7年間の不眠・ホットフラッシュが消えた66歳女性
更年期症状と思われていた不調が、実はピロリ菌と重金属の蓄積が原因だったという症例をご紹介します。
患者さんの背景
主な症状は以下の3つでした。
不眠:マイスリーを飲んでも2時間かかって眠り、3時間おきに目が覚める
ホットフラッシュ:典型的な更年期症状として長年悩んでいた
疲労感:夕方になると動けないほどの疲れ
他院で糖尿病と脂質代謝異常の治療を受けていましたが、これらの症状は改善しませんでした。
検査でわかったこと
初診時の検査で、以下の問題が見つかりました。

唾液コルチゾール検査では、朝も昼もコルチゾールが低め、夜はやや高めでした。
これは体内に炎症が残っているパターンを意味しています。
血液検査では、CRPが上昇しており慢性炎症の存在が示唆されました。インスリン抵抗性と溶血傾向も認めました。

GI-MAP検査では、ピロリ菌が陽性でした。ピロリ菌の量は多くなかったのですが、

腸内の良性細菌(バクテロイデスとファーミキューテス門)も減っていました。
腸の良性細菌が減ると、多くの場合腸管の免疫も低下します。

この方も、腸管の免疫 Secretory IgAが基準値より低下していました。
このような場合、ピロリ菌は少量でも活動性が上がり、炎症の原因になることがあります。
毛髪ミネラル検査では、重金属の蓄積が確認されました。
治療の流れ
第1段階:土台づくり
いきなりピロリ菌の除菌やデトックスに入ると、副作用が出やすくなります。まずは副腎とミトコンドリアを安定させることから始めました。
使用したサプリメントは、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、マグネシウム、CoQ10、αリポ酸、アシュワガンダ、消化酵素などです。
同時に食事指導も行いました。朝食を起床後1時間以内に摂ること、炭水化物単体の食事を避けること、食後の散歩を早めに行うことなどをお伝えしました。
第2段階:ピロリ菌除菌
準備期間を経て、ピロリ菌の除菌に入りました。最初は除菌薬を使用しましたが、その後の検査でピロリ菌の残存が疑われたため、自然療法での追加除菌を行いました。
いくつかのハーブと乳酸菌を2ヶ月間服用していただきました。
第3段階:デトックス
ピロリ菌除菌後、いよいよ重金属のデトックスに入りました。グルタチオン製剤などを使用しました。最初は少量から徐々に増量しました。
治療結果
2025年10月、約1年3ヶ月の治療を経て、多くの症状が改善しました。
治療前、この患者さんはホットフラッシュに悩まされ、不眠のためにマイスリーが手放せない状態でした。うつ症状もあり、疲労感が強く夕方には動けなくなるほどでした。
1年3ヶ月の治療を経て、ホットフラッシュは完全に消失。7年間頼り続けたマイスリーなしでぐっすり眠れるようになり、うつ症状も消えました。「朝から元気で、一日中やる気がある」「昔に戻った」と笑顔で話されています。
「一日中やる気がある」「朝起きられる」と喜んでいただき、半年後のフォローアップを予定して一旦卒業となりました。
治療費用
治療期間:約1年3ヶ月(2024年7月〜2025年10月)
おおよその費用60万円
内訳:初診料33000円 再診料11,000円/回 × 約7回(1~3ヶ月に1回)唾液コルチゾール検査約44,000円 毛髪ミネラル検査27,500円 × 2回 GI-MAP検査75000円 GI-MAP(ピロリ菌のみ)25000円
血液検査17,500円
サプリメント月額15,000〜30,000円程度 12ヶ月間
副作用について
この患者さんでは、治療期間を通じて目立った副作用はありませんでした。
ピロリ菌の自然除菌後も「体調変化なし」とのことでした。デトックス期間中も特に問題なく経過しました。
ただし、これは十分な準備期間を設けたからです。副腎疲労がある状態でいきなり除菌やデトックスを行うと、ダイオフ反応(菌が死滅する際の毒素放出による一時的な体調悪化)や解毒反応が強く出ることがあります。
治療の順番を守ることが、副作用を最小限に抑えるポイントです。
更年期症状の裏に感染症が隠れていることがある
ホットフラッシュや不眠は、一般的には女性ホルモンの低下が原因と考えられています。しかしこの患者さんでは、ピロリ菌を除菌したらホットフラッシュが消失しました。

ピロリ菌感染は胃だけの病気ではありません。感染した胃粘膜から炎症物質が分泌され、全身の炎症を引き起こします。
重要なのはこれらの炎症物質がホットフラッシュの重症度と直接関連しているという点です。
45〜60歳の閉経後女性202名を対象とした研究では、ホットフラッシュが重症であるほど、炎症物質(IL-6、IL-8、TNF-α)が有意に高いことが示されました。
おわりに
根本原因にアプローチし、長年の不調が1年で改善するのは決して珍しいことではありません。
同じような症状でお悩みの方は、ぜひ一度、腸内環境や副腎機能を調べてみることをお勧めします。思いもよらない原因が見つかるかもしれません。