副腎疲労の食事治療|何を食べるかよりも何を食べないかが重要

副腎疲労の改善に欠かせない「食事」の考え方
副腎疲労を回復させるうえで大切なのは、「何を食べるか」よりも「何を避けるか」という視点です。実は、治療がなかなか進まない原因の多くに“日々の食事”が関わっています。
いくら他の治療を頑張っても、食事の乱れがあると改善は遠回りになってしまいます。その一方で、食事は人生の楽しみのひとつ。制限がかえってストレスになってしまっては、本末転倒です。詳しくはこちら
副腎疲労が重いときには「一日の大半をベッドで過ごす」「頭がぼんやりして考えられない」といった状態が続き、厳しい食事制限は現実的ではありません。その場合は無理に制限せず、「今は何を食べてもよい」と割り切ることも選択肢のひとつです。
大切なのは「副腎に余計な負担をかけない」という大原則。体調が少しずつ安定してきたら、無理のない範囲で食事を整えていきましょう。
副腎疲労の原因
副腎疲労は単なる「働きすぎ」や「寝不足」だけでなく、 腸内環境の乱れ・慢性炎症・食生活の偏り が複雑に関与しています。
- 精神的ストレス(仕事・人間関係・過労)
- 睡眠不足や生活リズムの乱れ
- カフェイン・糖質・アルコールの過剰摂取
- 小麦(グルテン)、乳製品(カゼイン)、食品添加物などによる腸粘膜への刺激
- 慢性的な感染症や重金属の蓄積
こうした要因が積み重なり、副腎の働きが落ちることで「いつも疲れている状態」に陥ります。
実例紹介:治りが悪い患者さんのケース
41歳・女性(美容師)の患者さん。
治療を始めて3か月経っても、朝起きられず、体が重く疲れやすい、動悸や腹部膨満感などの症状がなかなか改善しませんでした。
食事記録を確認すると、朝はヨーグルトや菓子パン、昼や間食にバームクーヘン・アイス・ソフトクリームなど糖質の多い食品が頻繁に登場していました。一見「普通の食事」ですが、砂糖・小麦・乳製品を多く含み、腸内環境の悪化と副腎への負担が強まっていたのです。

なぜ砂糖は副腎疲労を悪化させるのか?
砂糖を摂ると血糖値が急激に上昇します。その後、膵臓からインスリンが大量に分泌され、今度は血糖値が急激に下降します。この「血糖値のジェットコースター現象」が起こるたび、副腎はアドレナリンを分泌して血糖値を維持しようとします。
副腎疲労の方はもともと副腎機能が低下しているため、血糖値の乱高下に対応しきれず、結果として疲労感・倦怠感・集中力低下などの症状が悪化しやすくなります。
下図は、75gのブドウ糖を摂ってもらい、その後血糖値とインスリン値を記録したものです。
血糖値が急上昇後に急降下している様子がよくわかります。
ジェットコースターのように乱高下をしている血糖値のパターン
ブドウ糖を摂って180分後の血糖値が57まで低下している

副腎疲労で控えるべき食事と理由
副腎疲労の改善には「何を摂るか」と同じくらい「何をやめるか」が大切です。以下は特に注意すべき食品と、その理由です。
1. 砂糖・甘いもの
砂糖は急激に血糖値を上げ、膵臓から大量のインスリンを分泌させます。その反動で血糖値が急降下すると、副腎がアドレナリンを放出して血糖を支えようとするため、負担が増します。
こうした血糖値のジェットコースター現象が、副腎を休ませず疲弊させるのです。
2. 過度な糖質制限
糖質の摂りすぎは良くありませんが、極端に制限するのも危険です。副腎疲労の人は「糖新生」をうまく行えず、コルチゾールの分泌が低下していることが多いため、適度な糖質摂取が必要です。砂糖や精製炭水化物ではなく、血糖値を安定させる糖質をバランスよく取り入れることが大切です。
副腎疲労の女性(28歳)の血糖曲線
糖新生ができない状態なので血糖値が劇的に落ち込んでいます。
ヒトは血糖値が70を下回ると意識が低下することがあります。
3. カフェイン
コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるカフェインは、副腎を直接刺激してアドレナリンを分泌させます。眠気覚ましになる一方で、副腎を酷使する大きな要因です。急にやめると体調を崩すこともあるため、少しずつ減らすのが安全です。
4. グルテン(小麦製品)
グルテンは血糖値を急激に上げやすく、さらに腸の粘膜を傷つけて「リーキーガット症候群」の原因にもなります。また、消化不良で生じる「グリアドーフィン」というペプチドが脳に作用し、パンや麺類に中毒性を生むことがあります。腸内環境が乱れている人は特に注意が必要です。
5. 乳製品
牛乳やチーズなどの乳製品はカルシウムが過剰で、マグネシウムとのバランスを崩します。マグネシウムは副腎疲労改善に必須のミネラルであり、過剰なカルシウムがその働きを阻害してしまいます。カゼインというたんぱく質もモルヒネ様作用を持ち、依存を引き起こすことがあります。
ただし、一部のヨーグルトなど「自分に合う」と実感できる食品は例外です。
6. 加工食品
加工食品には保存料や添加物が多く、腸内環境を乱す原因となります。さらに糖分や油脂も多く含まれるため、副腎疲労の回復には不向きです。
7. 化学調味料・人工甘味料
人工的な甘味料やうま味調味料は神経を刺激し、中毒性や精神的不安定を引き起こす場合があります。自然な調味を心がけましょう。
8. アレルギーを起こす食品
喘息や蕁麻疹のような典型的な症状だけでなく、頭痛・胃の不快感・倦怠感・動悸なども食物アレルギーが関係していることがあります。疑わしい食品はまず2週間除去し、その後に再度食べて体調変化を確認する方法が有効です。検査結果に頼りすぎず、体感で見極めることが大切です。

食物アレルギーをどう見分けるか?
「IgE検査(即時型アレルギー)」や「IgG検査(遅延型アレルギー)」を受けた経験がある方も多いかもしれません。しかし、これらの検査だけで「食物アレルギーの有無」を断定するのは危険です。
特にIgG検査は、食べ物を制限するためのものではなく腸のバリア機能の状態を評価する検査です。腸内環境が乱れている人では多くの食品が陽性となり、検査結果の通りに制限してしまうと「食べられるものがほとんどない…」という極端な食事制限になりかねません。実際に、カナダや日本のアレルギー学会も「誤解による過剰な食事制限が子どもの発育障害につながるリスク」を懸念しています。
では、実際にどうやって本当に合わない食べ物を見極めればいいのでしょうか。
一番シンプルで有効なのは 「除去・再挑戦法」 です。
- 疑わしい食品をまず2週間完全にやめる
- 慣れてしまった体をリセットする
- その後に再び食べてみると、体調の変化に気づきやすくなる
例えば、普段から卵を食べている人が2週間やめたあとに再挑戦すると、胃の重さや倦怠感など、自分では気づけなかった反応がはっきり出ることがあります。
他にも「コカテスト」といって、疑わしい食品を食べる前後で脈拍の変化を見る方法もあります。ただしこれはアドレナリン反応を利用するため、副腎疲労が重症の人では反応が弱く出る場合があります。
まとめると:検査結果はあくまで参考に。最終的には自分の体の反応を観察することが最も確実な方法です。
9. タンパク質の摂りすぎ
「高たんぱく・低糖質」が流行していますが、副腎疲労の人には必ずしも適しません。代謝が落ちているため、過剰なたんぱく質は負担になりやすく、消化酵素の補助が必要になることもあります。
補足 副腎ホルモン「コルチゾール」はタンパクの異化(体内での分解)を亢進させます。ストレスに対応できている対応期にはタンパク質の需要も増加しています。しかし、副腎疲労で苦しんでいる人のほとんどは、疲弊期でありコルチゾールはあまり出ていません。
10. 炎症を起こす食事
栄養療法が効かない大きな原因は「炎症」と「ストレス」
副腎疲労の回復を妨げる要因として代表的なのが 炎症 と ストレス です。中でも意外と見落とされやすいのが「食事」による炎症です。
人間の細胞膜には脂肪酸が含まれていますが、その種類によって炎症が起こりやすくも、抑えられもします。
- 肉に多いアラキドン酸 → プロスタグランジンE₂を生成 → 炎症(痛み・腫れ・発熱)を促進
- 魚に多いEPA(エイコサペンタエン酸) → プロスタグランジンE₃を生成 → 炎症を抑制
つまり、体が炎症を起こしやすいかどうかは 細胞膜に含まれる「アラキドン酸」と「EPA」の比率 に左右されるのです。
このため、EPAをサプリメントで摂取して比率を改善することは有効な方法です。しかし、60兆個の細胞膜に影響を与えるためには、1日1500〜2000mg(青魚数十匹分!)が必要とされ、食事だけで補うのは現実的に不可能です。そこでサプリメントが役立ちます。
ただし注意点もあります。
👉 肉の脂を取りすぎると、せっかくのEPA効果が打ち消されてしまう のです。炎症を抑えるためにはサプリだけでなく、日々の食事管理が不可欠となります。
結局のところ、栄養療法は「病院任せ」ではなく、自分自身で知識を持ち、食材の選び方・調理の工夫まで考えるセルフマネジメント が大切です。
私の師匠のリオルダン先生も「自分で自分の主治医になることが大切」と話していました。
もし食事改善のヒントを得たいなら、以下の書籍もおすすめです:
- 『病気がいやなら油を変えなさい』:炎症と油の関係をわかりやすく解説した一冊。
- 『ジョコビッチの生まれ変わる食事』:食事改善で世界トップに返り咲いた経験談がモチベーションになります。
💡 まとめ
副腎疲労の改善には、「砂糖・カフェイン・小麦・乳製品・加工食品」を控え、腸を守り血糖値を安定させることが基本です。さらに、自分の体調に合わせてアレルギー食品を見極め、炎症を抑える食生活を意識することが、回復への近道になります。
副腎疲労の回復におすすめの食事
副腎疲労の患者さんは、長期のストレスにより ミネラル不足 や 腸内環境の悪化 が起きやすい状態です。そのため、栄養バランスが整った 和食スタイル が特に推奨されます。
肉食はアラキドン酸による炎症や、乳製品・小麦に含まれるカゼイン・グルテンの影響を受けやすいため、量や質に注意が必要です。

積極的に取りたい食材
豆類・大豆製品
大豆、小豆、いんげん豆、納豆、豆腐、味噌など
→ 良質なたんぱく質とミネラルを補給しやすい
胡麻・ナッツ類(種実類)
ごま、アーモンド、くるみ、カシューナッツ、ひまわりの種、亜麻仁など
→ ビタミンEや良質な脂質を含み、抗酸化作用で副腎を守る
海藻類
わかめ、昆布、ひじき、のり、もずくなど
→ ヨウ素やミネラルが豊富で、腸内環境の改善にもつながる
野菜類(緑黄色野菜・淡色野菜・根菜)
にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、大根、玉ねぎなど
→ 抗酸化ビタミン(A・C・E)や食物繊維を幅広く摂取できる
魚介類
青魚(さば、いわし、さんま)、白身魚、あさり、牡蠣など
→ 青魚はEPA・DHAによる抗炎症作用、貝類は鉄・亜鉛補給に役立つ
⚠️ マグロ・クジラなど大型魚は水銀汚染のリスクがあるため控える
きのこ類
しいたけ、しめじ、まいたけ、えのきなど
→ ビタミンDやβグルカンが免疫調整に働く
芋類・根菜類
さつまいも、じゃがいも、里芋、山芋など
→ 血糖値を安定させやすい炭水化物源で、食物繊維も豊富
食事のポイント
- 「ミネラル+食物繊維」を意識して食材を選ぶ
- 和食中心の食事で腸にやさしいメニューを増やす
- 肉・乳製品・小麦は控えめにして、消化に負担をかけない
- 魚は小型魚や青魚を中心にし、大型魚は避ける
まとめ
副腎疲労の改善には、ストレスマネジメントだけでなく、日々の食事内容を整えることが欠かせません。特に「腸内環境を整えること」「糖質の乱高下を避けること」「カゼインやグルテンなど炎症を助長する食品を控えること」が大切なポイントです。
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