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コラム

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繰り返すニキビは内側の問題?──本当の原因と根本治療

はじめに

「薬を塗ってもまた出てくる」「思春期だから仕方ない」「大人になっても消えない」──ニキビは10代の約9割、20代以降でも多くの人が悩む身近な疾患です。

実は清潔・皮脂オフだけでは解決しないことが多く、食事・ホルモン・ストレス・腸内環境など体の内側が複雑に関わっています。つまり、ニキビは全身のサイン。本記事ではニキビの正体と根本治療の考え方、当院のアプローチをわかりやすく解説します。


ニキビとは?

医学的名称は尋常性ざ瘡。一過性のトラブルではなく慢性炎症性皮膚疾患です。放置すると赤み・色素沈着・瘢痕(クレーター)が残ることも。早期の根本対策が重要です。

思春期ニキビと大人ニキビ

  • 思春期:ホルモン変化で皮脂が急増。額・鼻などTゾーンに多い。
  • 大人:ストレス・睡眠不足・食事・ホルモンの乱れなど多因子。フェイスラインやあごに出やすい。
    共通機序は毛穴の炎症ですが背景が違うため、同じ治療でも効き方に差が出ます。

ニキビはなぜできる?

ニキビは、毛穴の出口がふさがり、皮脂が中にたまることから始まります。
そこにアクネ菌が増殖すると炎症が起こり、白ニキビ → 赤ニキビ → 膿ニキビへと悪化していきます。炎症が長引くと、赤みや色素沈着、クレーター状の跡として残ることも。
だからこそ、早い段階で原因に合わせたケアを行うことが大切なのです。


アクネ菌と炎症の連鎖

アクネ菌は誰の肌にも存在する常在菌で、決して「悪者」ではありません。
皮脂を分解して保湿に役立つグリセリンや、皮膚を弱酸性に保ち外敵菌の繁殖を防ぐ脂肪酸を作り出すなど、普段は肌を守る役割を担っています。

アクネ菌は酸素が苦手な菌

アクネ菌は、空気のある場所でも生息できますが、本来は酸素の少ない環境を好む「通性嫌気性菌」です。
そのため、毛穴の奥(酸素が少なく皮脂が豊富な環境)はアクネ菌にとって理想的な住処。
毛穴が詰まって酸素が減り、皮脂が溜まると、一気に増殖してしまいます。

敵に変わる瞬間

増殖したアクネ菌は「キャンプファクター」という毒素を放出し、細胞膜を傷つけて免疫を刺激。
結果として――

  • 炎症性サイトカインの放出
  • 白血球の活性化
  • 炎症の連鎖反応

が次々と起こり、赤ニキビや膿ニキビへ悪化していきます。

炎症の悪循環

炎症で生じた物質は皮脂分泌をさらに促し、皮脂の分解産物(オレイン酸など)は角化異常を進め、毛穴はますます詰まりやすくなります。
毛穴詰まり → アクネ菌増殖 → 毒素 → 炎症 → 皮脂増加 → さらに詰まり
という負のスパイラルがニキビを慢性化させるのです。


毛穴が詰まる原因は?

「皮脂を取れば解決」ではありません。複数の要因が重なって起こります。

① 皮脂分泌の過多

思春期ホルモン、ストレスや睡眠不足(コルチゾール上昇)で皮脂腺が過活動に。毛穴が皮脂で満杯→詰まりやすい

② 角化異常(表皮の過剰増殖)

毛穴出口(毛包漏斗部)は微細。睡眠不足、ビタミンA・亜鉛不足、慢性炎症・酸化ストレスでターンオーバーが乱れると、わずかでもすぐ詰まる

③ スキンケア/化粧習慣の誤り

  • 厚塗り・オイルリッチ下地で物理的にフタ
  • 強い洗顔やスクラブで角質を削りすぎ→反動で皮脂増
  • クレンジング不足でメイク・日焼け止め残存
    「清潔に」のつもりが逆効果になることも。

④ 食生活・ライフスタイル

糖質・乳製品・小麦中心/高GI飲料の常用/食物繊維不足は、皮脂増加・角化異常・慢性炎症を同時に引き起こし悪化要因に。


保険診療の課題:なぜ再発をくり返すのか?

多くの人が最初に受診するのは一般皮膚科。
そこで行われるのは、主に毛穴の詰まりを改善する外用薬アクネ菌を抑える抗菌薬です。

よく使われる外用薬

  • アダパレン(ディフェリンゲル):角質を薄くし、毛穴の詰まりを防ぐ
  • 過酸化ベンゾイル(ベピオゲルなど):アクネ菌を殺菌し、炎症を抑える

これらはコメド(白ニキビ)や赤ニキビの改善には有効ですが、
副作用として乾燥・赤み・かゆみ・かぶれが起こりやすく、途中で使うのをやめてしまう人も少なくありません。

抗菌薬の問題

抗菌薬の内服や外用は、炎症を素早く抑えるのに効果的です。
しかし、長期に使い続けると耐性菌のリスクがあり、世界的にも「漫然とした抗菌薬投与は避けるべき」とされています。
さらに、腸内細菌まで乱してしまう可能性があり、長引くニキビの背景にある腸内環境の悪化を助長してしまうケースもあります。

対症療法の限界

これらの治療は「目の前のニキビを減らす」には役立ちますが、

  • なぜ皮脂が増えているのか
  • なぜ毛穴が詰まってしまうのか
  • なぜ炎症がくり返されるのか

といった根本原因にはアプローチしていません
そのため「皮膚科に通っても良くならない」「薬をやめたらすぐに再発する」といった悩みが後を絶たないのです。

→保険診療は決して意味がないわけではありません。
ただしそれだけでは再発を防げないのが現実。
本当にニキビを治したいなら、体の内側から原因に迫る治療が欠かせません。


ニキビの治療の真のターゲットはmTOR経路

皮脂分泌の亢進や、表皮細胞の過剰増殖の原因には、大きく分けて3つの要因があります。

  • ストレス:ホルモン変動を通じて皮脂分泌を促進し、ニキビを悪化させます。
  • 食事(西洋食):肉類・小麦・乳製品・砂糖を多く含む食事は皮脂分泌を増やし、炎症を助長します。
  • 内分泌因子(ホルモン):男性ホルモンや成長ホルモンは皮脂腺を活性化し、表皮細胞の増殖を促進します。

これらがすべてmTOR経路を刺激し、
皮脂分泌の亢進
毛包漏斗部の表皮細胞の過剰増殖

 につながっていきます。

一見バラバラに見えるこれらの要因ですが、細胞レベルで共通して関与しているのが「mTOR(エムトア)経路」です。

mTOR経路とは?

mTOR経路は、細胞の成長や代謝をコントロールする「司令塔」のような仕組みで、栄養や外部刺激に応じて

  • タンパク質合成
  • 脂質合成
  • 細胞成長・増殖

を調整しています。
皮膚はタンパク質で構成され、皮脂は脂質で作られているため、mTOR経路が過剰に活性化すると、結果として皮脂分泌の亢進や角化異常が進み、ニキビの温床となります。

→このように、ニキビ治療の根本ターゲットは「皮脂」や「菌」だけではなく、細胞のスイッチ(mTOR)をどうコントロールするかという視点が重要です。


mTOR経路を活性化させるもの

では、この「mTORスイッチ」を過剰にONにしてしまう要因にはどんなものがあるのでしょうか?

研究では、以下のような因子がmTOR経路を刺激することがわかっています

  • グルコース(糖質)
  • インスリン
  • IGF-1(インスリン様成長因子)
  • アミノ酸(特にロイシン)
  • 成長因子
  • 炎症

これらはまさに西洋型食生活(小麦・乳製品・肉類・砂糖など)に豊富に含まれており、頻繁に摂取することでmTOR経路が過剰に活性化され、結果としてニキビができやすくなります[1]。

疫学調査の裏づけ

実際、日本のように西洋型食生活が一般的な国では、

  • 思春期ニキビの罹患率:79~95%
  • 25歳以上の成人ニキビ:40~54%

と非常に高い一方で、パプアニューギニアのキタバン諸島民族1200人やパラグアイのアチェ狩猟採集民族115人を調査したところ、
驚くべきことにニキビ患者は一人も存在しなかったという報告があります[2]。

→ この結果は、ニキビの発症に「遺伝」よりも「食事や生活習慣」が強く関与していることを示しています。


mTOR経路を抑えるもの

一方で、mTOR経路の過剰な活性化を抑える「ブレーキ栄養素」も存在します。

代表的なものは以下です:

  • ビタミンA
  • ビタミンB5(パントテン酸)
  • ケルセチン、クルクミン、ザクロエキス
  • 緑茶に含まれるEGCG
  • レスベラトロール
  • カフェイン

これらは抗酸化や抗炎症作用を通じてmTOR経路の制御に関与し、ニキビ治療に有効性が報告されている栄養素です。


栄養素とニキビ治療

薬や外用剤だけでなく、栄養素の補充によってニキビを改善するアプローチも近年注目されています。
特に、皮脂分泌や角化異常に関わる栄養素はエビデンスが積み重なっており、食事やサプリメントで補うことで再発を減らせる可能性があります。

ビタミンA(レチノール・レチノイン酸)

ビタミンAは「皮膚と粘膜のビタミン」と呼ばれるほど、皮膚の代謝に深く関与します。

  • 角質の正常なターンオーバーを促進
  • 皮脂腺の働きを落ち着かせ、皮脂分泌を減少
  • 炎症を抑える作用

重症ニキビの治療薬として使われるイソトレチノインはビタミンA誘導体です。
欧米では長年使用され効果が確立していますが、妊娠への影響など安全性の観点から日本では保険適用外。使用には厳密な管理が必要です。

一方で、天然型のビタミンA(レチノール)を食事やサプリで摂る方法は比較的安全性が高く、過剰症に注意しながら取り入れると有効です。
不足すると角化異常が起きやすくなり、毛穴詰まりが悪化するため、バランスの取れた補給が重要です。

パントテン酸(ビタミンB5)の可能性

パントテン酸(ビタミンB5)は脂肪代謝に深く関与し、皮脂分泌を抑制する働きがあると報告されています。

臨床研究からのエビデンス

  • 100人のニキビ患者を対象にした研究
     1日10gを4回に分けて内服し、さらにパントテン酸入りクリームを1日4〜6回塗布したところ、治療開始後1〜2日で皮脂分泌が顕著に減少
     その後12週間以内にニキビの数も大幅に減少しました。
     さらに毛穴の縮小や肌の滑らかさの改善といった美容的効果も報告されています[3]。
  • 軽度〜中等度の患者48人を対象とした研究
     パントテン酸サプリメントを摂取したグループでは、12週間後にニキビの数が有意に減少
     摂取しなかったグループとの差が明確に出ています[4]。

これらの結果から、食事改善+栄養素によるアプローチが、ニキビの根本的な改善に有効であることが示されています。
特にパントテン酸は「皮脂分泌の抑制」と「肌質改善」の両面で効果が期待でき、薬だけに頼らない治療の柱になり得る栄養素です。

→ただし、用量設定や継続期間には個人差があるため、医師の管理下で安全に取り入れることが望まれます。


ニキビと腸内環境

ニキビが悪化する背景には、食事やホルモンだけでなく、「炎症」も深く関わっています。
特に多くの人に見られるのが、腸管の慢性炎症です。

腸と肌をつなぐ「腸皮膚相関」

腸内細菌は gut–skin axis(腸皮膚相関) と呼ばれる経路を通じて、肌の健康に影響します。
腸から皮膚へシグナルを送り、炎症や皮脂分泌をコントロールしているため、腸内環境の乱れはそのまま肌トラブルに直結します[5]。

ニキビ患者の腸内細菌の特徴

研究では、ニキビ患者は健常者と比べて

  • 腸内細菌の多様性が減少
  • Firmicutes(F)が多く、Bacteroidetes(B)が少ない
    ➡ つまり F/B比が高いパターン を示す傾向があることが報告されています[6]。

この特徴は、西洋型食生活をしている人によく見られる腸内バランスであり、食事と腸内環境の乱れがニキビ発生に関与している可能性を裏づけています。

消化器症状と皮膚疾患の関係

さらに大規模アンケート調査では、便秘や腹部膨満感など消化器の不調を持つ人は、ニキビ・脂漏性皮膚炎・男性型脱毛症など皮膚疾患を有する割合が高いことが分かっています[7]。

→ 「肌荒れと便秘が同時に起きる」のは偶然ではなく、共通の原因が腸内環境にあるのです。


ピロリ菌、カンジダ感染とニキビ

腸内環境の乱れに加え、特定の病原菌感染がニキビに関与することも明らかになっています。

ピロリ菌とニキビ

研究では、重症ニキビ患者ではピロリ菌抗原や抗体のレベルが高いことが報告されています。
さらにピロリ菌感染は、

  • ニキビの重症化
  • 罹患期間の長期化
    にもつながる可能性があるとされています[8]。

カンジダ・寄生虫の関与

有機酸検査やGI-MAPを用いた36人のニキビ患者の腸内検査では、ピロリ菌・カンジダ・寄生虫の感染率が一般集団よりはるかに高いことが判明しました[9]。

  • カンジダ菌:一般では約25% → ニキビ患者では94%
  • ピロリ菌:一般では約65% → ニキビ患者では92%

このデータは、腸内感染がニキビの発症や悪化に密接に関わっていることを強く示しています。

除菌治療の重要性

そのため、検査でこれらの病原菌が陽性となった場合には、適切な除菌治療を行うことが推奨されます
腸内環境を整えることで、炎症やホルモンバランスの乱れが改善し、結果的に肌トラブルの根本改善につながるのです。


当院のアプローチ

当院では「薬を塗って様子を見る」だけの治療ではなく、
身体の内外から同時にアプローチする根本治療を行っています。

  • 詳細な検査(血液検査・腸内環境検査)で原因を特定
  • 栄養指導・サプリメント処方による内側からの改善
  • 光治療やピーリングなどの美容施術による外側からのケア
  • 継続的なフォローアップで再発を防止

これらを組み合わせることで、より早く理想の肌状態へ近づき、長期的な安定を目指します。


あなたの肌は変わります

「もう治らない」と諦めていたニキビや肌荒れも、正しく原因にアプローチすれば改善の可能性は十分あります。
栄養療法に精通した医師・スタッフが、あなたを全力でサポートいたします。

現在、ニキビ治療モニターも募集中です。
少しでも関心を持たれた方は、ぜひお気軽にご相談ください。


参考文献


  1. Melnik BC. Western diet-induced imbalances of FoxO1 and mTORC1 signalling promote the sebofollicular inflammasomopathy acne vulgaris. Exp Dermatol. 2016 Feb;25(2):103-4. doi: 10.1111/exd.12898. Epub 2016 Jan 12. PMID: 26567085.

  2. Cordain L, Lindeberg S, Hurtado M, Hill K, Eaton SB, Brand-Miller J. Acne vulgaris: a disease of Western civilization. Arch Dermatol. 2002 Dec;138(12):1584-90. doi: 10.1001/archderm.138.12.1584. PMID: 12472346.

  3. Leung LH. Pantothenic acid deficiency as the pathogenesis of acne vulgaris. Med Hypotheses. 1995 Jun;44(6):490-2. doi: 10.1016/0306-9877(95)90512-x. PMID: 7476595.


  4. Yang M, Moclair B, Hatcher V, Kaminetsky J, Mekas M, Chapas A, Capodice J. A randomized, double-blind, placebo-controlled study of a novel pantothenic Acid-based dietary supplement in subjects with mild to moderate facial acne. Dermatol Ther (Heidelb). 2014 Jun;4(1):93-101. doi: 10.1007/s13555-014-0052-3. Epub 2014 May 16. PMID: 24831048; PMCID: PMC4065280.

  5. Mahmud MR, Akter S, Tamanna SK, Mazumder L, Esti IZ, Banerjee S, Akter S, Hasan MR, Acharjee M, Hossain MS, Pirttilä AM. Impact of gut microbiome on skin health: gut-skin axis observed through the lenses of therapeutics and skin diseases. Gut Microbes. 2022 Jan-Dec;14(1):2096995. doi: 10.1080/19490976.2022.2096995. PMID: 35866234; PMCID: PMC9311318.

  6. Deng Y, Wang H, Zhou J, Mou Y, Wang G, Xiong X. Patients with Acne Vulgaris Have a Distinct Gut Microbiota in Comparison with Healthy Controls. Acta Derm Venereol. 2018 Aug 29;98(8):783-790. doi: 10.2340/00015555-2968. PMID: 29756631.

  7. Zhang H, Liao W, Chao W, Chen Q, Zeng H, Wu C, Wu S, Ho HI. Risk factors for sebaceous gland diseases and their relationship to gastrointestinal dysfunction in Han adolescents. J Dermatol. 2008 Sep;35(9):555-61. doi: 10.1111/j.1346-8138.2008.00523.x. PMID: 18837699.

  8. Saleh R, Sedky Mahmoud A, Moustafa DA, Abu El-Hamd M. High levels of Helicobacter pylori antigens and antibodies in patients with severe acne vulgaris. J Cosmet Dermatol. 2020 Dec;19(12):3291-3295. doi: 10.1111/jocd.13409. Epub 2020 Apr 25. PMID: 32333495.

  9. https://www.skinterrupt.com/wp-content/uploads/2021/10/Dr-Greenberg-Gut-Tests-to-Treat-Acne.pdf

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