GI-MAP腸内環境検査でわかること|当院の実例と徹底解説
■GI-MAP検査とは?
「腸内環境を調べたいけれど、どの検査を受けたらよいかわからない」
そんな方におすすめなのが GI-MAP検査 です。
GI-MAP(ジーアイマップ)は、アメリカ Diagnostic Solution社 が開発した腸内環境の総合検査です。
高感度な「定量的PCR法」を用い、従来の検査では見つからなかった病原菌や腸内細菌の状態を詳しく把握できます。
当院でも導入以来、多くの患者さまの腸内環境改善に役立ち、長年の不調や消化器症状の改善につながっています。

■GI-MAP検査でわかること
1.ヘリコバクター・ピロリ菌|胃腸だけでなく全身に影響する細菌
ピロリ菌は胃炎や胃がんの原因として知られていますが、アレルギー、自己免疫疾患、さらにはうつ症状にも関与していると報告されています。
GI-MAPでは、従来の便検査や呼気検査で「陰性」とされた方でも、DNAレベルで腸にピロリ菌が残っていることが分かります。
▶ 検査結果の見方
Helicobacter pylori の欄に数値があれば「陽性」
赤字で表示されていれば基準値を超えている状態

<dl とだけ表記されていれば「陰性」

⚠ 注意点として、数値はあるが赤字ではない「基準値未満の陽性」も見逃せません。

当院の統計では、GI-MAPでのピロリ菌検出率は72%と非常に高率でした。
(若年層や除菌後に呼気検査で陰性とされた方も含まれます)
ピロリ菌の除菌治療には副作用もありますが、長年の胃腸不調や皮膚疾患・精神症状が改善した例も多数あります。
「他の検査では陰性だったのに不調が続く…」という方は、一度調べてみる価値があります。
2. 共生細菌の減少|腸内環境悪化の第一歩
腸内の「共生細菌(善玉菌)」は、食物繊維を発酵させて短鎖脂肪酸を作り、免疫を整えたりバリア機能を強化します。
当院での結果では、主要な2つの腸内細菌(バクテロイデス門・ファーミキューテス門)が低い人は39%に上りました。

対策は、プロバイオティクス(善玉菌そのもの)だけでなく、食物繊維やポリフェノールを摂って「自分の菌を育てる」ことが重要です。
3. 寄生虫|慢性下痢の隠れた原因
従来の便培養検査では寄生虫はほとんど見つかりませんでしたが、GI-MAPでは慢性的な下痢の患者さんから寄生虫が検出されています。
特に多いのは ジアルジア(ランブル鞭毛虫)やアメーバ。
当院の3か月間のデータでは、13%(57名中7名)で寄生虫が検出されました。

海外生活歴がある方、生水を飲む機会が多い方、カンジダがすぐ再発する方は要チェックです。
4. カンジダ|検出されたら要注意
便検査でのカンジダ検出率は低めですが、GI-MAPで「陽性」と出た場合は、腸内にかなり多く存在していることを意味します。
より詳しく調べたい場合は「有機酸検査」も併用するのがおすすめです。

5. 腸管免疫(IgA)の低下
腸の免疫力を測る大切な指標が、免疫グロブリンIgA(分泌型IgA) です。
これは腸の粘膜を守る“バリア”のような役割を果たしており、悪性菌の定着や増殖を防いでいます。
IgAが高い場合
炎症や強いストレスにさらされると、一時的にIgAが高くなります。
実際に当院の検査でも、57名中3名にIgAの上昇が見られました。

IgAが低い場合
一方で、炎症や副腎疲労が長く続くと、免疫を作るタンパク質が消耗し、IgAは低下してしまいます。
当院のデータでは、57名中18名(約3人に1人) がIgA低下という結果でした。

低IgAのリスク
IgAが不足すると、腸内の防御力が下がり、ピロリ菌や寄生虫といった病原菌が暴れやすくなります。
その結果、これまで無症状だった人でも、ストレスや疲労をきっかけに胃痛・胸やけ・慢性疲労などの症状が出ることがあります。
「胃腸の不調が長引いている」「検査で異常が見つからないのに症状がある」という方は、腸管免疫IgAの低下が原因となっている可能性があります。
6. グルテン反応(抗グリアジン抗体)
小麦などに含まれるグルテンは、パンやパスタ、麺類などに多く含まれています。
その一部であるグリアジンタンパク質に対して体が過剰に反応すると、腸の炎症・消化不良・倦怠感・肌荒れ・精神的な不調などを引き起こすことがあります。
GI-MAPでは、このグリアジンに対する抗体(抗グリアジン抗体)を測定し、グルテン反応の有無を確認します。
当院での結果では、3.7%の方に陽性反応が見られました。数としては少ないものの、陽性が出た方はグルテン制限(小麦を控える食事)で体調が大きく改善するケースがあります。

「長年の疲れが取れない」「便通や肌トラブルが続く」という方は、グルテン反応が隠れた原因になっている可能性があります。
7. 日和見菌の増加|消化不良パターン
日和見菌は、体調や腸内環境が悪化すると増殖して問題を起こす細菌です。
例えば バチルス・ブドウ球菌・連鎖球菌が増加すると、典型的な「消化不良パターン」となります。

BacillusやStaphylococcus、Streptococcusといった菌の増加は、典型的な「消化不良型」の腸内パターンです。
十分に食べ物を分解できないため、腸内細菌のバランスが崩れやすくなります。
改善のポイントは、
- 消化酵素のサプリメントで消化をサポートすること
- 早食いを避け、よく噛んで食べる習慣をつけること
シンプルですが、腸内フローラを立て直す上で非常に効果的なアプローチです。
8. 腸の炎症|カルプロテクチン
カルプロテクチンは腸の炎症を示す指標で、基準値は173未満です。二桁でも軽度の炎症があると考えられ、三桁以上では炎症性腸疾患などの可能性が疑われます。

腸の炎症は腹痛や便通トラブルだけでなく、肌荒れや疲労感にもつながります。改善にはまず腸内環境の見直し(食事・プロバイオティクス・ストレス管理)が重要です。
9. 消化の問題|消化酵素と脂肪吸収
GI-MAPでは、消化酵素の分泌量や脂肪の消化状態も確認できます。

消化酵素(Elastase-1)と脂肪の消化(Steatocrit)
GI-MAPでは「脂肪がきちんと消化できているか」「消化酵素が十分に分泌されているか」を確認できます。
- Steatocrit(ステアトクリット)
便に脂肪が混じっていないかをチェックする指標。数値が高いと「脂肪が消化されずに便に出ている」状態を意味します。 - Elastase-1(エラスターゼ1)
膵臓から分泌される消化酵素の働きを示す指標。数値が低いと「酵素が不足して消化力が落ちている」可能性があります。
消化酵素が不足すると、脂肪だけでなく栄養全般の吸収がうまくいかず、疲労感・肌荒れ・ホルモンバランスの乱れにもつながります。改善には食事の見直し・よく噛む習慣・必要に応じた消化酵素サプリメントなどでフォローすることが大切です。
10. ホルモン代謝との関わり
ホルモンと腸内環境の関係
βグルクロニダーゼは、本来排泄されるはずの女性ホルモンを体内に戻してしまう酵素です。数値が高いとホルモン濃度が上がりやすく、乳がんや子宮内膜症との関連も報告されています。

増える原因には、
- 腸内細菌の乱れ(大腸菌やクロストリジウム属の増加)
- 抗生物質の多用
- 肝臓の解毒力の低下
などが挙げられます。ホルモン症状がある方は、腸内環境と肝臓ケアを意識することが大切です。
他の便検査について
GI-MAPは病原菌の検出に優れていますが、腸内細菌の多様性や短鎖脂肪酸の測定、抗生剤の感受性試験などでは、ドクターズ・データ社のGI360も有用です。
どの検査が最適かは、症状や目的によって異なります。受診の際にご相談いただければ、最適な方法をご提案します。
まとめ|GI-MAPは「不調の原因」を見つける強力な武器
GI-MAPは、便検査の中でも特に病原菌や腸内環境の乱れを高感度に検出できる検査です。
当院での実績からも、慢性疲労・肌荒れ・精神症状・下痢などの原因が腸に隠れているケースが数多く見つかっています。
「長年の不調の原因がわからない」「腸を調べてみたい」方は、ぜひ一度ご相談ください。
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