副腎疲労の人の体内では長年のストレス負荷により、様々な変化が起きています。
副腎が疲弊している
まだ「コルチゾール」がたくさん出ている時期を副腎疲労の抵抗期(ていこうき)、「コルチゾール」が枯渇してもう出せなくなっている時期を副腎疲労の疲弊期(ひへいき)と呼びます。
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抵抗期 コルチゾールがまだ出ている 多忙だが、まだまだ動ける こういう人は来院しない |
疲弊期 コルチゾールが枯渇している 動けない、朝起きられない こういう人が来る |
当院受診の患者さんの9割で唾液中の「コルチゾール」濃度の低下があります。皆さん相当疲れていて、どうしようもなくなってから来院されるのです。
なぜなら、抵抗期に副腎疲労を意識する人はほとんどいません。コルチゾールが多く出ている時はエネルギッシュに動き回れるからです。副腎疲労を自覚し、治療を志す人は大部分副腎疲労の疲弊期に入った人です。
HPA軸が機能していない

ストレスを感じた視床下部は、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)を分泌します。このホルモンは下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を放出するよう信号を送り、ACTHが副腎を刺激して「コルチゾール」の合成・分泌を促進します。ストレスが生じてから数分以内には副腎から大量の「コルチゾール」が分泌されます。
「コルチゾール」が出過ぎた時、脳下垂体や、視床下部に抑制をかけ、CRFやACTHが減少するため、それにつれて「コルチゾール」も低下します。このような過剰な「コルチゾール」に対する抑制機能を視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)と呼んでいます。
副腎疲労、うつ病ではHPA 軸の正常な働きが弱っています。特に副腎疲労の抵抗期や回復期など、コルチゾール量が過剰になりがちな時期には、HPA 軸の調整を行う必要があります。(HPA軸の調整治療についてはこちら)
また、うつ療法が奏功するとコルチゾールの過剰反応は正常化するため、副腎疲労の治療ではうつ対策を並行して行います。
全身の細胞が疲弊し、ミトコンドリア機能が低下している
コルチゾールやエピネフリンの合成にはビタミンC、マグネシウムをはじめ、多くの補酵素が消費されます。
長年のストレスによりカテコラミンを作り続けた結果、ビタミン・ミネラルが消耗しており、細胞の代謝やエネルギー産生に重要なミトコンドリア機能まで低下していることは珍しくありません。
免疫機能が落ちている
免疫システムにおける、ウイルスやがんの監視役として重要な役割を担っているナチュラルキラー細胞の活動性は種々の ストレスで低下します。また、胃腸や口腔内で粘膜免疫の要である分泌型IgAの合成能もまたストレスの影響を受けます。ストレス下では、このバリア機構に障害が起こり、病原性微生物に対する抵抗力も低下します。
腸内環境が悪化している
ストレスは、腸内細菌叢のバランスにも多大な影響を及ぼすことが知られています。宇宙飛行士の便を検査したところ、宇宙飛行訓練後、病原体となり得るグラム陰性の腸内細菌やクロストリジウム菌が顕著に増加していた一方で、乳酸菌は減少していました。
当院受診の副腎疲労患者の大多数に大規模な腸内環境異常を認めています。
(詳しくはこちら)