際、歯周病と認知症の関連は数多くの研究で報告されており、「口腔ケアが脳を守る」とまで言われています。さらに大きな要因となるのが腸内環境の悪化です。腸の粘膜が炎症で傷つくと「リーキーガット(腸漏れ症候群)」を起こし、未消化の食べ物や毒素が血液に漏れ出して全身の炎症を引き起こします。血液は脳にもつながっているため、この炎症が脳に波及し、神経細胞を傷つけてしまうのです。
他の記事でも多々述べていますが、腸漏れ症候群の原因となる食べ物を下記にまとめました。
炎症を悪化させる食べ物
- 加工食品:食品添加物や保存料は腸に負担をかけやすい
- トランス脂肪酸:揚げ物やスナック菓子に多く、細胞膜を傷つける
- グルテン・カゼイン:分解しにくく、腸に炎症を残しやすい
- 砂糖の過剰摂取:血糖値の乱高下→インスリン抵抗性→アミロイド分解力の低下
特に糖の摂りすぎは、アルツハイマー病が「脳の糖尿病」と呼ばれる理由のひとつです。血糖値が乱れるとインスリンが過剰に分泌され、アミロイドを分解する酵素まで使い果たしてしまうため、脳にゴミが溜まりやすくなるのです。
炎症を抑える「油の選び方」

油は単なるカロリー源ではなく、体の炎症バランスを左右する重要な栄養素です。
- オメガ3系(炎症を抑える):亜麻仁油・エゴマ油・しそ油
- オメガ6系(炎症を促す):コーン油・ひまわり油・サラダ油
- オメガ9系(バランス調整):オリーブオイル・アボカドオイル
青魚にもオメガ3は豊富ですが、水銀のリスクを避けるため植物性のオイルから摂るのがおすすめです。ただしオメガ3オイルは熱に弱いので、サラダにかけたり、スープに「最後に垂らす」など生で使うことが基本です。
また、炎症抑制に役立つ食品としてはココナッツオイルやターメリック・シナモン・ショウガなどのスパイス類も有名です。日常の調理に少し加えるだけでも効果的です。
油について詳しくはこちらもご覧ください。トランス脂肪酸の害と体にいい油の選び方5つのコツ
油を選ぶときのチェックポイント
- 遮光瓶に入っているか(酸化防止)
- 「一番搾り・コールドプレス製法」であるか
- 有機JASやUSDA認証など、農薬を避けた製法であるか
市販のドレッシングには、酸化油や砂糖・化学調味料が多く含まれています。例えば「食用植物油脂、ぶどう糖果糖液糖、調味料(アミノ酸等)」といった原材料が並ぶ商品は、炎症リスクを高める可能性が高いです。
そこでおすすめなのが手作りドレッシング。オメガ3オイルにレモン汁や岩塩を混ぜるだけで、数十秒で完成します。亜麻仁油にバルサミコ酢を合わせれば大人向け、しそ油に醤油とすりおろし生姜を混ぜれば和風ドレッシングに。素材本来の味を引き立てるので、毎日のサラダが脳を守る一皿に変わります。
油のベストな保存方法
良質な油を選んでも、保存方法を間違えるとすぐに酸化してしまい、かえって体に炎症を引き起こすリスクになります。油は光・熱・酸素に弱いため、「開封後はできるだけ早く使い切る」ことが鉄則です。
- 遮光瓶の油を選ぶ
透明な容器では光が入って酸化が進みやすくなります。購入時から「遮光瓶」に入った油を選びましょう。 - 冷暗所で保存
常温で長期間置くのはNG。冷蔵庫や日の当たらない場所で保存すると酸化スピードを抑えられます。 - 小容量を選ぶ
大きなボトルを買って長く使うより、少量をこまめに買い替えるほうが新鮮さを保てます。 - 加熱用と生食用を分ける
サラダやドレッシングに使う「えごま油・亜麻仁油」などは特に酸化しやすいため、必ず冷蔵庫で保存し、1~2か月以内に使い切るのがおすすめです。
例えば「オリーブオイルは常温で大丈夫」と思われがちですが、夏場の高温では酸化が急速に進みます。冷暗所に置く、あるいは冷蔵保存する方が安心です。
→せっかく体に良い油も、酸化した途端に“炎症を促す油”に変わってしまう。保存方法を工夫するだけで、脳を守る効果もぐっと高まります。
第二の原因<毒素>
私たちは日々の生活の中で、気づかないうちにさまざまな毒素にさらされています。呼吸する空気、飲む水、食べ物、住環境――完全に避けることはできません。だからこそ、いかに体に入れないか・入ってしまったものをどう排出するか が重要になります。
代表的なものが「カビ毒(マイコトキシン)」です。湿気の多い住居環境や保存状態の悪い穀物・ナッツ類などに存在し、知らず知らずのうちに体に入り込んでしまいます。カビ毒は肝臓や神経にダメージを与えるとされ、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドの蓄積をさらに後押しします。つまり、毒素の負担が強いほど、脳は「自分を守ろう」としてアミロイドを増やしてしまうのです。
デトックスに役立つ食材
体に入ってしまった毒素は、できるだけ早く排出(デトックス)することが大切です。日常の食事でできるサポートは以下の通りです。
- アブラナ科野菜(ブロッコリー、キャベツ、小松菜、ケールなど):肝臓の解毒酵素をサポート
- 硫黄化合物を含む香味野菜(にんにく、玉ねぎ、ネギ、生姜、パクチーなど):重金属を捕まえて排出する働き
特にパクチーやブロッコリーは、デトックス食材として世界的にも研究が進んでいます。毎日のサラダやスープに取り入れるだけでも、少しずつ体内の負担を減らすことができます。
水銀に注意
毒素の中でも特に注意すべきなのが水銀です。日本人は魚を多く食べる文化があるため、海外と比べて水銀の摂取量が多い傾向があります。
水銀は「生体濃縮」と呼ばれる現象で、小さな魚から大きな魚へと蓄積されていきます。そのため、マグロやカツオなどの大型魚ほど含有量が高くなります。妊娠中の女性や小さなお子さんは特に注意が必要です。魚を食べる場合は、いわし・さば・さんまなどの小型魚を中心に選ぶと安心です。
歯のアマルガム
もうひとつ見逃せないのが、歯の詰め物としてかつて使われていた「アマルガム」です。水銀を50%以上含み、噛む・熱い飲み物を飲むといった日常の刺激で水銀蒸気を放出します。これが長年かけて体に蓄積し、神経や免疫にダメージを与えてしまいます。
2016年以降は保険適応から外れましたが、それ以前に治療を受けた世代の方は今も口の中に残っている可能性があります。気になる方は、歯科でアマルガムの有無を確認してもらい、除去を検討するとよいでしょう。
第三の原因<栄養素の不足>
栄養不足も、認知症のリスクを高める大きな要因です。特に近年注目されているのが 「ホモシステイン」 というアミノ酸の一種です。血液中のホモシステイン濃度が高いと、血管の内側を傷つけて「サビつかせる」ようにダメージを与え、脳梗塞やアルツハイマー型認知症の危険性を高めることが知られています。
ホモシステインは、本来は体内で「メチオニン」という物質に再利用されます。この変換には ビタミンB6、B12、葉酸、そしてベタイン などが不可欠です。しかし、食事からの摂取が不足すると変換がうまくいかず、血中のホモシステイン値が高止まりしてしまいます。
遺伝的にホモシステインが高くなりやすい体質の人もいますが、加齢や偏った食生活でも同じようなリスクが生じます。したがって、日常的に B群ビタミンを豊富に含む食材を取り入れること が重要です。
B群ビタミンを多く含む食品
- 葉酸:枝豆、ブロッコリー、納豆、モロヘイヤ
- ビタミンB6:バナナ、にんにく、鶏むね肉、鮭
- ビタミンB12:レバー類(牛・豚)、しじみ、あさり、イワシ
例えば朝食に納豆ご飯、昼に焼き鮭、夜にブロッコリーや枝豆を副菜にするだけでも自然と補給できます。
毎日の実践ポイント
栄養不足を防ぐコツは「足りない栄養素を一点狙いで摂る」のではなく、普段の食事に小さな“足し算”をすることです。
- 丼物中心の人は、ブロッコリーや豆を副菜としてプラス
- サラダにはゆで卵や豆類をトッピングしてタンパク質を補強
- 間食にバナナやナッツを選ぶことで、B群を自然に摂取
こうした工夫が「ホモシステインの暴走」を防ぎ、脳を守ることにつながります。

簡単&栄養満点ドレッシング
さらにおすすめは、オメガ3系の油を使った手作りドレッシングです。油は脳の主要な材料でもあるため、良質な脂質をしっかり取り入れることが大切です。
- パクチードレッシング
亜麻仁油+酢+パクチーペースト+カルダモン - バルサミコドレッシング
えごま油+バルサミコ酢+岩塩 - マスタードドレッシング
インカインチオイル+粒マスタード+しょうゆ+酢
市販のドレッシングはトランス脂肪酸や添加物が多いですが、手作りなら安心。シンプルに「岩塩+オメガ3オイル」だけでも素材の味を引き立て、同時に脳に必要な栄養をチャージできます。
まとめ
認知症は遺伝的な要因も大きく関わりますが、それだけで決まるものではありません。日々の食事や生活習慣を整えることで、発症のリスクを下げ、脳を守る力を高めることができます。
大切なのは「完璧にやろう」と無理をするのではなく、できることから一つずつ取り入れることです。今日の食卓で油を変えてみる、野菜を一品足してみる――その小さな積み重ねが将来の脳を守ります。
京橋ウェルネスクリニックでは、最新の研究に基づいた食事指導や検査を通じて、一人ひとりに合った実践方法をご提案しています。ぜひ今回の記事をきっかけに、「認知症は防げる」という前向きな視点を持っていただければ幸いです。
<参考文献>
<参考書籍>
アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム
京橋ウェルネスクリニックでは、血液検査や腸内環境のチェックを通じて、個々に合わせた食事・栄養プランをご提案しています。
「将来の認知症を防ぎたい」「食事でできることを知りたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。