栄養療法において、副腎疲労や腸内環境の悪化などは主に食事やストレスといった環境要因が大きく影響します。しかし、体内の解毒能力や神経伝達物質のバランスについては、遺伝的な要因が重要な役割を果たすことが分かっています。
個人の体質や代謝の特性を正確に把握することで、より効果的で個別化された栄養療法を提供することが可能になります。
神経伝達物質と遺伝子検査
うつ病、統合失調症、ADHD(注意欠陥多動性障害)などの疾患では、脳内の神経伝達物質のバランスが重要な問題となります。主要な神経伝達物質には以下があります:
- ドーパミン:意欲や集中力に関与
- ノルエピネフリン:覚醒や注意力に関与
- セロトニン:気分の安定や睡眠に関与
これらの神経伝達物質の量は、有機酸検査や血液検査によってある程度推定することができますが、遺伝子検査により、より根本的な代謝の特性を把握することが可能になります。
特に発達障害のお子様の場合、従来の検査に加えて遺伝子検査を実施することで、以下の点を明確にできる可能性があります:
- 言語習得に必要なドーパミン産生能力
- 体内解毒システムの効率性
- メチレーション回路の機能状態
メチレーション回路と自閉症
メチレーション回路は、体内でDNA修復や、神経伝達物質を作ったり、解毒に関連する重要な回路です。
研究により、自閉症スペクトラム障害のお子様の多くで、メチレーション回路が適切に機能していないことが明らかになっています。この機能不全の主要な原因として、遺伝子変異が関与していることが分かっています。
メチレーション回路の異常は以下の症状に関連する可能性があります:
- 言語発達の遅れ
- 社会性の困難
- 感覚過敏
- 消化器症状
- 免疫系の問題
当クリニックで実施する遺伝子検査
当クリニックでは、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)、COMT(カテコール-O-メチル転移酵素)、CBS(シスタチオニンβ合成酵素)、MTR/MTRR(メチオニンシンターゼ関連)などを含むメチレーション回路に関わる遺伝子を網羅的に検査し、遺伝的な代謝特性に基づいた治療戦略の立案、栄養素の必要量や補完方法の選定、さらに解毒能力の評価と対策の検討を可能にしています。
検査をおすすめする方
以下のような症状や状況の方に、遺伝子検査をおすすめしています:
- 発達障害(自閉症、ADHD等)のお子様
- 従来の治療で改善が見られない精神的な症状
- 慢性疲労や原因不明の体調不良
- 解毒能力の低下が疑われる方
- 家族歴に精神疾患や発達障害がある方
まとめ
遺伝子検査は、従来のアプローチでは見えなかった個人の体質的特性を明らかにし、より精密で効果的な栄養療法を可能にします。特に発達障害のお子様や、原因不明の症状でお悩みの方にとって、新たな治療の可能性を開く重要なツールとなります。
当クリニックでは、遺伝子検査の結果を総合的に評価し、患者様一人ひとりに最適化された治療プランをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。