自己免疫疾患と栄養療法|腸と副腎を整えて炎症を抑える食事

自己免疫疾患とは?
私たちの体は「免疫」というシステムによって、ウイルスや細菌といった外敵から守られています。
ところが、この免疫の働きが誤作動を起こすと「自分自身の体」を敵とみなし、攻撃してしまうことがあります。
これが 自己免疫疾患 です。
攻撃する部位によって病気の名前が変わります。
- 関節 → 関節リウマチ(関節の痛み・腫れ・変形)
- 甲状腺 → 橋本病・バセドウ病(倦怠感や体重の変化)
- 膵臓 → 1型糖尿病(インスリンが作れず血糖値が上がる)
- 消化管 → クローン病(下痢や腹痛が長引く)
- 筋肉 → 重症筋無力症(力が入らない、まぶたが下がる)
- 全身 → SLE(全身性エリテマトーデス)(皮膚・腎臓・関節などに炎症)
自己免疫疾患は原因不明とされることが多いですが、近年の研究で「免疫系のコントロール異常」が深く関わっていることがわかっています。
その中でも特に重要とされるのが 腸 と 副腎 です。
腸は「免疫の司令室」と呼ばれるほど免疫細胞が集中し、食べ物や異物を選別するフィルターの役割を果たします。腸粘膜が弱ると異物が体内に侵入し、免疫が過剰に反応するきっかけになります。
一方、副腎は「炎症を鎮めるホルモン(コルチゾール)」を分泌する臓器です。アトピーやリウマチで使われるステロイド薬も、この副腎ホルモンをまねたもの。副腎が疲れて十分に働けなくなると、炎症が長引いたり、免疫の暴走を抑えられなくなってしまいます。
つまり、腸と副腎は 免疫のブレーキ役 として非常に大切な臓器です。
このため、自己免疫疾患に対しては「腸を整える食事」「副腎をサポートする食事」、さらに「炎症を抑える食事」を意識することが改善の大きなポイントとなります。
腸と免疫の深い関係
腸は「免疫の司令室」

腸には全身の免疫細胞の大部分(約70%)が集まっていると言われます。
食べ物を消化・吸収するだけでなく、「これは栄養か?異物か?」を見極める重要な役割を担っています。
腸粘膜は、体に必要な栄養素と、体にとって不要または有害なものを選別する“門番”のような存在です。
しかし、腸に刺激となる食べ物を頻繁に摂り続けると、腸に炎症が起こり、粘膜が弱くなってしまいます。
すると、本来は異物として排除されるはずのものが、体内に取り込まれてしまいます。
代表的なものは以下の通りです。
- 重金属(水銀や鉛など)
- 農薬や食品添加物
- 未消化のタンパク質(小麦のグルテン、乳製品のカゼインなど)
これらは免疫にとって異物と認識されるため、過剰な炎症反応を引き起こします。
実際、重金属の体内蓄積がリウマチなどの自己免疫疾患の発症に関与するという報告もあります。
未消化の食べ物の腸に対する影響
また、未消化の食べ物が腸にとって異物と判断されると、アレルギーの原因にもなります。
自己免疫疾患の患者さんにアレルギー症状が併発しやすい背景には、この腸粘膜の働きが関わっていると考えられます。

消化と免疫のつながり ― たんぱく質と糖質の違い
腸粘膜は、体に必要な栄養素と異物を見分けるフィルターのような存在です。
そのため、消化の過程で未分解のまま届いた栄養素は、腸に炎症を起こす原因になります。
たんぱく質の消化は「胃」からスタート
たんぱく質は分解に時間がかかる栄養素で、胃酸や分解酵素が不足していると、アミノ酸が数個つながった「ペプチド」のまま腸に届きます。
未消化のたんぱく質は腸粘膜に刺激を与え、炎症や免疫異常を引き起こす大きな要因になります。
糖質は「口」から分解が始まる
一方で糖質は、口に入れた瞬間から唾液中の酵素(アミラーゼ)によって分解が始まります。
単糖類や二糖類など分子構造がシンプルなため、消化は容易で、体への吸収もスピーディーです。
ただし、その分「血糖値の急上昇」を招きやすく、慢性炎症や代謝異常の原因となりやすいというデメリットもあります。
消化力の低下が腸に与える影響
- 未消化のたんぱく質 → 腸に炎症を起こし、自己免疫やアレルギーの引き金に
- 過剰な糖質 → 血糖値スパイクを起こし、炎症体質を悪化させやすい
つまり、「消化の段階から体に優しい食べ方を意識すること」が、腸を守り免疫を安定させる第一歩になります。
リーキーガット症候群とは?
腸粘膜に炎症が長く続くと、粘膜に小さな穴が開いたような状態になり、未消化の食べ物や添加物が血液に侵入してしまいます。
これを「リーキーガット症候群」と呼びます。
リーキーガットは免疫を刺激し続け、慢性的な炎症や自己免疫疾患の引き金になると考えられています。
さらに、腸内でカンジダ菌が増えることも、リーキーガットを悪化させる要因となります。
カンジタ菌の影響がある方は、カンジタ菌対策の食事も別途必要になっていきます。(こちら)
まずは、カンジタ菌が栄養源とする「砂糖」などの甘いものから控えていきましょう。
腸を守るために避けたい食品
- グルテン(パン・パスタなど小麦製品)
- カゼイン(牛乳・チーズなど乳製品)
- 精製された砂糖・人工甘味料
- 添加物や加工食品
- 消化に負担がかかる大豆タンパクの過剰摂取
腸にやさしい食材・工夫
- レモン水や梅干し → 胃酸の分泌を助けて消化をサポート
- 大根・山芋・パイナップル → 酵素を含み、消化を助ける
- かつお節・煮干し・骨付き肉 → 良質なアミノ酸を補給
- 野菜・海藻・きのこ類 → 食物繊維で腸内細菌を整える
- 味噌・漬物・麹 → 発酵食品で善玉菌をサポート
・おすすめ野菜:ごぼう、レンコン、フキノトウ、モロヘイヤ、おくら、切り干し大根
・おすすめ海藻:わかめ、あおさ、海苔、ひじき、もずく、とろろ昆布
(※甲状腺機能に問題のある人は海藻の過剰摂取はしないでください。また担当の医師に相談してください。)
・おすすめきのこ:きくらげ、干し椎茸
・おすすめ穀物(グルテンフリー):ヒエ、アワ、キヌア、アマランサス、発芽玄米
・おすすめ種実:ごま、アーモンド、栗
・果物をとるなら:干し柿、干しぶどう、プルーン(砂糖添加なしのもの)、アボカド

副腎と炎症の関係
副腎とは?
副腎は腎臓の上にちょこんと乗っている、小さな帽子のような臓器です。
体は小さくても働きはとても大きく、「ストレスに立ち向かう臓器」とも呼ばれます。
副腎が分泌するホルモンには次のような働きがあります。
- コルチゾール:炎症を抑える、血糖値を安定させる
- アドレナリン:ストレスに対抗する(心臓をドキドキさせて逃げる準備をする)
- DHEA:ホルモンの材料になり、体の回復力を助ける
アトピーやリウマチの治療で使われる「ステロイド薬」は、この副腎から出るコルチゾールを人工的に再現したものです。
つまり、副腎が弱ってコルチゾールが足りなくなると、炎症を自分で抑えられなくなってしまいます。
副腎を疲れさせる習慣

甘いもの(砂糖・お菓子・ジュース)のとりすぎ
食事を抜いた後のドカ食い
ファストフードやインスタント食品の常習
長時間のストレスや睡眠不足
こうした生活が続くと、副腎はフル稼働しすぎて疲れてしまい、いわゆる「副腎疲労」の状態になります。
副腎疲労に良い食事はこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。(副腎疲労の食事治療)
副腎によい食事

副腎を守る食事と生活の工夫
- 主食(ご飯やパン)は食事の最後にして、血糖値の急上昇を防ぐ
- 出汁スープや味噌汁で良質なアミノ酸を摂る
- ゆっくり噛んで食べることで消化を助ける
- ビタミンC(柑橘類・パプリカ)やビタミンB群(豚肉・玄米)、マグネシウム(海藻・ナッツ)をしっかり摂る
副腎は「体の防御本部」なので、日々のちょっとした食べ方や睡眠改善でも負担を減らすことができます。
炎症を抑える食事
炎症を和らげるためには、普段から「炎症を抑える食材」を選び、反対に「炎症を促進するもの」を控えることが大切です。ここでは、炎症に大きく関わる「油」と「水・塩」について整理します。
炎症を促進する油
油の中には炎症を強めてしまう種類があります。代表的なのは以下の通りです。
アラキドン酸(動物性の脂に多い)
特に豚肉に多く、鶏肉・牛肉・卵などにも含まれます。
「アラキドン酸」の多く含まれる肉
豚肉>鶏肉>牛肉>羊肉≧ヤギ肉>鹿肉>馬肉
参考:文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)脂肪酸成分表編https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365516.htm
リノール酸(植物油に多い)
サラダ油、大豆油、コーン油、紅花油、ごま油、米油などに多く含まれます。
これらは本来、体を守るために必要な成分ですが、現代の食生活では過剰になりやすく、慢性的な炎症を招く要因となります。
炎症を抑える油
一方で、炎症を落ち着かせる働きをもつ油もあります。
- γ(ガンマ)-リノレン酸
月見草油、麻の実油、母乳に含まれ、アトピー性皮膚炎の改善に効果があるとされています。 - オメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)
- α-リノレン酸:亜麻仁油、えごま油などに含まれる
- EPA・DHA:青魚(イワシ、サバ、サンマなど)に多く含まれる
- α-リノレン酸:亜麻仁油、えごま油などに含まれる

バランスよく油を摂るためには

✔加工食品やサラダ油に含まれる植物油・トランス脂肪酸はできるだけ控える
✔肉類は「適量」を意識して摂る
✔亜麻仁油・えごま油・青魚・月見草油など、炎症を抑える油を積極的に取り入れる
水分と天然塩の重要性

炎症を抑えるためには、油だけでなく「水分と塩分」のバランスも大切です。
塩というと「高血圧の原因」と思われがちですが、それは精製塩(塩化ナトリウム99%以上)の場合です。天然塩にはナトリウム以外に70種類以上のミネラルが含まれ、体を整える働きがあります。
- 副腎疲労の人は塩不足になりやすい
副腎から分泌されるホルモンは血圧の維持にも関わります。そのため、副腎が疲れている人は低血圧になりやすく、天然塩の適度な摂取が有効です。 - 塩と関節の関係
塩は関節の軟骨に水を引き込み、動きを滑らかにする働きがあります。水分と一緒に摂ることで、関節炎の改善にも役立ちます。 - 良い塩の選び方
「岩塩」や「海水塩」で、製法が「天日乾燥」や「平釜法」のものを選びましょう。
パッケージに「塩化ナトリウム99%以上」「イオン膜立釜法」と書かれているものは精製塩ですので注意してください。 - 水分補給のポイント
カフェイン飲料やアルコールではなく、水やノンカフェインのハーブティーを中心に。十分な水分摂取は、アレルギーや炎症を抑える自然の力を高めます。
まとめ:今日からできる行動ヒント
- 揚げ物や加工食品に多い「サラダ油」「精製油」は控える
- 豚肉・卵を食べすぎず、青魚やえごま油をプラスする
- 天然塩を使い、精製塩は避ける
- 水をこまめに飲み、カフェインやアルコールは控える
💡 日常のちょっとした食の選び方で、慢性的な炎症を抑え、リウマチなどの自己免疫疾患の治療効果を高めるサポートにつながります。
※本記事は一般的な情報であり、医学的治療の代替ではありません。必ず医師にご相談ください。
京橋ウェルネスクリニックのアプローチ
当院では、症状を一時的に抑えるだけでなく、根本的に免疫バランスを整えること を大切にしています。
- 血液栄養解析 による不足栄養素の特定
- 腸内環境やホルモンバランス の評価
- 内側(食事・サプリ・生活習慣)と外側(点滴・施術)の Wアプローチ
「自己流で試したけれど改善しなかった」
「何から始めればいいかわからない」
そんな方にこそ、検査に基づいたオーダーメイド治療をご提案しています。
生活習慣と栄養を見直すことは、自分の体を守る大切な一歩です。
当院では検査に基づいたオーダーメイドの栄養療法をご提案し、根本改善をサポートしています。
自己免疫疾患にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください