1. 多くの人が見落としている“ニキビの根本原因”とは

ニキビは、皮脂やホルモンの影響だけでは説明しきれない複雑な疾患です。
近年では、腸の炎症や腸内環境の乱れが関与していることが明らかになってきました。

私たちの体は、腸・免疫・ホルモン・皮膚が相互に影響し合うひとつのシステムです。
この関係を医学的には「腸皮膚相関（Gut–Skin Axis）」と呼びます。

腸内に存在する「腸内フローラ（腸内細菌叢）」は、
消化・免疫・ホルモン代謝を支えています。
しかし、ストレスや食生活の乱れなどで腸内フローラのバランスが崩れると、
腸粘膜のバリア機能が弱まり、「リーキーガット（腸漏れ）」と呼ばれる状態になります。

このとき、腸内で生じたLPS（リポ多糖）という炎症物質が血液に流れ出し、
全身の免疫を刺激して皮膚の炎症を悪化させます。
その結果、皮脂腺の過剰反応や毛穴の詰まりが起こりやすくなり、
“ニキビ体質”をつくり出すことがわかっています［1］。

　　　

　　

　　　

　　

2. 腸内異常とニキビの関係：研究から見える現実

腸内環境の乱れとニキビの関連は、いくつもの研究で確認されています。
特に、ニキビ患者ではピロリ菌やカンジダ、寄生虫（Blastocystis hominis など）の感染率が高いという報告もあり［2］、腸内の感染や菌バランスの異常が肌トラブルの背景にあることが示唆されています。

　　

　　

こうした研究結果を踏まえると、
腸を整えることは「肌の炎症を鎮める治療」であると同時に、
体質そのものを整える医療でもあると言えます。

　　　

　　

3. 京橋ウェルネスクリニックの治療方針

当院では、腸の炎症や菌バランスの乱れを前提に、
植物由来ハーブを用いた腸内環境ケアを行っています。

血液検査で鉄・亜鉛・ビタミン・炎症マーカーなどを確認し、
不足や炎症のサインに応じて栄養補充を組み合わせます。
また、肌診断（VISIA）で治療経過を可視化し、
「腸 → 血液 → 肌」という流れを段階的に整えていきます。

　　

　　　

　　

【症例紹介】

　

20代女性。額・眉間部・頬全体に炎症性ニキビを認め、
赤みと膿胞をくり返す状態が続いていました。

血液検査では鉄・亜鉛の不足、低血糖傾向がみられ、
腸内環境の乱れと栄養バランスの崩れが疑われました。

ハーブ除菌プログラムと栄養補充を2か月間継続し、
この間にIPL照射とピーリングを各2回ずつ併用しました。

治療後は皮膚の赤みと膿胞の新生が明らかに減少し、
肌質全体が安定。さらに、PMSや生理痛、腹部膨満感、甘いものへの依存といった
体調面の改善も同時にみられました。

　　

　　

4. 腸を整えると“できにくい肌”になる理由

腸の炎症が鎮まると、全身の炎症物質（サイトカイン）が減少し、
皮脂腺や免疫の過剰反応が落ち着いていきます。

さらに、栄養状態の改善によってターンオーバーが整い、
肌のバリア機能や透明感も回復します。
腸内環境を整えることは、
単に「お通じを良くする」ためではなく、
肌の炎症を根本から鎮める医療的アプローチです。

　　

腸から整える、“くり返さない肌”へのアプローチ

ニキビは、肌だけの問題ではありません。
腸や栄養、ホルモン、ストレスなど、体の内側のバランスが反映されたサインです。
一時的な対症療法に頼らず、根本から整えることで、
肌と体の両方が安定していくことを多くの症例で確認しています。

“できにくい肌”は、内側の健康から生まれます。

　　

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参考文献

［1］Mahmud MR, Akter S, Tamanna SK, Mazumder L, Esti IZ, Banerjee S, Akter S, Hasan MR, Acharjee M, Hossain MS, Pirttilä AM. Impact of gut microbiome on skin health: gut-skin axis observed through the lenses of therapeutics and skin diseases. Gut Microbes. 2022 Jan-Dec;14(1):2096995.
［2］Greenberg J, Gut Tests to Treat Acne, 2021: https://www.skinterrupt.com/wp-content/uploads/2021/10/Dr-Greenberg-Gut-Tests-to-Treat-Acne.pdf