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コラム

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48歳女性 右副腎摘出後の難治性副腎疲労

アルドステロン症により右副腎摘出術を施行。術後より重篤な倦怠感が出現し、日常生活に著しい支障をきたしている。

患者さんからのメッセージ

今年アルドステロン症により内視鏡手術で右副腎を摘出しましたが、術後から強い倦怠感に悩まされ、現在は最低限の家事を休み休みこなすのが精一杯で、外出することもできません。

退院1か月後には全身恐ろしいほどの倦怠感で動けなくなり病院を受診しましたが、血液検査では全て正常とのことでした。1か月間は恐ろしい倦怠感が続き、その間ほとんど寝たきりで過ごしました。

アルドステロン症とわかったときは病気について調べましたが、副腎摘出後については先生からも「疲れやすくなるかも」程度しか聞いていなかったので、倦怠感は体力によるものでゆっくり改善していくものと思っていました。

整骨院で副腎疲労の可能性を聞き、初めて副腎のことを自分なりに調べてみて、そこでようやくどうしてこんなに異常にダルいのかがわかった次第です。

このまま家の中で寝たり起きたり、まるで100歳の老人のような生活では生きている意味もないとさえ思ってしまいます。できれば薬に頼らず自分の身体とうまく付き合っていきたいと思っていますが、副腎がひとつで限界もあるのかなという気がします。

副腎摘出と副腎疲労について

副腎は左右の腎臓上部に位置する内分泌腺で、コルチゾールやアルドステロンなどの重要なホルモンを分泌しています。

アルドステロン症では、腫瘍のある副腎がホルモンを過剰分泌するため、対側副腎は萎縮することがあります。手術後は通常、ホルモン補充療法が行われますが、補充療法を行っても倦怠感が続く症例が少なからず存在します。

検査結果と病態解析

血液検査所見:

  • 各種酵素活性の低下(AST、ALT、ALP等)
  • タンパク質代謝の停滞を示唆
  • ビタミンB群の相対的不足
  • フェリチン値低下による潜在性鉄欠乏

唾液コルチゾール検査:

血中コルチゾールは正常範囲内であったが、唾液中コルチゾールは朝のピーク時を中心に著明な低下を認めました。これはHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)機能障害の典型的なパターンです。

腸内環境検査:

クロストリジウム菌群の著明な減少、悪性細菌の過剰増殖、術後抗生剤使用による腸内細菌叢の破綻が示唆されました。

クロストリジウムは短鎖脂肪酸(酪酸)の主要産生菌であり、その不足は腸管エネルギー代謝の低下と消化吸収能力の悪化を招きます。

毛髪ミネラル検査:

ヒ素、水銀レベルの上昇、歯科アマルガムの存在にも関わらず水銀排泄能力の低下、ミネラルバランスの著しい異常が見られ、潜在的重金属蓄積の可能性が疑われました。

当院の治療アプローチと治療経過

  • 副腎機能サポート(ビタミンC、B群、アダプトゲン)
  • 腸内環境の改善(プロバイオティクス、消化酵素)
  • 鉄欠乏の是正
  • 基本的な栄養状態の改善
  • カンジダ除菌プログラムの実施
  • 水銀デトックスの開始
  • ミトコンドリア機能サポート

治療経過:

  • 6ヶ月後:睡眠の質が改善
  • カンジダ除菌後:フェリチン値の上昇開始
  • 8ヶ月後:水銀デトックス開始後、日常的な活動が可能に
  • 10ヶ月後:単独来院可能、入浴・買い物などのADLが改善
症状項目 0日目 35日目 65日目 150日目 204日目 264日目 305日目
とにかく疲れている 10 10 8 6 6 5 5
気分の落ち込みがある 8 7 7 3 2 2 2
眠れない 10 9 9 6 4 2 2
朝、起きられない 2 3 3 1 0 0 0
関節痛、筋肉痛、肩こりがある 10 10 8 6 7 4 3
性欲が低下に落ちた 8 8 9 3 3 0 0
食事を抜くと気分が悪くなる 8 8 8 3 2 0 0
あけでも手足が冷たい 7 7 6 5 2 2 2
お腹がなく体調に変える 5 7 8 2 2 1 1
耳鳴りがする 2 4 7 2 2 1 1
集中力がない 8 7 7 3 2 0 0
動悸がする 2 2 3 0 0 0 0
神経過敏、神経質である 6 8 9 4 2 1 0
甘いものを食べずにはいられない 5 3 3 3 1 1 1
目眩不安定、目眩障害 2 3 2 2 1 1 0
胸焼け、胃のもたつき 2 2 2 0 0 0 0
便の形が不安定 8 10 5 3 2 1 1
便秘気味 5 10 0 0 0 0 0
便のにおいが強い 3 3 3 2 1 1 0
合計点数 120 115 112 61 37 24 21

※各症状を0-10点で評価(10点:症状が最も強い、0点:症状なし)

治療で起こりうる副作用

カンジダ除菌治療開始後1-2週間は、死滅したカンジダから放出される毒素によりダイオフ症状と呼ばれる一時的な症状悪化が起こることがあります。具体的には皮膚症状の一時的な悪化、頭痛、倦怠感、発熱、関節痛、腹痛、ブレインフォグなどが現れますが、これは治療が効いている証拠でもあります。デトックス治療中には、体内に蓄積された重金属が一時的に血中に放出されることで疲労感や集中力低下が生じることがあり、また吸着剤による便通の変化も見られます。

本症例でかかった費用

価格を現在のものに変更してあります。

  • 初診料:11,000円
  • M-1血液基本検査セット:17,000円
  • 唾液コルチゾール検査(6回法+DHEA):43,820円
  • GI-MAP(腸内環境検査):75,000円
  • 毛髪ミネラル検査:27,500円
  • 副腎治療サプリセット(1年分):118,200円
  • 消化不良サプリ(6ヶ月):19,440円
  • カンジダ除菌サプリ(2ヶ月):20,088円
  • カンジダ除菌薬(2ヶ月):40,000円
  • デトックスサプリ(2ヶ月):27,000円
  • 再診料(10回):110,000円

総費用:約509,000円(10ヶ月間)

※個人の症状や治療期間により費用は変動します

まとめ

副腎摘出術後の副腎疲労は、単純なホルモン補充療法だけでは改善しない複雑な病態です。本症例では包括的な検査により根本原因を特定し、段階的な治療アプローチで副作用を最小限に抑制、腸内環境とデトックスを重視した根本治療を実施しました。

現在も唾液コルチゾールの完全な正常化には至っておらず、継続的な治療が必要な状態です。しかし、QOLの著明な改善を得ることができました。

副腎疾患術後の難治性症状でお悩みの方は、従来のホルモン補充療法に加えて、分子栄養学的アプローチによる包括的な治療をご検討ください。

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