副腎疲労を改善するサプリメント治療

副腎疲労とサプリメントの関係
慢性的な疲労感、朝起きられない、ストレスに弱くなった…これらは「副腎疲労症候群」の典型的なサインです。
副腎はストレスホルモン(コルチゾール)を分泌し、心身のバランスを保つ大切な臓器ですが、過度なストレスが続くと機能が低下し、全身に影響が出てしまいます。
治療の基本は生活習慣の改善と食事療法ですが、適切なサプリメントを取り入れることで回復が大きく前進します。ここでは、科学的根拠のある主要なサプリメントの役割を4つの視点からご紹介します。
① 脳と副腎の連携を整える

副腎疲労の中等症では、副腎ホルモン「コルチゾール」が過剰分泌されるのが典型的です。
これはストレスが続く中で、脳(視床下部や下垂体)の調整力が弱まり、「副腎を休ませるブレーキ」が効かなくなるためです。結果として副腎はフル稼働し、さらに疲弊していきます。
この悪循環を断ち切るには、脳と副腎の連携をリセットする栄養素を補うことが有効です。
ホスファチジルセリン
細胞膜のリン脂質として知られていますが、ストレス下での過剰な脳―副腎反応を抑える作用があります。
実験では、激しいトレーニングを行った男性に1日800mg投与したところ、トレーニング後のコルチゾール濃度が有意に低下し、筋肉痛や気分の落ち込みも軽減しました。
400mg以下では効果が弱く、用量依存的な効果が確認されています。日常的に強いストレスを感じる方にも応用が期待できます。
フィッシュオイル(EPA・DHA)
青魚に豊富に含まれる必須脂肪酸です。1日7.2gを3週間摂取した研究では、ストレス負荷を与えても急激なコルチゾールやアドレナリンの上昇が抑制されました。
さらに不安感や抑うつの軽減効果も報告されており、副腎疲労に伴う精神的な不調にも役立ちます。
αリポ酸
「万能抗酸化物質」と呼ばれ、細胞内外で活性酸素を除去します。ストレスによって心臓に蓄積するカテコールアミン(ストレスホルモン)の害を和らげ、代謝と排泄を促進します。副腎だけでなく、心血管系の保護にも重要です。
→ これらのサプリメントは「副腎を直接回復させる」のではなく、脳から副腎への過剰なストレス命令を和らげ、副腎を休ませる環境をつくることが狙いです。
②アダプトゲンで副腎を強化する

副腎疲労が進んだ「疲弊期」では、コルチゾールが枯渇し、慢性的な疲労感や気力の低下が目立つようになります。
そこで役立つのが、アダプトゲン(Adaptogen)と呼ばれる植物成分です。ストレスへの抵抗力を高め、副腎や神経系のバランスを整えてくれる働きがあります。
代表的なものをご紹介します。
- オタネニンジン(高麗人参)
副腎―脳の軸全体に作用し、エネルギーや集中力をサポート。 - エゾウコギ(シベリア人参)
ストレスで乱れた自律神経を落ち着け、心拍数や血圧を安定させます。 - 甘草(リコリス)
漢方でも使われる成分で、副腎を弱いながら下支えする効果。 - アシュワガンダ
気分の安定・睡眠改善に有効。疲労感を和らげる作用が知られています。 - ロディオラ(イワベンケイ)
集中力や記憶力を高め、ストレス耐性を強化する効果があります。
→ ポイントは、アダプトゲンが「副腎を直接回復させる」のではなく、体全体のストレス反応を調整し、副腎が休める環境を整えること。サプリやハーブティーとして日常に取り入れるのもおすすめです。
③ うつ・不安・睡眠障害への対策

3. うつ・不安・睡眠障害に対処する
副腎疲労では、うつや不安、睡眠障害といった精神的な不調が強く現れることがあります。これは、ストレスで消耗した副腎がホルモンのバランスを崩し、脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・GABAなど)の働きにも影響するからです。
一般的には抗うつ薬や抗不安薬が処方されるケースもありますが、天然の栄養素やハーブをうまく使うことで、副作用を抑えながら脳と副腎を同時にケアすることが可能です。
主なサポート成分とその働き
- L-テアニン(お茶のアミノ酸)
緑茶や紅茶に含まれるアミノ酸。脳内でセロトニンやドーパミンを増やし、リラックスや集中力の維持を助けます。寝つきが悪い人にも有効。 - バコパモニエラ
古くからアーユルヴェーダで使われるハーブ。不安を軽減し、しかも記憶力や学習能力を高める効果が示されています。処方薬と比べても副作用が少なく安心。 - バレリアン(セイヨウカノコソウ)
GABAの合成を促し、不安や不眠に効果的。自然な眠りをサポートする「植物性の睡眠導入サプリ」として知られています。 - カモミール
成分の一部がベンゾジアゼピン受容体に働きかけ、鎮静効果を発揮。安心感を与え、記憶障害などの副作用も少ないのが特徴です。 - GABA(γアミノ酪酸)
脳内の抑制性神経伝達物質。リラクゼーションや睡眠に直結する成分で、濃度が低下すると不安・うつ・不眠のリスクが高まります。 - トリプトファン
セロトニンやメラトニンの原料になる必須アミノ酸。少量で寝つきを改善し、十分な量を摂ることで睡眠の質を高める効果があります。ただしB6不足や炎症があると代謝がうまく進まないことがあるため注意が必要。 - 5-HTP
トリプトファンの代謝中間体で、直接セロトニンやメラトニンに変換されやすい成分。パニック障害や睡眠障害の改善に役立ちます。
④ ミトコンドリアを元気にする

4. ミトコンドリア機能を修復する
副腎疲労の回復に欠かせないのが「細胞のエネルギー工場」である ミトコンドリア の働きを取り戻すことです。慢性的なストレスや栄養不足が続くと、エネルギー産生に必要な栄養素が大量に消耗され、疲労感や集中力の低下につながります。
特に重要なのは、以下の栄養素です。
■ ビタミンB群
「エネルギーの点火プラグ」とも呼ばれる重要な栄養素。糖質を摂りすぎがちな副腎疲労の方は特に消耗しやすく、B1・B2・B3・B5・B6・B12・葉酸などをバランスよく摂る必要があります。中でも ビタミンB5 は三大栄養素をエネルギーに変える要となります。
■ 亜鉛
250以上の酵素反応に関わる必須ミネラル。不足すると不安や気分の落ち込みが強まり、副腎疲労を悪化させます。特に「ピロール障害」を持つ方は亜鉛不足が顕著で、追加補給が必要です。
■ マグネシウム
「エネルギーミネラル」と呼ばれ、ATPからのエネルギー産生やホルモン分泌のサポートに必須。ストレスが長期化すると枯渇しやすく、副腎疲労の多くの方で不足がみられます。
■ サプリメントの選び方と吸収の工夫
日本人は腸内環境の悪化によってミネラル吸収が不十分になっているケースが少なくありません。そのため、ミネラルを補う際には 吸収率の高い形態 を選ぶことが大切です。
- 吸収されやすい液体タイプ
- アミノ酸と結合させた「キレートタイプ」
これらは利用効率が高くおすすめです。
⚠️ 一方で、市販の便秘薬によく使われる「酸化マグネシウム」は吸収率が3%程度と非常に低いため、マグネシウム補給には不向きです。
また、副腎疲労の方はストレスによる腸内環境の乱れを抱えていることが多いため、まずは腸のケアを優先することも重要です。腸内環境が整うことで、これらのミネラルの吸収もスムーズになり、回復スピードがぐっと上がります。
まとめ
副腎疲労のサプリメント治療は、「脳-副腎の連携調整」「アダプトゲンでの回復」「気分・睡眠の安定」「ミトコンドリア強化」の4つのアプローチが基本です。
ただし、サプリメントはあくまで回復を助けるサポート役。根本的には食事・生活習慣の改善が欠かせません。
ご相談ください
「自分にはどのサプリが合うのか分からない」という方も多いと思います。副腎疲労の原因や回復段階によって必要な栄養は異なります。
当院では血液検査やホルモン検査を行い、一人ひとりに合った食事・サプリメントプランをご提案しています。
副腎疲労の症状でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。