栄養療法や予防医療の現場では、「グルテンフリー」と並んで カゼインフリー の食事療法が注目されています。
近年ではアスリートの間でも、カゼインやグルテンを避ける食事法がパフォーマンス向上に役立つとして広まり、ジョコビッチ選手の実践でも有名になりました。

「牛乳は健康に良い」と信じている方も多いですが、実際には腸や体に負担をかける要素も少なくありません。この記事では、カゼインの特徴・牛乳の問題点・代替食品の選び方 をわかりやすく解説します。

カゼインとは

カゼインは、牛乳や母乳に含まれる代表的なたんぱく質です。乳汁中のたんぱく質は大きく 「カゼイン」と「ホエイ（乳清たんぱく質）」 に分けられます。

• カゼイン：牛乳に酸を加えると固まって沈殿する性質をもつ。チーズやヨーグルトの「固形部分」になる。
  
• ホエイ：ヨーグルトの表面に出てくる透明の液体。酸に反応せず、上澄みとして残る。
  

この比率は 母乳で4：6、牛乳で8：2。
つまり、牛乳は母乳に比べてカゼインの割合が圧倒的に高いのです。

牛乳の成分と栄養的な特徴

牛乳は 水分・たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル から成る栄養豊富な食品です。白い色は カゼインとカルシウム の結合によるもので、淡い黄色は ビタミンA 由来。
法律上は以下のように分類されます：

牛乳：生乳100％、乳脂肪3.0％以上

低脂肪牛乳：脂肪0.5〜1.5％

無脂肪牛乳：脂肪0.5％未満

乳飲料：栄養強化や風味を加えたもの

ここでは最も一般的な「普通牛乳」を取り上げます。

牛乳に含まれる主な栄養素

• たんぱく質：80％がカゼイン、残りはホエイたんぱく質（ラクトアルブミン・ラクトグロブリン）
  
• 必須アミノ酸：9種類すべてを含む（アミノ酸スコア100）
  
• 脂質：パルミチン酸（飽和脂肪酸）、オレイン酸（不飽和脂肪酸）
  
• 炭水化物：大部分が乳糖（ラクトース）
  
• ミネラル：カルシウム・カリウム・リン
  
• ビタミン：ビタミンA・パントテン酸
  

特にカルシウムは、乳糖やたんぱく質と結びついているため 吸収効率が高い と言われています。

牛乳の利点と注意点

牛乳は「高たんぱく・必須アミノ酸を全種類含有・カルシウム吸収が良い」という利点があります。
しかし一方で、カゼインの消化性の低さ や 乳糖不耐症 など、体質や摂取量によっては不調を招く可能性もあるのです。

牛乳が体に与える弊害

カゼインが引き起こす、腸の炎症と中毒性

牛乳に多い カゼイン は消化されにくく、未分解のまま腸に届くと粘膜を傷つけ、リーキーガット症候群（腸のバリア機能低下） を招く要因になります。これにより異物が血中に入り込み、炎症やアレルギーを引き起こすと考えられています。

さらに一部は モルヒネ様作用（カソモルフィン） を示し、脳に「快感」として伝わるため、牛乳やチーズが「やめられない食品」になりやすいのです。→ この仕組みは小麦の グルテン でも起こるため、体質によっては グルテンフリー＋カゼインフリー を併用する食事療法が有効です。(グルテンフリーの食事療法)

2. 食物アレルギーのリスク

牛乳は、食物アレルギーを引き起こす 特定原材料7品目（卵・乳・小麦・落花生・えび・かに・そば） の一つ。特に カゼインやラクトグロブリン が主要なアレルゲンです。

体はこれらのタンパク質を「異物」と誤認識し、免疫が過剰に反応することでアレルギー症状を引き起こします。典型的な症状には以下があります：

• 蕁麻疹・かゆみ
  
• 腹痛・下痢・嘔吐
  
• のどの違和感、呼吸困難
  
• 唇や目の周囲の腫れ、目の充血
  

重度では アナフィラキシーショック に至ることも

3. 乳糖不耐症

牛乳に含まれる糖質「乳糖（ラクトース）」を分解するには、酵素 ラクターゼ が必要です。しかし日本人を含む東アジア人では、この酵素が不足している人が多く、乳糖を分解できない体質を 乳糖不耐症 と呼びます。

乳糖不耐症はアレルギーとは異なり、免疫反応ではなく「消化酵素の不足」が原因です。症状は以下のような不快感として現れます：

• 下痢、腹部膨満感
  
• お腹のゴロゴロ
  
• ガスの増加
  

ラクターゼ欠乏には、先天性（遺伝的）、成人での後天性低下、病気や薬剤による二次性などのタイプがあり、日本人は特に「後天性ラクターゼ欠乏」が多いとされています。

4.カルシウムとマグネシウムのバランスの悪さ

牛乳は「カルシウムが吸収されやすい食品」と言われますが、実は 極端にバランスが悪い のが問題です。

理想はカルシウム：マグネシウム＝1：1。
しかし牛乳100gにはカルシウム110mgに対してマグネシウム10mg（＝11：1）しかなく、マグネシウム不足を助長します。

その結果、

• 筋肉のけいれんや頭痛
  
• 不安、不眠、便秘
  
• 腎結石・骨粗しょう症
  

といったトラブルにつながるのです。

さらに牛乳は酸性食品のため、体はバランスを取ろうとして骨からカルシウムを溶かし出します。
→ そのため「牛乳をよく飲む欧米人ほど骨粗しょう症が多い」という逆説的な現象が起きています。

ではどうすれば？
答えは 小魚や葉物野菜からバランスよくカルシウムとマグネシウムを摂ること。これが骨を本当に強くする方法です。

5.ホルモン剤や抗生剤の問題

乳牛には病気予防の 抗生剤、搾乳量を増やす 成長ホルモン、飼料に使われる 農薬 が影響しています。こうした残留物を含む牛乳を私たちは口にしているのです。

特にホルモン剤は エストロゲン過多 を招き、増加傾向にある 乳がんリスク との関連が指摘されています。

牛乳だけでなく、ヨーグルトやチーズなどの乳製品も同様に注意が必要 です。

→次に、実際にカゼインを含む食品を確認してみましょう。

カゼインの含まれる主な食品

避けたい食品は、洋食・洋菓子に多く含まれます。代表的なものは以下の通りです。

• 牛乳・カフェオレ・脱脂粉乳
  
• ヨーグルト
  
• チーズ（ピザ・パスタ用粉チーズ、グラタン、リゾットなど）
  
• アイスクリーム・ソフトクリーム
  
• 市販のクリームシチュー
  
• 生クリーム（カルボナーラなど）
  
• カスタードクリーム
  
• 練乳
  
• 洋菓子全般
  

例外・代替食品

• バター：ほぼ脂質のため少量なら問題なし（1食あたりカゼイン0.05g未満）
  
• ギー：完全にカゼインフリー
  
• 豆乳ヨーグルト：代替可
  
• 山羊ミルク／山羊チーズ：牛乳とは異なるカゼインで、比較的問題が起こりにくい
  

→ 和食中心にすれば、意外と避けやすく、グルテンフリーよりシンプル です。

乳製品の代わりとなるおすすめ食品

乳製品を避けるときに便利なのが、植物性ミルクや代替食材です。

• アーモンドミルク
  
• ライスミルク
  
• ココナッツミルク／ココナッツクリーム
  → ポタージュやシチュー、クリーム系ソースなどをクリーミーに仕上げられます。
  

代替アイデア

• 豆乳ヨーグルト：スーパーで購入可。
  
• 豆腐ホワイトソース：シチューやグラタンに応用可能。
  
• 米粉・大豆粉・アーモンドミルクのパンケーキ：グルテンフリーで楽しめます。
  
• シャーベット：アイス代わりにおすすめ。
  

⚠️ 大豆も消化に負担がかかるため、頻度は控えめに。

カルシウム補給におすすめの食品

栄養療法に基づいたサプリメント（医師の指導下で）

小松菜、チンゲン菜、モロヘイヤなどの青菜

しらす、桜えび、イワシなど小魚

切り干し大根

まとめ

牛乳は「カルシウム豊富で健康に良い」と思われがちですが、カゼインによる腸の炎症やアレルギー、栄養バランスの偏り などのリスクがあります。

カゼインフリーの食事法は、腸内環境を整え、不調の改善につながる可能性があります。乳製品を控え、代替食品や野菜・魚からカルシウムを摂る工夫をしてみましょう。

➡ 当院では、食事指導や栄養検査を通じて、一人ひとりに合ったカゼインフリー実践法 をご提案しています。気になる方はお気軽にご相談ください。